主人公は高みの見物していたい

ポリ 外丸

文字の大きさ
93 / 281
1学年 後期

第93話

しおりを挟む
「まさか人間が魔物に変えられるなんて……」

 柊家当主である俊夫の説明を受けて、鷹藤家の次期当主の康則が信じられないと言うように呟く。
 それもそのはず、魔物は魔素によって動物が変異したり、発生したりするもの。
 人間が高濃度の魔素を体内に取り込んだ場合、耐えきれずに気を失ったり、最悪の場合は命を落とすのが普通だ。
 どんな方法を取ったか分からないが、人間を魔物に変えるなんて信じられないのも仕方がない。

「何者によるものなのかは分かりませんが、それは確実です」

「……信じがたいが、これを見てはな……」

 これまで聞いたことが無かったのだから、信じられないのも仕方がない。
 しかし、俊夫は目の前で豊川という少年が魔物へと変貌したのを目の当たりにし、戦うことになった。
 それに、鷹藤家当主である康義が言うように、豊川の姿を残しつつ変貌した見たことが無いような姿の魔物の死体を見れば、受け入れざるを得ない。
 人間を魔物化する方法がこの世にはあるということだ。

「どんな方法だか分からないが、早急に調べる必要があるな……」

「えぇ……」

 渋い表情で呟く康義の言葉に俊夫も頷く。
 康義にとっては孫、康則にとっては息子である文康の対戦相手が暴れているという報告を受けて駆けつけてみれば、まさかの人間の魔物化。
 これを放置しておくことは当然できないため、豊川の肉体が変化した原因を、早急に突き止めなければならない。

「この遺体の解析をお願いできますか?」

「我々に任せてくれるのか?」

 俊夫は豊川の遺体の解析を頼む。
 その言葉に、康則が意外そうに問いかけてきた。
 この魔物を倒したのは俊夫だ。
 緊急事態だったために、縄張り争い的なことも問題ない。
 つまり、この魔物の死体を好きにする権利は倒した柊家の自由だ。
 人間を魔物化するということが知れ渡れば、大和皇国中が大騒ぎになる。
 そこで人間を魔物化する原因を突き止めたとなれば、今でも急上昇中の柊家の人気は更に上がるというもの。
 その権利を放棄するように鷹藤家に任せて来たことが、康則には意外に思えたのかもしれない。

「えぇ、皇都に研究所を持っている鷹藤家にお任せるのが、原因究明に一番速いと思われるので……」

 たしかに人間を魔物化することの原因究明をする事ができれば、柊家の人気は上昇するだろう。
 しかし、事は重大だ。
 大和皇国の国民に安心材料を与えるためにも、人気の向上なんて考えている場合ではない。
 そうなると、わざわざ八郷地区まで運ぶよりも、この皇都に研究施設があるであろう鷹藤家に任せるのが速い。
 そう考え、俊夫は鷹藤家に任せることにしたのだ。

「了解した。何か分かったら柊家にいの一番に報告しましょう」

「お願いします」

 俊夫の思いに感銘を受けたのか、康義はやや深めに頭を下げ、康則も続いた。
 そして、頭を上げると、結果の報告を優先してくれることを誓った。
 人間の魔物化への対抗策を考えるためにも、そうしてもらえるのは嬉しい。
 康義のその言葉に、俊夫は軽く会釈した。

「そうと決まれば、早速家の者を呼びましょう」

 豊川を魔物にした原因が、場合によっては時間経過と共に消える成分かもしれない。
 そう考えると、少しでも早く死体の移動を開始するべきだ。
 そのため、康則はスマホを取り出し、鷹藤家の配下の者たちを呼び寄せようと考えた。

「それは困るな……」

「っ!?」

 康則の言葉に反応するように、突然何者かが姿を現した。
 目のつり上がった細身の男性。
 しかし、背中には黒い蝙蝠の翼のようなものを生やしており、身に纏う魔力は並のものではない。

「ハッ!!」

 現れた男は、魔力を込めた手で地面へと触れる。
 すると、その触れた地面に魔法陣が浮かび上がった。

「っ!!」「なっ!!」「遺体が!!」

 何をしてくるのか警戒していた3人だったが、攻撃の類の魔術ではないらいく何も起きない。
 しかし、自分たち以外に起きた現象に、康義、俊夫、康則の順で驚きの声を上げた。
 男の狙いは豊川の死体らしく、魔法陣によって自分のもとへ移動させたのだ。

「原因追及されるわけにはいかないんでね」

「「「っ!!」」」

 自分のもとへ移動させた男は、すぐさま豊川の死体へ向かって魔術を放った。
 高火力によって、豊川の死体はあっという間に骨も残さず灰へと変わった。
 その魔術の威力に、3人は驚きと共に嫌な汗が流れた。
 あれほどの火力の魔術を自分に向けられた場合、いくら魔力によって魔術攻撃への耐性を上げていようと、大火傷を負う可能性が考えられたからだ。

「貴様……魔族だな?」

「ご名答……って、この翼を見たらそりゃわかるか……」

 豊川の死体を焼却されたことに怒りが湧くが、今はそれどころではない。
 死体とは言え、一瞬で償却した威力と禍々しい魔力。
 とても人間のできることではない。
 それに過去の戦闘経験から、康義はこの男が魔族だと理解した。
 康義がそのことを尋ねると、男は軽い口調で返答した。

「カルミネだ。よろしく」

「名前持ち……」

 自己紹介をするように、つり目の魔族の男は名前を名乗った。
 それを聞いて、康義の表情が強張る。

「……名前を持っていると何かあるのですか?」

「名前自体はたいして意味はない。しかし、魔族の中でも上位の者は名前を持っているという共通点がある」

 康義の反応が気になった俊夫は、名前があることの意味を尋ねる。
 その俊夫の問いに対し、康義は手短に説明をした。

「ということは、あの魔族は……」

「あぁ、危険だということだ」

 昔、康義が戦た魔族。
 その時の魔族も名前を持っていた。
 そのことから、目の前にいる魔物が危険な存在なのだと理解できた。
 康則もそのことが分かり言いかけるが、康義が先に言葉にした。

「この3人で何とかなりますか?」

「……分からない」

 危険な魔族だというのは、纏っている魔力を見れば分かる。
 しかし、俊夫も魔族と戦った経験がある身。
 魔族が危険だと言っても、倒せない存在でない。
 あの時のモグラの魔族より危険だとしても、この3人で戦えば勝てるのではないかと考えた。
 その俊夫の考えに、康義は首を横に振る。

「あいつは底を見られないようにしているからな……」

「やってみないと分からないってことか……」

 鑑定の魔術を使ってカルミネと名乗った魔族を見てみるが、完全に実力を読み取ることができないため、どこまでの強さか分からない。
 結局、戦って見ないと分からないことに、俊夫は渋い表情をするしかなかった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

プライベート・スペクタル

点一
ファンタジー
【星】(スターズ)。それは山河を変えるほどの膂力、千里を駆ける脚力、そして異形の術や能力を有する超人・怪人達。 この物語はそんな連中のひどく…ひどく個人的な物語群。 その中の一部、『龍王』と呼ばれた一人の男に焦点を当てたお話。 (※基本 隔週土曜日に更新予定)

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

処理中です...