悪役令嬢リティシア

如月フウカ

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魔力

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「他の属性ならどんな色なの?アレクシスは?」


 その眼鏡だけで相手の属性が色で分かり、更に魔力の強さまで分かるとは。魔法で出来ることには最早制限がなく、可能性は無限大なのかもしれない。


 しかしそれだけで分かるとなると…少し怖い気もする。使い方によっては、魔力があるかもしれないと信じていた人を奈落の底に突き落とす事にもなってしまうだろう。どんな物にも言える事だが、使い方には十分に気をつけなければならない。


「火は赤、水は青、氷は水色、風は緑、土は茶色、雷は黄色…それからまだ確認されてはいないけど、光は白、闇は黒だ。俺は属性が水だから…青色になるはずだぞ。」


「そう。我ながらどうでもいい事を聞いたわね」


 すっかり悪役リティシアの演技が身についちゃったなぁ…私は一体いつまでこんな事を続けなきゃいけないんだろう。でもアレクの為だから…頑張らなくちゃね。


 確認したところ、アレクが先程取りに行ったものはどうやら眼鏡だけのようであった。私がたったそれだけの為に待たされたのかと怒ると、教えるにあたってこちらの能力を把握しておきたかったと彼は返した。勿論謝罪も付け加えられて。


 …最もらしい答えね。まぁ私は初めから怒ってないんだけどここでツッコまなければリティシアらしくないから仕方ない。ごめんなさい、アレク。


「この眼鏡の欠点は自分の魔力を確認する事が出来ないということ。自分の魔力を知りたければ他の人に頼むしかないって訳だ。」


「そう。アレクシス。貴方の魔力、私が確認してあげましょうか?」


「…確認してくれるのか?」


「良いわよ。ほら貸しなさい」


 アレクシスは私の意外な反応に戸惑いながらもこちらに眼鏡を差し出してくる。魔法のアイテムなんて前世にはなかったから…どんなものか興味があるのよね。


 内心ドキドキしながら眼鏡をそっとかけてみると、私は目を疑った。


 アレクシスの言った通り、彼の周りには真っ青なオーラが現れていた。それは予想可能であったが、問題はその色だ。彼を纏うオーラは…濃く、そして水面の様に透き通った青色であった。


 触れる者全てを浄化するかの様な美しく繊細なオーラ。その周囲にまるで小さな宝石が散りばめられているように…眩く輝いている。私などが触れたら一瞬で弾かれてしまいそうな純粋無垢な色だ。


 なるほどこれが…彼の使う魔法、そして彼の持つ魔力なのか。


 全てを飲み込むような魔力を持つリティシアと対比するならば全てを優しく受け入れるかのような魔力を持つアレクシス。この二人がどう足掻いても結ばれないという事は…言うまでもないわね。


 無言でアレクシスを見つめ続けていると不審に思った彼が「…どうした?ちゃんと見えたか?」と問うてくる。


「…何も。何も見えなかったわ。」


「えっ、本当か?俺の時は見えたんだけど…おかしいな」


「見えなかった事にするわ」


「あ、なるほどな見えなかった事にしたのか。…え、なんで?」


「…別に。理由なんてないわ。それよりさっさと教えてくれる?私はそんなに暇じゃないのだけれど」


「あぁそうか、悪い。それじゃ早速始めようか」


 アレクシスは私から受け取った眼鏡をケースに仕舞うと、側に置く。なんとも不思議な眼鏡だ。あの眼鏡で主人公を見たら一体どう映るのだろうか?アレクシスよりも澄んだ色なのか…それとも?


 まぁ考えても分からないわね。主人公の魔力がどうこうより私はまず主人公と仲良くなる事が先だもの。殺される可能性を少しでも減らさないとね。


「リティシア、授業形式でやるか?」


「そうね。ちゃんと教えてくれるならなんだっていいわ。」


「分かった。じゃぁそこの席に座ってくれるか?魔法に関する本があるからそれを教科書にしよう」


「何処に?そんなものないわよ」


 アレクシスの言葉に辺りを見渡してみるが、本はおろか本棚すら見当たらない。勿論椅子もない。ここはどう見ても棚だけしかない寂しい部屋だ。


「あるぜ。そこの紋章、見えるか?」


 彼が指差した先にはただの白い壁であった。確かによく見ると小さくこの城の紋章が刻まれてある。


「この部屋は俺がいつも授業を受けている部屋なんだ。他人にどんな授業を受けているか聞かれないように奥の方に作られている。普段は何もない部屋だから誰かに気づかれることもない。」


「何が言いたいの?」


 彼は私の質問には答えず、手を前に突き出し「渦巻ルーアクト」と紋章を見つめ、呟く。


 すると彼の手から澄んだ水の渦が放たれ、紋章へと真っ直ぐに飛んでいく。水の渦は紋章の周囲を囲う様にグルグルと激しく円を描いていく。そしてその渦が紋章の形を形作ったかと思うと、跡形もなく消え去ってしまった。


 目の前の光景が未だに信じられずに呆然と立ち尽くす。私は今、目の前で魔法を見てしまったのか。「ルーアクト」とは呪文なのだろうか。明らかに戦闘目的ではない魔法も使う事が出来るのか。


 更に私が驚くべき点はそれだけではなかった。壁に刻まれた紋章が激しく輝いたかと思うと机と本棚そして椅子が何処からともなく現れたのである。


「さぁリティシア。個人授業を始めようか。」
 

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