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説得
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私は彼から目を背け、話題を変える為に静かに呟く。ここが重要。失敗してはダメよ。
「魔法。」
「え?」
「魔法を教えてほしいの」
私のその言葉に衝撃を隠せない様子を見せた後、彼は顎に手を当てて考え始める。
この反応は想定内だ。…彼ならばバカにしたり、頭ごなしに否定する様な事はしないだろうと思っていたが、その通りであった。これならば話がしやすい。
「私ね、魔法が使えないの」
意を決してその先の言葉を告げるとアレクシスは不思議そうにこちらを見つめてくる。
当たり前よね、私…いえ悪役令嬢リティシアは大魔法使いなんだから。婚約者である彼が知らないはずないわ。
「…リティシアは今世紀最大の魔法使いなんじゃないのか?」
彼の言葉に私は目を見開き、驚く。
え、そんなこと言ってたの?リティシア、あんた適当なこと言ってんじゃないわよ。今世紀最大の魔法使いはリティシアじゃなくて主人公よ。そうに決まってるわ。
…さてと、どう答えようかしらね。態度次第ではすぐバレてしまうから、気をつけないと。
内容は昨晩、どうにか考えてきたわ。アレクはどんなに下手な言い訳でも受け入れてくれそうだけど、私が嫌だからね。
どうにか理解してくれそうで…適度に真実を組み込ませていくような…そんな方式でいくわ。
…女優リティシア、いくわよ。
「それは…嘘を言っていただけよ」
「…嘘?」
「そう。昔は本当に魔法を使えたんだけど、魔法が暴走して怪我をしてから…お母様とお父様が使わせてくれなくなってしまったの。アレクシスも知っての通り私のお母様とお父様は過保護だから、魔法に関する知識を全て遠ざけられて…気づいたらすっかり忘れてしまっていたわ。でも魔法が使えないと世間に知られてはいけないから仕方なく嘘を言っていたってわけよ。」
どう?一日かけてどうにか作り上げた言い訳よ。魔力の高さでその人の価値が決まるような世界でこんな事はあり得ないんだけど、お母様とお父様もあり得ないほど過保護な人だから…そう。あり得ない同士の直接対決よ。
お願い、どうか納得して。
顎に手を当て考え込むアレクシスに祈るような視線を向ける。
貴方が疑問を感じるのは分かるわ。腑に落ちないところがあるのも分かる。でも今はそこを聞かないで…ただ私に魔法を教えてほしい。
彼は一つの結論を出したのか、ゆっくりと顔を上げた。
「…なるほどな。つまり俺は…お前に魔法を一から教えればいいってことだな」
まだ少し引っかかる点があるようであったが、彼はなんとか納得してくれたようであった。
良かった。第一段階クリアね。次は私がしっかり魔法を覚えなくちゃ。大丈夫。勉強なら前世で嫌というほどやったから。…友達がいなくて暇で勉強してただけなんだけどね。
「えぇ。少しでも分かりにくかったりしたら怒るから覚悟しなさい」
「分かった。リティシアの為にも頑張るよ」
「期待はしてないけど…せいぜい頑張りなさい」
私は彼を見下すかの様に睨みつけ、冷酷な声で言い放つ。
そして彼はまた少し考えると何かを閃いたような表情を見せてくる。私にこの部屋に待つように述べたかと思うと彼はさっさと部屋を出ていってしまう。
アレクの事だから一日私を放置して帰らせようとしているとかではないと思うが、一体何をしようとしているのだろうか?
暫く呆然と立ち尽くしていると「お待たせ」とアレクシスが帰ってくる。現れた彼を私はじっと凝視する。この部屋を去る前と去った後、彼に変化は殆どないのだが…彼は何故か普段はかけていないはずの眼鏡をかけていたのである。
小説では出てこなかったから想像もしなかったけど…まさか眼鏡をかけた姿まで完璧とはね。これでは令嬢が惚れてしまうのも無理はないわ。
「その眼鏡は何?」
不審に思い、眼鏡を指差し彼に問うと彼は「あぁ、これか?」と言いながら眼鏡を外しこちらに見せてくる。
「これはつけると相手の属性と魔力が分かる魔法がかけられている。魔力のない人間でも、これをかければ相手の能力を測る事ができるんだ。」
「へぇ。そんなものがあるのね。」
「その人の周りに色のついたオーラが出てきて、それで判断することが出来るんだけど、属性は色、魔力の強さは濃さで決まるんだ。」
「…私はどうなの?」
私の言葉を受け、彼は眼鏡をかけじっとこちらを見つめてくる。そしてゆっくりと言葉を述べていく。
「リティシアは真っ赤に燃え盛る…炎の様な赤だ。それに凄く濃い。全てを飲み込んでしまいそうな…そんな感じがする」
まぁ予想どおりね。小説で悪役令嬢として全てを飲み込もうとしたようなもんだし…アレクシスが見たオーラはリティシアのイメージぴったりだわ。
とりあえずちゃんと魔力がある様で良かった。魔法の使い方さえ知れれば使えるってことだものね。
それにしても…火が赤なのは分かるけど、他の属性は何色になるのかしら?
