主人公は高みの見物していたい

ポリ 外丸

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3学年 後期

第254話

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「……どうした? かかってこないのか?」

 これまでと違う雰囲気を醸し出しているオレガリオが、刀を構えた状態で俊夫と綾愛の柊家親子に問いかける。
 2人が不用意に攻めかかるのを警戒し、動かないでいることを分かっているからこその挑発だ。

『……カウンター狙いか?』

 オレガリオが自分から攻めかからずに挑発してくる理由。
 それは、きっと何か狙いがあるからだろう。
 こちらが攻めかかった時に効果を発揮する、いわばカウンター系の攻撃なのだろうと俊夫は分析した。

『……気付いているだろうな。しかし、何をするかまでは気付かないはず……』

 自分がカウンターで攻撃しようとしていることに、俊夫が気付いていることは分かっている。
 ここまでの戦いで、俊夫の洞察力が高いことは理解しているからだ。
 何をするのか悟られていることは、戦闘においては不利なことのはずなのに、それでもオレガリオは気にしていない。
 カウンターで攻撃することを狙っているのは確かだが、「どんな方法で」までは気付いていないはずだ。
 それさえ気付かれていなければ、俊夫に致命傷を与えることができる。
 そうすれば、この互角ともいえる状況を打破できる。
 そのための秘策だ。

「…………」「…………」

 お互いの思惑を窺うように睨みあう俊夫とオレガリオ。
 しかし、そんな時間が経過しようと、これ以上相手の思惑を見抜くことなどできないことは明白だ。

「行くしかないな……」

 何もしないまま睨みあっていても時間が経過するだけだ。
 俊夫からすれば、この皇都にいる魔闘師が結集する時間を稼げるので別に構わないのだが、別の場所へ移動した伸のことが気になる。
 彼の援護に行くためにも、俊夫はオレガリオとの決着をつけるべく、居合斬りの構えを取った。

『……フッ、あれだけ婿選びは厳しくするつもりだったのだが……』

 俊夫は、自分が伸のことを心配していることが何故だかおかしく思え、内心笑みを浮かべた。
 自分は確かに娘を溺愛している。
 しかし、柊家を継続させるためは、綾愛に婿を取らざるを得ない。
 そのため、婿には文句の付け所のない者を求めることにしていた。
 そんななか、学園に入学してすぐ、綾愛が一人の男子学生と仲良くしているという噂が耳に入った。
 入学してすぐ、学園で魔物の襲撃事件が起きた後からだ。
 娘に近付く男は自分の目できっちり見極めなければならないと、俊夫は綾愛にその男子学生を家に連れてこさせた。
 そして、連れてきたのが伸だった。
 柊家当主の自分が放つ圧力にも全く屈せず、それどころか反対に自分が圧されているようだった。
 聞いてみれば、彼の祖父は現鷹藤家当主である康義の弟だというではないか。
 康義に弟がいたなんて聞いたことがないが、伸の話を聞いて納得がいった。
 鷹藤家は魔闘師のトップを走る名家だが、一昔前は名声は他の名家と拮抗していた。
 他の名家よりも名声を上げるためには、魔力の無いような子供の存在は秘匿したかったのだろう。
 その当時、柊家で同じようなことが起きていたとしたら、鷹藤家のような行動をしていたかもしれないため、完全に否定できないところがある。
 なんにしても、綾愛の婿にすることができれば、柊家が鷹藤家に代わり国内魔闘師業界でトップになる事も可能になる。
 そんな打算も全くない訳ではないが、綾愛の婿にこれ以上の人間は出現することはない。
 綾愛自身、伸に好意を向けているため、俊夫としても認めざるを得なかった。
 その伸が、これまでで最強最悪の魔人と相対している。
 もう伸のことを婿として認識しているからこそ、自分が彼のことを心配しているのだと俊夫は理解した。

「……ハッ!!」

 どんな方法でカウンターをしてくるのか分からないが、それが分かっているのだから対応もできるはず。
 そう考えた俊夫は、警戒しつつもオレガリオに向かって走り出した。

「…………」

 カウンターを狙うオレガリオは、ギリギリまで引きつけるつもりなのだろう。
 刀を構えながら、向かってくる俊夫をジッと見つめている。

「シッ!!」

「……っ!!」

 自分の間合いに入ったオレガリオに対し、俊夫は居合斬りを放つ。
 薙ぎ払いの軌道で迫る俊夫の刀。
 それなのに、オレガリオはなかなか動こうとしない。
 しかし、俊夫の刀が服に触れそうになった瞬間、オレガリオは目を見開く。

“フッ!!”

「っっっ!?」

 カウンター攻撃が来ないことに訝しみながらも、俊夫は刀を振り抜く。
 だが、手に切り裂く感触が来ることはなかった。
 オレガリオが、一瞬にして消え去ったからだ。

「……っ!!」

「なっ!?」

 空振りをした俊夫は、すぐさまオレガリオの気配を探る。
 すると、その居場所はすぐに分かった。
 自分の背後に立っており、刀を振り上げている状態で。
 攻撃が空振りに終わり、刀を振り抜いた状態の今では、とてもではないが躱すことも防ぐことも不可能。
 俊夫は、自分が斬られることを覚悟した。

「もらった!!」

 勝利を確信したオレガリオは、俊夫に向かって刀を振り下ろした。

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