257 / 281
3学年 後期
第256話
しおりを挟む
柊親子とオレガリオが戦っている場所の隣の闘技会場では、柊家当主義康と息子の康則、義康の孫で康則の息子で魔人と化した文康が戦っていた。
「ハハッ!! どうしたよ!?」
「ぐうっ!!」
「ぐっ!!」
両手を広げ、高笑いをする文康は、離れた位置で膝をつく祖父と父に問いかける。
魔石を飲み込みパワーアップに成功したため、戦いは文康優位に進んでいた。
康義と康則は所々怪我をしており、少なくない量の出血をしている。
文康も数ヶ所傷を負っているが、軽傷らしく痛みを感じている様子はない。
「昔のように打ち負かしてくれよ! お爺様! お父様!」
オレガリオに誘拐されるまで、文康は一度として祖父や父を倒すことなどできたことはなかった。
小さい頃から天才と言われ、才能の面だけで言えば祖父や父を超えることは間違いなかったが、高校に入ってから伸び悩み、その機会が訪れることはなかった。
魔闘師業界のトップである鷹藤家の長男に生まれ、祖父から父、父から自分へと当主の座が受け継がれる可能性が高いため、プライドばかりが高くなり、傲慢な性格になっていたのが伸び悩んだ原因と言えるだろう。
そんな性格になったのも、才能が高かったことも原因かもしれない。
近くにライバルがいなかったことで、モチベーションが上がらないことが多かったのも成長の妨げになっていた可能性がある。
なかなか成長できず、数か月前までは祖父や父を超える未来図なんて見えなかった。
それなのに、魔人になったらその夢物語があっさりと実現することになった。
あれほどイラついていた思いが一気に晴れ、文康の気分は高揚するばかりだ。
そのため、康義や康則を挑発するように話しかけた。
「くっ!」
「こいつっ!」
2対1でこの状況。
たしかに文康は強くなったと言わざるを得ないが、それは魔人になったからだ。
人間を捨て、魔人になる事で得たような、いわばドーピングのような力でしかない。
しかし、調子に乗っている文康に追いつめられている自分たちが何を言おうと、負け犬の遠吠えとしてしか認識されないことは分かっているため、康義と康則は言い返せず歯噛みするしかなかった。
『しかし、どうしたものか……』
思っていた以上に、文康はパワーアップしている。
技術に関しては、数か月前とそこまで変わりはないため多少の隙は見受けられる。
しかし、その技術を補うように込められた魔力が問題だ。
いくら文康が自分より技術的に劣っているとはいっても、すべての攻撃を躱すことは難しい。
そのため、刀で受け止めたりするのだが、大量の魔力で身体強化した攻撃の威力が半端ではなく、受け止めた瞬間に吹き飛ばされてしまう。
ならば、遠距離からの魔術攻撃を放ってみるが、文康は溢れる魔力を使用して防いでしまうため、無駄な攻撃に終わってしまう。
危険とわかりつつも、接近戦で勝負するしかない状況に、康義としては悩ましく思っていた。
『このまま続けてもこちらが不利だな……』
魔力によって底上げされた強力な攻撃をかいくぐり、文康につけることができるのは浅い傷。
それに対し、自分たちは文康の攻撃を受ければ大怪我をしてしまうため、刀で受け止めれば吹き飛ばされ、またも接近することに苦労することになる。
その繰り返しを続けなければならないことを考えると、自分たちの方が不利なのは明白だ。
何か文康に深手を負わせる一撃ができないか。
康義は必死に頭を巡らせていた。
「……何か考えているみたいだが、そんな時間を与えないぜ!」
パワーアップしたことで、魔力量が大幅に上昇した。
その溢れる魔力を使うことで、自分が祖父と父を同時に相手しても有利に戦えている。
しかし、経験値が豊富な祖父に時間を与えると、もしかしたらこの状況を覆す方法を思いついてしまう可能性がある。
そうさせないために、文康は言い終わりと共に、刀を振って魔力の斬撃を2人に向かって放った。
「チッ!」
「くっ!」
自分の孫なだけはあり、こっちにとって嫌な所をついてくる。
もう少し考える時間が欲しいところだが、攻撃を回避することに集中しないと、何かを思いつく前に大打撃を受けてしまいかねない。
仕方がないため、康義はひとまず考えることをやめ、文康の攻撃に対処することを選択するしかなかった。
『……こうなったら、自分を犠牲にして……』
康義の援護を担当しているためか、康則の方が後方に位置している。
距離があるためか、康義よりも文康の攻撃を躱すことにまだ余裕がある。
そのためか、文康への対抗策も一つだけ浮かんでいた。
それは、自分の身を犠牲にすることで、文康に大きな隙を作りだすという考えだ。
孫殺しだけでなく息子殺しまで背負わせることになってしまうため、提案したところで父の康義は頷きはしないだろう。
しかし、そうするしか文康を倒す方法がないため、康則は隙を見て勝手に実行するしかないと考えた。
そのため、文康の動きを止める機会を見つけるため、康則は攻撃を躱しながら少しずつ距離を詰め始めた。
「ハハッ!! どうしたよ!?」
「ぐうっ!!」
「ぐっ!!」
両手を広げ、高笑いをする文康は、離れた位置で膝をつく祖父と父に問いかける。
魔石を飲み込みパワーアップに成功したため、戦いは文康優位に進んでいた。
康義と康則は所々怪我をしており、少なくない量の出血をしている。
文康も数ヶ所傷を負っているが、軽傷らしく痛みを感じている様子はない。
「昔のように打ち負かしてくれよ! お爺様! お父様!」
オレガリオに誘拐されるまで、文康は一度として祖父や父を倒すことなどできたことはなかった。