「魔法。」
「え?」
「魔法を教えてほしいの」
私のその言葉に衝撃を隠せない様子を見せた後、彼は顎に手を当てて考え始める。
この反応は想定内だ。…彼ならばバカにしたり、頭ごなしに否定する様な事はしないだろうと思っていたが、その通りであった。これならば話がしやすい。
「私ね、魔法が使えないの」
意を決してその先の言葉を告げるとアレクシスは不思議そうにこちらを見つめてくる。
当たり前よね、私…いえ悪役令嬢リティシアは大魔法使いなんだから。婚約者である彼が知らないはずないわ。
「…リティシアは今世紀最大の魔法使いなんじゃないのか?」
彼の言葉に私は目を見開き、驚く。
え、そんなこと言ってたの?リティシア、あんた適当なこと言ってんじゃないわよ。今世紀最大の魔法使いはリティシアじゃなくて主人公よ。そうに決まってるわ。
…さてと、どう答えようかしらね。態度次第ではすぐバレてしまうから、気をつけないと。
内容は昨晩、どうにか考えてきたわ。アレクはどんなに下手な言い訳でも受け入れてくれそうだけど、私が嫌だからね。
どうにか理解してくれそうで…適度に真実を組み込ませていくような…そんな方式でいくわ。
…女優リティシア、いくわよ。
「それは…嘘を言っていただけよ」
「…嘘?」
「そう。昔は本当に魔法を使えたんだけど、魔法が暴走して怪我をしてから…お母様とお父様が使わせてくれなくなってしまったの。アレクシスも知っての通り私のお母様とお父様は過保護だから、魔法に関する知識を全て遠ざけられて…気づいたらすっかり忘れてしまっていたわ。でも魔法が使えないと世間に知られてはいけないから仕方なく嘘を言っていたってわけよ。」
どう?一日かけてどうにか作り上げた言い訳よ。魔力の高さでその人の価値が決まるような世界でこんな事はあり得ないんだけど、お母様とお父様もあり得ないほど過保護な人だから…そう。あり得ない同士の直接対決よ。
お願い、どうか納得して。
顎に手を当て考え込むアレクシスに祈るような視線を向ける。
貴方が疑問を感じるのは分かるわ。腑に落ちないところがあるのも分かる。でも今はそこを聞かないで…ただ私に魔法を教えてほしい。
彼は一つの結論を出したのか、ゆっくりと顔を上げた。
「…なるほどな。つまり俺は…お前に魔法を一から教えればいいってことだな」
まだ少し引っかかる点があるようであったが、彼はなんとか納得してくれたようであった。
良かった。第一段階クリアね。次は私がしっかり魔法を覚えなくちゃ。大丈夫。勉強なら前世で嫌というほどやったから。…友達がいなくて暇で勉強してただけなんだけどね。
「えぇ。少しでも分かりにくかったりしたら怒るから覚悟しなさい」
「分かった。リティシアの為にも頑張るよ」
「期待はしてないけど…せいぜい頑張りなさい」
私は彼を見下すかの様に睨みつけ、冷酷な声で言い放つ。
そして彼はまた少し考えると何かを閃いたような表情を見せてくる。私にこの部屋に待つように述べたかと思うと彼はさっさと部屋を出ていってしまう。
アレクの事だから一日私を放置して帰らせようとしているとかではないと思うが、一体何をしようとしているのだろうか?
暫く呆然と立ち尽くしていると「お待たせ」とアレクシスが帰ってくる。現れた彼を私はじっと凝視する。この部屋を去る前と去った後、彼に変化は殆どないのだが…彼は何故か普段はかけていないはずの眼鏡をかけていたのである。
小説では出てこなかったから想像もしなかったけど…まさか眼鏡をかけた姿まで完璧とはね。これでは令嬢が惚れてしまうのも無理はないわ。
「その眼鏡は何?」
不審に思い、眼鏡を指差し彼に問うと彼は「あぁ、これか?」と言いながら眼鏡を外しこちらに見せてくる。
「これはつけると相手の属性と魔力が分かる魔法がかけられている。魔力のない人間でも、これをかければ相手の能力を測る事ができるんだ。」
「へぇ。そんなものがあるのね。」
「その人の周りに色のついたオーラが出てきて、それで判断することが出来るんだけど、属性は色、魔力の強さは濃さで決まるんだ。」
「…私はどうなの?」
私の言葉を受け、彼は眼鏡をかけじっとこちらを見つめてくる。そしてゆっくりと言葉を述べていく。
「リティシアは真っ赤に燃え盛る…炎の様な赤だ。それに凄く濃い。全てを飲み込んでしまいそうな…そんな感じがする」
まぁ予想どおりね。小説で悪役令嬢として全てを飲み込もうとしたようなもんだし…アレクシスが見たオーラはリティシアのイメージぴったりだわ。
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それにしても…火が赤なのは分かるけど、他の属性は何色になるのかしら?
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