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心配
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侍女が部屋を出ると、待ち構えていたもう一人の侍女が腕を組み、彼女を見据えていた。
「ちょっと貴女、殿下に対して馴れ馴れしすぎよ。それだから怒られちゃうのよ」
「だって…昔からお仕えしてるからつい…」
「全く…殿下が優しい人じゃなければ今頃貴女はとっくに処刑されてるわよ…」
「でもよりによって殿下のお相手がリティシア様だなんて…私はその話が出てからずっと反対してたんですよ?」
「だからって貴女がどうこうできる訳じゃないでしょ。ほら早く働きなさい。まだ仕事が残ってるわよ」
「分かりました…」
どうやら俺が侍女に対して声を荒らげてしまったことが外にまで伝わっていたようで、彼女は余計に怒られてしまっていた。
だが原因が原因であるが故に彼女を庇う気にはどうしてもなれなかった。
俺を心配してくれているだけだということは理解ができても、だからといってリティシアを悪く言っても良いという理由にはならない。
彼女と過ごしていれば分かることだが、今の彼女は噂とは全く無関係の人物なのだから。
侍女は知らないから仕方ないのかもしれないが、俺を何度も助けてくれた優しい彼女を悪く言う人間を…許せる訳がない。
暫く仕事をする気になれず、呆然として真正面の扉を見つめていると軽いノック音が耳に入ってくる。続いて聞こえてきたのはよく聞き覚えのある声であった。
「…殿下?入ってもよろしいですか?」
「……グレン?」
今はここにいるはずがない親友の声に困惑しながらも、彼に入るように促す。
ゆっくりと扉を開き入ってきた彼は、間違いなく俺の親友の姿であった。
リティシアの屋敷にいるはずの彼が何故ここに…?
「グレン…!またこっちに戻ってきていたんだな」
「あぁ。陛下の呼び出しがかかってね。私もまだ戻ってくるつもりはなかったんだが…お前にも会えると思って大人しく城へ戻ってきたんだ」
「それは嬉しいけど、父さんがどうして急に…」
「さぁな。国王の考えることは全く分からないな。それよりお前に言いたいことがあって来たんだ。」
「俺に?」
「あぁ。リティシア公女様のことで、ちょっと話があるんだ」
グレンはいつになく真剣にそう呟いた。そして俺は彼の言葉をゆっくりと繰り返す。
「リティシアの…こと?」
「そうだ。最近の公女様は何か一人で考え込んでいるようなんだ。最近と言っても私が仕えてからまだ日も浅いんだが…それでも何かおかしい気がする。お前もそう思わないか?」
「あぁ。確かに何かを…抱え込んでいる気がする」
俺のことを残酷と言い放ったあの日は特に…リティシアの本音が見えた。
彼女は俺を嫌っている素振りをしながら突然好いているかのような行動を取る。驚く程可愛らしい笑みを浮かべることもあれば、背筋も凍る程の冷たい視線を向けることもある…。
それは彼女なりに何か理由があるのだろう。単純にそういう性格なのだと言われてしまえばどうしようもないのだが、なんとなくそうではない気がする。
彼女は確実に一人で何かを抱え込んでいる。
「お前とよく似てるよ。何かを抱え込んでしまう姿が…そっくりだ。でも私はそんな二人をこれ以上見ていたくはない。」
グレンは表情を歪めると悲しそうに言葉を紡いでいく。
俺と似てるか…確かに俺は一人で抱え込む癖があるのかもしれない。…グレンにだけはよく気づかれていたが。
だがリティシアにはそんな人はいない。
抱え込んでいることに気づき、彼女が安心して話せるような相手が。
俺がそうなれるのならば、そうなってあげたい。
彼女の中の暗い何かが音を立てて崩れるように。
「そこでなんだが…二日後にシーランテ伯爵家でティーパーティが行われる。そこにリティシア様も参加するらしい。私は陛下に呼ばれたから着いていくことができなかったのだが…もしお前に余裕があるなら見に行ってくれないか?公女様もお前が行けば…喜ぶ、だろうし」
「ティーパーティか…分かった。教えてくれてありがとう、グレン。喜ぶかは分からないけど…必ず行くよ。今日と明日で仕事を終わらせて行こう」
「今日と明日でって…さっき使用人達が他に後継者がいないから殿下に仕事が一気に回ってきていてなかなか終わらないって聞いたけど…平気なのか?」
「大丈夫、他でもないグレンの頼みなんだ。必ず終わらせるよ。いつもリティシアの側にいてくれてありがとな。」
俺は安心させるように笑ってみせたのだが、彼の表情は浮かない。
本当は今すぐにでも仕事に取り掛からなければ5日経っても終わらないくらいの量が残っていたのだが…まぁペースをあげればいけるだろう。ここのところアルターニャ王女様の城に行ったりと忙しかったから仕方ないことだ。
「…全く、そういうところだよ。全部抱え込むなって言ってるだろ。折角私がいるんだから使え。騎士団の様子と陛下の件が終わったら手伝いに来るからな。」
「…ありがとう、お前には敵わないな」
俺は親友の気遣いを感じ、微笑んだ。
「ところで…お前は仕事を切り上げてリティシアのところへ行かないのか?さっきは行かないって言ってたけど…」
「新人騎士を教えたり騎士団の仕事が山積みなんだ。アレクの仕事を手伝えても少しだけだからあまり期待はするな。それに…私が行くよりアレクが行った方が公女様も安心するだろう」
「…それはどうかな」
「行ってみれば分かることだ。じゃぁまた後でな」
そう言ってグレンは部屋を出ようと扉に手をかけたのだが、何かを思い出してその手を止める。
「あぁそうだ、リティシア公女様は…お前の言う通り素晴らしい人だったよ」
