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悪役は悪役らしく
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【リティシア】
そして時間は流れ、ティーパーティ当日がやって来た。
リティシアは以前も令嬢の妨害をするためだけにティーパーティに参加していたが、次第に呼ばれなくなってしまったので本当に久々らしい。
ちなみに自分が呼んでも皆体調不良で参加を拒否したようであった。
まぁ当たり前ね。
私だってリティシアのパーティには死んでも行きたくないわよ。屋敷に入った瞬間に容赦なく燃やされそうだもの。
しかも悪役の魔力だから普通の令嬢では太刀打ちできないから、行かない、誘わないのが正しい選択肢だと思うわ。
…なんか火事の時のお約束みたいね。
そして「行かない」「誘わない」にもう一つ足すなら…「関わらない」ね。
ルナは「前回のお嬢様よりもっと美しく」をモットーにしているらしく、異常に張り切っていた。
別に本格的なパーティじゃないんだからそんなに着飾る必要もないと思うんだけどね。
「お嬢様、今回のティーパーティでお嬢様のイメージを一気に爆上げしてしまいましょう」
「爆…?貴女そんな言葉まで知ってるのね」
「もちろん知っていますよ。これでも元貴族ですからね」
その言葉と貴族は果たして関係あるのかしら…。
よく分からないけどルナは自信満々だし水を差すのもよくないわよね。ここは黙っているのが吉というものだわ。
ルナがいつものように私の跳ねた髪を梳いていると「それにしてもお嬢様の髪は本当に美しいですよね…」と独り言のように呟く。
この髪は私のものではないから、その褒め言葉を素直に受け取ることができずに少し返答に困ってしまう。
「そうね…こんなに綺麗な髪に生まれたのはお母様のおかげね」
ルナの言う通り、リティシアの髪は燃える炎のように美しい。
可愛らしいピンク色の瞳に見つめられれば大抵の男性が恋に落ちることだろう。
問題なのは性格だ。
彼女の外見と性格を一言で言うならば「綺麗な薔薇には棘がある」ということわざであろう。
…要は黙ってれば可愛いということである。
悲しいことに彼女はその最大の欠点に気づけずに殺されてしまったのだが、もし気づいていたら結末が変わったのだろうかと言われるとそうとも言えない。
主人公もリティシアとは違う系統の美人であり、彼女は心すらも美しかったのだから。
主人公がこの世に存在する限り、最初からリティシアに勝ち目なんてないのだ。
「お嬢様、本当に大人になられましたね。前のお嬢様にこうお伝えしたら『当たり前のことを言わないで』と仰られるでしょうから」
「そうでしょうね。だってそれは別…」
「別…」
「べ、別の事を考えていたんじゃないかしら?」
「そうでしょうか?それにしては会話が噛み合いすぎている気が…」
「気のせいよ、気のせい。ルナ、髪はもう良いからドレスを着ましょ…」
「ダメです。まだ殿下から頂いたものを着けていないんですから」
そういえばルナは私が婚約破棄されそうになってると思ってるのよね。
物凄い勘違いをされた覚えがあるわ。そろそろ否定しておくべきかなって思うけど長年仕えてきたお嬢様が婚約破棄を希望してるだなんて一番聞きたくないわよね…どうしよう。
ルナは喜々として私の髪にバレッタを飾り始め、こんなことを口にする。
「これを着けておけばお嬢様が殿下に愛されてるってことが他のご令嬢にも伝わりますからね」
「…見ただけじゃ誰があげたかなんて分からないじゃない?」
「いえ、このバレッタに触れればすぐに分かりますよ。水の魔力が微かに感じられますし、大量の魔力を何かにこれほど上手に込めることができるのは王族くらいですから」
「そうだったのね…」
アルターニャにあれほどの水をかけるのは結構高度な技術だったのね。流石だわ。
あーあ、アレクにこれに魔法を込めるやり方でも聞いておくんだったわ。これはちゃんとピンチの時に発動してくれる心強い味方なんだもの。
「でもお嬢様なら王族の方と同じように上手にできるかもしれませんね。お嬢様の魔力は他のご令嬢よりずっと高くて強いですから」
「それがどうしてか分かる?」
「え…お嬢様がそう生まれたからじゃないんですか?」
「そうね。私が悪役にそう生まれたからよ」
魔力が異常に高い理由は私が悪役だから。
主人公を妨害し、王子に婚約破棄されるただの不幸な役。物語を際立たせる為に必要で、最後には残酷に消されていく。
でも主人公二人の幸せを祈る悪役だって良いと思わない?
ちゃんと悪役らしく退場するわ。私は私の役を全うする。
だから神様、どうか私を殺さないで。
殺すならせめて…アレクが幸せになる姿をこの目で見てからにして。
そうすれば悪役令嬢なんかに転生させたことを許してあげるから。
何も知らない世界に放り出された私を何度も助けてくれたアレクを幸せにしたいの。彼には感謝してもしきれないわ。だから彼には最高の形で恩を返したい。
私の…誰よりも好きな人だから。
良いでしょ?
結果的には変わらないんだから。これは悪役が消え、主人公が幸せになるという…ちゃんとした正規ルートなのよ。
ねぇ、ちゃんと聞いてる?
