主人公は高みの見物していたい

ポリ 外丸

文字の大きさ
256 / 281
3学年 後期

第255話

しおりを挟む
『クッ!! まさかここで使ってくるなんて……』

 一瞬にして自分の背後に移動したオレガリオ。
 そのオレガリオが振り下ろす刀が迫る中、俊夫は自分の失策に歯噛みしていた。

『ここで転移か……』

 どうして忘れていたのか。
 オレガリオが転移魔術の使い手だということを……。
 転移魔術のような高等魔術は、かなりの集中力を必要とするはず。
 戦闘に使用するとなると、タイミングを一歩間違えれば死に直結する。
 そんなリスクを負ってまで、戦闘時に使用するなんて常軌を逸していると言わざるを得ない。
 その考えから、オレガリオが転移魔術を使用してくるなんて頭から抜けていたことで、このような結果になってしまった。
 魔人も人間と同じ考えで行動すると、決めつけていたのが失敗だ。
 死ぬ可能性もある方法でパワーアップを計るような、平気で自分の命を賭けに使用する生物だと、頭の片隅に入れておくべきだった。
 これで自分は殺される。
 そう思っているからこそ、俊夫の頭の中で色々な考えが高速回転していた。

「ガッ!?」

「っっっ!?」

 オレガリオの刀が俊夫には届かなかった。
 届く前に、オレガリオが吹き飛んだからだ。
 吹き飛んだオレガリオだけでなく、俊夫も何が起きたのか分からず、驚きの表情を浮かべた。

「フンッ!! 私もいること忘れてるんじゃないわよ!!」

 オレガリオがh期跳んだ理由。
 それは、綾愛の放った火球の魔術が直撃したからだ。
 父の窮地を防ぐことに成功した綾愛は、ドヤ顔でオレガリオに文句を言った。

「おのれ! 小娘っ!?」

「あ、綾愛!?」

 綾愛のことを眼中に入れていなかった上に、転移魔術を使用して俊夫を葬り去る事ばかりに集中していた。
 そのため、まさか攻撃を合わせてくるとは思いもしなかった。
 父の俊夫ですら、オレガリオの考えを読み解くことに集中していたためか、綾愛のことを忘れていたくらいだ。

「あんたたち魔人はどこか狂った思考をしている。だから、私は危険を冒しても戦闘に転移魔術を使用してくる可能性を排除していなかったのよ! 成功すれば、お父さんに致命傷を与えられるものね?」

 オレガリオがカウンターの構えを取った時、綾愛は何をしてくるのか様々な可能性を頭に浮かべた。
 自分は遠距離で援護することしかできない。
 だからこそ、父が思いつかないことまで気が付かなければならない。
 頭を使っての援護も自分の役割だ。
 そう考えていたからこそ、転移魔術を使用してのカウンター攻撃の可能性があることを斬り捨てなかったのだ。
 一番最悪な可能性を考えていたことにより、オレガリオのたくらみを阻止することに成功できた。
 自分の考えが父の役に立てたことが嬉しいためか、少し興奮気味だ。

「くっ! まさか娘の方に気付かれていたとは……」

 俊夫の反応から、彼は転移魔術のことに思い至らなかった。
 洞察力の高い俊夫だからこそ、転移魔術を戦闘に使用するときのリスクを理解していたからだろう。
 だからこそ、この一撃に掛けたというのに、まさかパワーアップの時同様失敗に終わるなんて思いもしなかった。
 俊夫を騙すことができれば勝てると思っていたが、その娘の方も洞察力が高い可能性があるかもしれないということを少しも疑わなかった。

「どうやら、疲労の色が見えるな。それもそうか、またも賭けに失敗して精神的疲労が一気に押し寄せて来たのだろう?」

「……チッ!」

 オレガリオは、先程よりも汗を掻いている。
 その様子から、俊夫はオレガリオが綾愛の攻撃によるダメージだけでなく、疲労していることに気付く。
 徹底的に集中し、死の危険を冒してまでおこなったカウンター攻撃。
 転移魔術を使用する時、遠距離よりも近距離の方が移動先に余計なイメージが入ってくるためかなりの集中力を必要とするのに、それが失敗してしまったのだ。
 精神的疲労はとんでもない。
 カウンター攻撃を阻止した綾愛といい、疲労のことを指摘した俊夫といい、こちらにとって嫌な事にばかり気が付く親子だ。
 不愉快に思ったオレガリオは、怒りの表情で舌打ちをするしかなかった。

「休ませない! 行くぞ!」

「うんっ!」

 綾愛の火球が直撃したダメージと精神的疲労により、オレガリオの動きは鈍くなったはず。
 休ませて回復されてはまた何をしてくるか分からないため、俊夫は攻撃をおこなうことを決意した。
 そして、綾愛に声をかけてオレガリオへと向かって斬りかかって行った。

「フンッ!!」

「グッ!!」

 接近と共に上段から振り下ろされた俊夫の攻撃を、オレガリオは刀で受け止める。
 ダメージ・疲労のどちらによるものかは分からないが、オレガリオの動きが鈍くなっている。

「ハッ!!」

「くっ!!」

 俊夫の攻撃を止めたことで動きが止まったオレガリオに向かって、綾愛がまたも火球魔術で攻撃をする。
 少し前までなら気にしていなかった綾愛の攻撃だが、今は無視できなくなったらしく、オレガリオは必死に俊夫から距離を取ることで綾愛の攻撃を回避することに成功した。

「ハァ、ハァ、おのれっ!!」

 休む間もない俊夫と綾愛の攻撃により更に疲労が増したオレガリオは、息を切らして悔しそうに声を漏らした。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

プライベート・スペクタル

点一
ファンタジー
【星】(スターズ)。それは山河を変えるほどの膂力、千里を駆ける脚力、そして異形の術や能力を有する超人・怪人達。 この物語はそんな連中のひどく…ひどく個人的な物語群。 その中の一部、『龍王』と呼ばれた一人の男に焦点を当てたお話。 (※基本 隔週土曜日に更新予定)

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

処理中です...