「だろ?」
俺はその言葉を心底嬉しく感じたのであった。
「ちょっと貴女、殿下に対して馴れ馴れしすぎよ。それだから怒られちゃうのよ」
「だって…昔からお仕えしてるからつい…」
「全く…殿下が優しい人じゃなければ今頃貴女はとっくに処刑されてるわよ…」
「でもよりによって殿下のお相手がリティシア様だなんて…私はその話が出てからずっと反対してたんですよ?」
「だからって貴女がどうこうできる訳じゃないでしょ。ほら早く働きなさい。まだ仕事が残ってるわよ」
「分かりました…」
どうやら俺が侍女に対して声を荒らげてしまったことが外にまで伝わっていたようで、彼女は余計に怒られてしまっていた。
だが原因が原因であるが故に彼女を庇う気にはどうしてもなれなかった。
俺を心配してくれているだけだということは理解ができても、だからといってリティシアを悪く言っても良いという理由にはならない。
彼女と過ごしていれば分かることだが、今の彼女は噂とは全く無関係の人物なのだから。
侍女は知らないから仕方ないのかもしれないが、俺を何度も助けてくれた優しい彼女を悪く言う人間を…許せる訳がない。
暫く仕事をする気になれず、呆然として真正面の扉を見つめていると軽いノック音が耳に入ってくる。続いて聞こえてきたのはよく聞き覚えのある声であった。
「…殿下?入ってもよろしいですか?」
「……グレン?」
今はここにいるはずがない親友の声に困惑しながらも、彼に入るように促す。
ゆっくりと扉を開き入ってきた彼は、間違いなく俺の親友の姿であった。
リティシアの屋敷にいるはずの彼が何故ここに…?
「グレン…!またこっちに戻ってきていたんだな」
「あぁ。陛下の呼び出しがかかってね。私もまだ戻ってくるつもりはなかったんだが…お前にも会えると思って大人しく城へ戻ってきたんだ」
「それは嬉しいけど、父さんがどうして急に…」
「さぁな。国王の考えることは全く分からないな。それよりお前に言いたいことがあって来たんだ。」
「俺に?」
「あぁ。リティシア公女様のことで、ちょっと話があるんだ」
グレンはいつになく真剣にそう呟いた。そして俺は彼の言葉をゆっくりと繰り返す。
「リティシアの…こと?」
「そうだ。最近の公女様は何か一人で考え込んでいるようなんだ。最近と言っても私が仕えてからまだ日も浅いんだが…それでも何かおかしい気がする。お前もそう思わないか?」
「あぁ。確かに何かを…抱え込んでいる気がする」
俺のことを残酷と言い放ったあの日は特に…リティシアの本音が見えた。
彼女は俺を嫌っている素振りをしながら突然好いているかのような行動を取る。驚く程可愛らしい笑みを浮かべることもあれば、背筋も凍る程の冷たい視線を向けることもある…。
それは彼女なりに何か理由があるのだろう。単純にそういう性格なのだと言われてしまえばどうしようもないのだが、なんとなくそうではない気がする。
彼女は確実に一人で何かを抱え込んでいる。
「お前とよく似てるよ。何かを抱え込んでしまう姿が…そっくりだ。でも私はそんな二人をこれ以上見ていたくはない。」
グレンは表情を歪めると悲しそうに言葉を紡いでいく。
俺と似てるか…確かに俺は一人で抱え込む癖があるのかもしれない。…グレンにだけはよく気づかれていたが。
だがリティシアにはそんな人はいない。
抱え込んでいることに気づき、彼女が安心して話せるような相手が。
俺がそうなれるのならば、そうなってあげたい。
彼女の中の暗い何かが音を立てて崩れるように。
「そこでなんだが…二日後にシーランテ伯爵家でティーパーティが行われる。そこにリティシア様も参加するらしい。私は陛下に呼ばれたから着いていくことができなかったのだが…もしお前に余裕があるなら見に行ってくれないか?公女様もお前が行けば…喜ぶ、だろうし」
「ティーパーティか…分かった。教えてくれてありがとう、グレン。喜ぶかは分からないけど…必ず行くよ。今日と明日で仕事を終わらせて行こう」
「今日と明日でって…さっき使用人達が他に後継者がいないから殿下に仕事が一気に回ってきていてなかなか終わらないって聞いたけど…平気なのか?」
「大丈夫、他でもないグレンの頼みなんだ。必ず終わらせるよ。いつもリティシアの側にいてくれてありがとな。」
俺は安心させるように笑ってみせたのだが、彼の表情は浮かない。
本当は今すぐにでも仕事に取り掛からなければ5日経っても終わらないくらいの量が残っていたのだが…まぁペースをあげればいけるだろう。ここのところアルターニャ王女様の城に行ったりと忙しかったから仕方ないことだ。
「…全く、そういうところだよ。全部抱え込むなって言ってるだろ。折角私がいるんだから使え。騎士団の様子と陛下の件が終わったら手伝いに来るからな。」
「…ありがとう、お前には敵わないな」
俺は親友の気遣いを感じ、微笑んだ。
「ところで…お前は仕事を切り上げてリティシアのところへ行かないのか?さっきは行かないって言ってたけど…」
「新人騎士を教えたり騎士団の仕事が山積みなんだ。アレクの仕事を手伝えても少しだけだからあまり期待はするな。それに…私が行くよりアレクが行った方が公女様も安心するだろう」
「…それはどうかな」
「行ってみれば分かることだ。じゃぁまた後でな」
そう言ってグレンは部屋を出ようと扉に手をかけたのだが、何かを思い出してその手を止める。
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「だろ?」
俺はその言葉を心底嬉しく感じたのであった。
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