そして時間は流れ、ティーパーティ当日がやって来た。
リティシアは以前も令嬢の妨害をするためだけにティーパーティに参加していたが、次第に呼ばれなくなってしまったので本当に久々らしい。
ちなみに自分が呼んでも皆体調不良で参加を拒否したようであった。
まぁ当たり前ね。
私だってリティシアのパーティには死んでも行きたくないわよ。屋敷に入った瞬間に容赦なく燃やされそうだもの。
しかも悪役の魔力だから普通の令嬢では太刀打ちできないから、行かない、誘わないのが正しい選択肢だと思うわ。
…なんか火事の時のお約束みたいね。
そして「行かない」「誘わない」にもう一つ足すなら…「関わらない」ね。
ルナは「前回のお嬢様よりもっと美しく」をモットーにしているらしく、異常に張り切っていた。
別に本格的なパーティじゃないんだからそんなに着飾る必要もないと思うんだけどね。
「お嬢様、今回のティーパーティでお嬢様のイメージを一気に爆上げしてしまいましょう」
「爆…?貴女そんな言葉まで知ってるのね」
「もちろん知っていますよ。これでも元貴族ですからね」
その言葉と貴族は果たして関係あるのかしら…。
よく分からないけどルナは自信満々だし水を差すのもよくないわよね。ここは黙っているのが吉というものだわ。
ルナがいつものように私の跳ねた髪を梳いていると「それにしてもお嬢様の髪は本当に美しいですよね…」と独り言のように呟く。
この髪は私のものではないから、その褒め言葉を素直に受け取ることができずに少し返答に困ってしまう。
「そうね…こんなに綺麗な髪に生まれたのはお母様のおかげね」
ルナの言う通り、リティシアの髪は燃える炎のように美しい。
可愛らしいピンク色の瞳に見つめられれば大抵の男性が恋に落ちることだろう。
問題なのは性格だ。
彼女の外見と性格を一言で言うならば「綺麗な薔薇には棘がある」ということわざであろう。
…要は黙ってれば可愛いということである。
悲しいことに彼女はその最大の欠点に気づけずに殺されてしまったのだが、もし気づいていたら結末が変わったのだろうかと言われるとそうとも言えない。
主人公もリティシアとは違う系統の美人であり、彼女は心すらも美しかったのだから。
主人公がこの世に存在する限り、最初からリティシアに勝ち目なんてないのだ。
「お嬢様、本当に大人になられましたね。前のお嬢様にこうお伝えしたら『当たり前のことを言わないで』と仰られるでしょうから」
「そうでしょうね。だってそれは別…」
「別…」
「べ、別の事を考えていたんじゃないかしら?」
「そうでしょうか?それにしては会話が噛み合いすぎている気が…」
「気のせいよ、気のせい。ルナ、髪はもう良いからドレスを着ましょ…」
「ダメです。まだ殿下から頂いたものを着けていないんですから」
そういえばルナは私が婚約破棄されそうになってると思ってるのよね。
物凄い勘違いをされた覚えがあるわ。そろそろ否定しておくべきかなって思うけど長年仕えてきたお嬢様が婚約破棄を希望してるだなんて一番聞きたくないわよね…どうしよう。
ルナは喜々として私の髪にバレッタを飾り始め、こんなことを口にする。
「これを着けておけばお嬢様が殿下に愛されてるってことが他のご令嬢にも伝わりますからね」
「…見ただけじゃ誰があげたかなんて分からないじゃない?」
「いえ、このバレッタに触れればすぐに分かりますよ。水の魔力が微かに感じられますし、大量の魔力を何かにこれほど上手に込めることができるのは王族くらいですから」
「そうだったのね…」
アルターニャにあれほどの水をかけるのは結構高度な技術だったのね。流石だわ。
あーあ、アレクにこれに魔法を込めるやり方でも聞いておくんだったわ。これはちゃんとピンチの時に発動してくれる心強い味方なんだもの。
「でもお嬢様なら王族の方と同じように上手にできるかもしれませんね。お嬢様の魔力は他のご令嬢よりずっと高くて強いですから」
「それがどうしてか分かる?」
「え…お嬢様がそう生まれたからじゃないんですか?」
「そうね。私が悪役にそう生まれたからよ」
魔力が異常に高い理由は私が悪役だから。
主人公を妨害し、王子に婚約破棄されるただの不幸な役。物語を際立たせる為に必要で、最後には残酷に消されていく。
でも主人公二人の幸せを祈る悪役だって良いと思わない?
ちゃんと悪役らしく退場するわ。私は私の役を全うする。
だから神様、どうか私を殺さないで。
殺すならせめて…アレクが幸せになる姿をこの目で見てからにして。
そうすれば悪役令嬢なんかに転生させたことを許してあげるから。
何も知らない世界に放り出された私を何度も助けてくれたアレクを幸せにしたいの。彼には感謝してもしきれないわ。だから彼には最高の形で恩を返したい。
私の…誰よりも好きな人だから。
良いでしょ?
結果的には変わらないんだから。これは悪役が消え、主人公が幸せになるという…ちゃんとした正規ルートなのよ。
ねぇ、ちゃんと聞いてる?
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