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兄
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「アルターニャ王女様、風邪を引いてしまうといけないので早く行きましょう。」
アルターニャは私を強く睨みつける表情から一転、満面の笑みを浮かべる。
「はい…!殿下、あのうさぎにはお気づきになられましたか?」
「…うさぎですか?申し訳ございません、一体何の事でしょうか…」
「そ、そうですか…いえなんでもありません…お気になさならないでください…」
あぁ…全然気づいてなかったのね。
まぁ無理もないわ。私達のいる角度からはよくそれが見えたけどアレクシスからは丁度物陰に隠れちゃってるもの。
アルターニャの恥ずかしいから隠したかった気持ちとそれでもやっぱり気づいてほしい気持ちがぶつかり合った結果あそこに放置されたんでしょうね。
それにしても…この小さなバレッタにあれほどの魔法が込められていたなんて驚いたわ。流石は第二主人公と呼ばれた男ね。仮にアレクシスと敵対なんてしたら…私なんてすぐ消されてしまうわね。
他の誰と敵対してもしょうがないなって思えるけど…やっぱりアレクとだけは敵対したくないな…。
いずれは…突き放さなきゃいけないんだけどね。
黙って去っていく二人の背中をただ見つめていた私の横でアーグレンが突然ポツリと呟いた。
「公女様、あの王女様には悪いですが…私は今、正直とても清々しい気分です」
真顔でとんでもない事を呟く彼に私は思わず吹き出すと同時に同意の意を示す。
「奇遇ね。私もよ。アレクシスは誤作動と言っていたけど、私はちゃんと作動してたと思うわ」
「…私もそう思います」
きっとアルターニャが危険だと判断したから発動してくれたのよね。本当に凄い魔法だわ。
いずれまた役に立ちそうだしもう一度だけ込めてくれないかな。
そしてアーグレンが唐突に私に二つの植木変身セットを渡してきたので私はそこでようやくその存在を思い出す。
危ない危ない、これ借り物だったんだわ。ちゃんと返さないとね。
受け取ったそれをすぐにドレスのポケットにしまい、アーグレンを見ると彼はある方向を凝視し、表情を強張らせていた。
その視線の先を追うとそこには高級そうな真っ黒い衣装に身を包んだ青年が立っていた。
彼の顔立ちは大人びていて、私達より少しばかり年齢が上のように思えた。
「これはこれはリティシア嬢ではありませんか。ようこそ我が城へ」
妙に芝居がかったその口調に嫌気が差しながらも必死に目の前の人物を記憶の中から探る。
だが、見た事はない。というか覚えてない。こんな奴いた?やっぱり現世での記憶が…薄れている。
「貴方は…」
彼の呟きから察するにアーグレンは知っているらしい。そして私もその名前には聞き覚えがある…と言いたいところだが正直言って心当たりがまるでない。
「おや?見たことのない顔だな」
彼はアーグレンの姿を認めると彼の全身を舐め回すように見渡し、そして「あぁ、最近できたという護衛騎士か」と勝手に納得する。
え、私が護衛騎士をつけた事を知っているの?
そんな事まで知っているということは…まぁ服装から見てなんとなく分かっていたけど…間違いなくこの城の人間よね。
「リティシア嬢?先ほどから黙っているようだけどまさかこの俺を知らないとでも?」
「いいえ。勿論存じておりますわ…殿下」
この偉そうな態度とさっきの台詞、それから服装を見て推測するとそうとしか思えない。
よく見ればなんとなくアルターニャに似てる気もするし、恐らくコイツはアルターニャの兄…つまり王子だわ。
国は違えど同じ王子なのに…腹立つほどアレクと似てないのね。アレクシスは何があっても人を馬鹿にするような冷たい目を向けないもの。
「そうか。それはとても光栄なことだな。ではリティシア嬢、どうか私に、名前を呼ばれるという栄誉をくださらないでしょうか?」
この国の王子と思しき人物は手を胸に当て少し屈むという行動こそ丁寧な動作を行ったが、口元には嫌味な笑みを浮かべていた。
…何コイツそんなに私に名前を呼ばれたいの?
意味分かんないんだけど…あぁそうか。
私が名前を間違えてエトワール国の王子の婚約者は隣国の王子の名すら知らない世間知らずだって…言いたいのね。
ホント兄妹揃って良い性格してるわ…。
…さて困った。本気でこの人の名前を知らないわ。どうしよう、私がもし名前を間違えたら…アレクの評価まで下がっちゃう。間違えられない。でも知る術がない。
そう思ったその時、アーグレンが謎の人物を強く睨みつけ、呟いた。
「エリック殿下、私の主人を困らせるような真似はやめて頂けませんか」
「あぁ、困るなぁ君。なんで名前言っちゃうかな。リティシア嬢の事を試してたのに。」
やっぱりそうなのね。アーグレンが名前を知っていたから良かったもののそうじゃなかったら私は今頃…いやアレクの今後に関わるわね。下手に言わなくて良かった。
ありがとうアーグレン。
「もう一度だけ言います。私の主人を困らせないで下さい」
「アーグレン、待って。私は大丈夫だから」
「ですが、公女様」
「いいの。これ以上言ったら貴方が危ないわ」
「よく分かってるじゃないかリティシア嬢。そうだな、初めはこの生意気な騎士をどうにかしてやろうと思ったが…お前、相当腕の立つ騎士だろう?でなければ、かの有名な悪役令嬢リティシア嬢が護衛騎士にするはずないからな」
うーん推測した過程はどうあれアーグレンが腕の立つ騎士だって言うのは正解だわ。
アルターニャは私を強く睨みつける表情から一転、満面の笑みを浮かべる。
「はい…!殿下、あのうさぎにはお気づきになられましたか?」
「…うさぎですか?申し訳ございません、一体何の事でしょうか…」
「そ、そうですか…いえなんでもありません…お気になさならないでください…」
あぁ…全然気づいてなかったのね。
まぁ無理もないわ。私達のいる角度からはよくそれが見えたけどアレクシスからは丁度物陰に隠れちゃってるもの。
アルターニャの恥ずかしいから隠したかった気持ちとそれでもやっぱり気づいてほしい気持ちがぶつかり合った結果あそこに放置されたんでしょうね。
それにしても…この小さなバレッタにあれほどの魔法が込められていたなんて驚いたわ。流石は第二主人公と呼ばれた男ね。仮にアレクシスと敵対なんてしたら…私なんてすぐ消されてしまうわね。
他の誰と敵対してもしょうがないなって思えるけど…やっぱりアレクとだけは敵対したくないな…。
いずれは…突き放さなきゃいけないんだけどね。
黙って去っていく二人の背中をただ見つめていた私の横でアーグレンが突然ポツリと呟いた。
「公女様、あの王女様には悪いですが…私は今、正直とても清々しい気分です」
真顔でとんでもない事を呟く彼に私は思わず吹き出すと同時に同意の意を示す。
「奇遇ね。私もよ。アレクシスは誤作動と言っていたけど、私はちゃんと作動してたと思うわ」
「…私もそう思います」
きっとアルターニャが危険だと判断したから発動してくれたのよね。本当に凄い魔法だわ。
いずれまた役に立ちそうだしもう一度だけ込めてくれないかな。
そしてアーグレンが唐突に私に二つの植木変身セットを渡してきたので私はそこでようやくその存在を思い出す。
危ない危ない、これ借り物だったんだわ。ちゃんと返さないとね。
受け取ったそれをすぐにドレスのポケットにしまい、アーグレンを見ると彼はある方向を凝視し、表情を強張らせていた。
その視線の先を追うとそこには高級そうな真っ黒い衣装に身を包んだ青年が立っていた。
彼の顔立ちは大人びていて、私達より少しばかり年齢が上のように思えた。
「これはこれはリティシア嬢ではありませんか。ようこそ我が城へ」
妙に芝居がかったその口調に嫌気が差しながらも必死に目の前の人物を記憶の中から探る。
だが、見た事はない。というか覚えてない。こんな奴いた?やっぱり現世での記憶が…薄れている。
「貴方は…」
彼の呟きから察するにアーグレンは知っているらしい。そして私もその名前には聞き覚えがある…と言いたいところだが正直言って心当たりがまるでない。
「おや?見たことのない顔だな」
彼はアーグレンの姿を認めると彼の全身を舐め回すように見渡し、そして「あぁ、最近できたという護衛騎士か」と勝手に納得する。
え、私が護衛騎士をつけた事を知っているの?
そんな事まで知っているということは…まぁ服装から見てなんとなく分かっていたけど…間違いなくこの城の人間よね。
「リティシア嬢?先ほどから黙っているようだけどまさかこの俺を知らないとでも?」
「いいえ。勿論存じておりますわ…殿下」
この偉そうな態度とさっきの台詞、それから服装を見て推測するとそうとしか思えない。
よく見ればなんとなくアルターニャに似てる気もするし、恐らくコイツはアルターニャの兄…つまり王子だわ。
国は違えど同じ王子なのに…腹立つほどアレクと似てないのね。アレクシスは何があっても人を馬鹿にするような冷たい目を向けないもの。
「そうか。それはとても光栄なことだな。ではリティシア嬢、どうか私に、名前を呼ばれるという栄誉をくださらないでしょうか?」
この国の王子と思しき人物は手を胸に当て少し屈むという行動こそ丁寧な動作を行ったが、口元には嫌味な笑みを浮かべていた。
…何コイツそんなに私に名前を呼ばれたいの?
意味分かんないんだけど…あぁそうか。
私が名前を間違えてエトワール国の王子の婚約者は隣国の王子の名すら知らない世間知らずだって…言いたいのね。
ホント兄妹揃って良い性格してるわ…。
…さて困った。本気でこの人の名前を知らないわ。どうしよう、私がもし名前を間違えたら…アレクの評価まで下がっちゃう。間違えられない。でも知る術がない。
そう思ったその時、アーグレンが謎の人物を強く睨みつけ、呟いた。
「エリック殿下、私の主人を困らせるような真似はやめて頂けませんか」
「あぁ、困るなぁ君。なんで名前言っちゃうかな。リティシア嬢の事を試してたのに。」
やっぱりそうなのね。アーグレンが名前を知っていたから良かったもののそうじゃなかったら私は今頃…いやアレクの今後に関わるわね。下手に言わなくて良かった。
ありがとうアーグレン。
「もう一度だけ言います。私の主人を困らせないで下さい」
「アーグレン、待って。私は大丈夫だから」
「ですが、公女様」
「いいの。これ以上言ったら貴方が危ないわ」
「よく分かってるじゃないかリティシア嬢。そうだな、初めはこの生意気な騎士をどうにかしてやろうと思ったが…お前、相当腕の立つ騎士だろう?でなければ、かの有名な悪役令嬢リティシア嬢が護衛騎士にするはずないからな」
うーん推測した過程はどうあれアーグレンが腕の立つ騎士だって言うのは正解だわ。
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