小さい頃から天才と言われ、才能の面だけで言えば祖父や父を超えることは間違いなかったが、高校に入ってから伸び悩み、その機会が訪れることはなかった。
魔闘師業界のトップである鷹藤家の長男に生まれ、祖父から父、父から自分へと当主の座が受け継がれる可能性が高いため、プライドばかりが高くなり、傲慢な性格になっていたのが伸び悩んだ原因と言えるだろう。
そんな性格になったのも、才能が高かったことも原因かもしれない。
近くにライバルがいなかったことで、モチベーションが上がらないことが多かったのも成長の妨げになっていた可能性がある。
なかなか成長できず、数か月前までは祖父や父を超える未来図なんて見えなかった。
それなのに、魔人になったらその夢物語があっさりと実現することになった。
あれほどイラついていた思いが一気に晴れ、文康の気分は高揚するばかりだ。
そのため、康義や康則を挑発するように話しかけた。
「くっ!」
「こいつっ!」
2対1でこの状況。
たしかに文康は強くなったと言わざるを得ないが、それは魔人になったからだ。
人間を捨て、魔人になる事で得たような、いわばドーピングのような力でしかない。
しかし、調子に乗っている文康に追いつめられている自分たちが何を言おうと、負け犬の遠吠えとしてしか認識されないことは分かっているため、康義と康則は言い返せず歯噛みするしかなかった。
『しかし、どうしたものか……』
思っていた以上に、文康はパワーアップしている。
技術に関しては、数か月前とそこまで変わりはないため多少の隙は見受けられる。
しかし、その技術を補うように込められた魔力が問題だ。
いくら文康が自分より技術的に劣っているとはいっても、すべての攻撃を躱すことは難しい。
そのため、刀で受け止めたりするのだが、大量の魔力で身体強化した攻撃の威力が半端ではなく、受け止めた瞬間に吹き飛ばされてしまう。
ならば、遠距離からの魔術攻撃を放ってみるが、文康は溢れる魔力を使用して防いでしまうため、無駄な攻撃に終わってしまう。
危険とわかりつつも、接近戦で勝負するしかない状況に、康義としては悩ましく思っていた。
『このまま続けてもこちらが不利だな……』
魔力によって底上げされた強力な攻撃をかいくぐり、文康につけることができるのは浅い傷。
それに対し、自分たちは文康の攻撃を受ければ大怪我をしてしまうため、刀で受け止めれば吹き飛ばされ、またも接近することに苦労することになる。
その繰り返しを続けなければならないことを考えると、自分たちの方が不利なのは明白だ。
何か文康に深手を負わせる一撃ができないか。
康義は必死に頭を巡らせていた。
「……何か考えているみたいだが、そんな時間を与えないぜ!」
パワーアップしたことで、魔力量が大幅に上昇した。
その溢れる魔力を使うことで、自分が祖父と父を同時に相手しても有利に戦えている。
しかし、経験値が豊富な祖父に時間を与えると、もしかしたらこの状況を覆す方法を思いついてしまう可能性がある。
そうさせないために、文康は言い終わりと共に、刀を振って魔力の斬撃を2人に向かって放った。
「チッ!」
「くっ!」
自分の孫なだけはあり、こっちにとって嫌な所をついてくる。
もう少し考える時間が欲しいところだが、攻撃を回避することに集中しないと、何かを思いつく前に大打撃を受けてしまいかねない。
仕方がないため、康義はひとまず考えることをやめ、文康の攻撃に対処することを選択するしかなかった。
『……こうなったら、自分を犠牲にして……』
康義の援護を担当しているためか、康則の方が後方に位置している。
距離があるためか、康義よりも文康の攻撃を躱すことにまだ余裕がある。
そのためか、文康への対抗策も一つだけ浮かんでいた。
それは、自分の身を犠牲にすることで、文康に大きな隙を作りだすという考えだ。
孫殺しだけでなく息子殺しまで背負わせることになってしまうため、提案したところで父の康義は頷きはしないだろう。
しかし、そうするしか文康を倒す方法がないため、康則は隙を見て勝手に実行するしかないと考えた。
そのため、文康の動きを止める機会を見つけるため、康則は攻撃を躱しながら少しずつ距離を詰め始めた。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
プライベート・スペクタル
点一
ファンタジー
【星】(スターズ)。それは山河を変えるほどの膂力、千里を駆ける脚力、そして異形の術や能力を有する超人・怪人達。
この物語はそんな連中のひどく…ひどく個人的な物語群。
その中の一部、『龍王』と呼ばれた一人の男に焦点を当てたお話。
(※基本 隔週土曜日に更新予定)
異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~
ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。
しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。
やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。
そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。
そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。
これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる