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ティーパーティ編 その1
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私は素早くドレスに着替え、扉に手をかける。
するとまた出掛けてしまうのかと両親に引き留められるというデジャヴを繰り返し、なんとか屋敷から脱出しようと試みる。
令嬢に招待されたティーパーティに行くだけだと伝えるとあぁ、あの時リティ宛に届いた手紙がそうだったのか、とお父様が納得してくれた。
こっちの世界でどうかは知らないけどリティシアももう成人に近い年なのにいつまでたっても過保護なのね。
…親ってそういうものなのかしら。私はここまで大事にされた経験がないから分からないわ。
でもこんなに自分を心配してくれる両親がいるなんて悪役の癖にホント幸せ者だわ。
普通悪役とかって過去になにか辛いことがあって悪役になったりするんだけど…こんなに愛されて育ったのにどうして悪役になってしまったのかしらね。
まぁ恐らく原因は甘やかしすぎと本人の潜在的な性格でしょうね…。折角の両親の愛情を無駄にするなんて流石悪役令嬢としか言いようがないわ。
この二人は…小説で暴走したリティシアを止めなかったのかしら?
全てを奪った主人公を恨み、殺そうとしたあの時に…何もしなかったとは思えないのよね。
「リティ?」
「お母様、お父様。もし私が暴走するようなことがあれば、どんな手を使ってでも止めて下さい」
私の中にまだ悪役令嬢リティシアの魂の欠片が残っているかもしれない。
もしかしたら彼女が何らかの拍子に帰ってくるかもしれない。
そうなれば危険になるのは私の周囲の人間だ。彼女に声が届くとしたらアレクか…あるいは両親だろう。
私の言葉を聞いたお母様は何故か私をそっと抱きしめてくる。その突然の温もりに戸惑っているとお母様が微笑む。
「リティ、大丈夫よ。もしリティが間違った道に進もうとしても、私とアーゼルで正してあげる。だって私達は貴女の親なんだから。何を考えてそう言ったのかは分からないけど…そんな心配はしないでいいのよ。」
次いでお父様が私の頭を優しく撫でた。
「リリーの言う通りだ。リティ、結婚が嫌なら破棄したっていい。道を外れかけても私達が全力で正す。リティは自分が幸せになることだけを考えればいいんだよ」
ねぇリティシア…あんたこの二人に謝りなさいよ。こんなに愛してくれる両親の元で育ったのに悪役風情に成り下がるなんて…最低にもほどがあるわ。
お母様とお父様が私を本当の娘のように接する度に心が痛むが、同時に落ち着く自分もいる。思わずその言葉を受け入れてしまいそうになるが、どうにか振り払う。
…ごめんなさい。やっぱり私は私が幸せになることだけを考えるなんて…できないの。
複雑な感情を両親に気づかれぬよう、逃げるように私はその場を去るのであった。
馬車を降りると、私の屋敷には幾分か劣るものの、伯爵の名に恥じぬ立派な屋敷が私を出迎えてくれる。
隣に誰もいないという状況が案外久しぶりであることに気づき、同時に私は彼らの存在を頼りにしていたことにも気づく。
アーグレンもアレクもいないで…たった一人で参戦するなんて初めてだわ。
あの二人は悪役令嬢だってことを忘れるくらい例外的に私を助けてくれるけど…今回の味方は恐らくデイジー嬢だけだわ。
…デイジーさんっていう呼び方は令嬢として認めてないみたいだからこう呼ばないようにしないと。
これから起きるであろうことを考えると帰りたい気持ちがどんどん強くなっていき、もう引き返してしまおうかとすら考えてしまう。
しかし私の到着を待ち侘びていたらしい令嬢の姿が見え、そうもできなくなってしまった。
彼女は私の目の前で立ち止まると、ドレスの裾を軽く持ち上げ、お辞儀をする。
「お待ちしておりました、リティシア様!招待状を送らせて頂いたデイジー=シーランテと申します。もう一度お会いすることができて大変光栄でございます!」
そう言って顔を上げた彼女の瞳は正しく曇りなき眼そのもので、そのあまりの眩さに直視できない。
手紙を読んだ時も思っていたけど本当に心から私を好いてくれているのね…。
彼女はリティシアの噂…というか数々の悪行を知っているはずなのに。
「リティシア様、本日は私の主催するティーパーティにご参加頂き、ありがとうございます。リティシア様はここをご自分の家だと思ってどうぞ楽しんでいって下さいね!」
自分の家のようにって…よくリティシア相手に言えるわね。
リティシアにそんなこと言ったらすぐに屋敷が火事になるわよ。燃え盛る屋敷を見て怒る伯爵に対して、リティシアはきっとこう言うのよ。私の家だから好きにしていいでしょって。
…そりゃぁ…私はそんなことしないけどさ。
「…デイジー嬢、自分の家のように思えだなんて簡単に言うものではないわ。何をされるか分からないわよ」
リティシア以外にも性格の悪い令嬢はいくらでもいるだろうから、彼女が巻き込まれないようにしなければ。
私の言葉を受けたデイジー嬢は目を丸くして驚いた後、急に吹き出したかと思うと満面の笑みを見せる。
「リティシア様がそんなことする訳ありませんよ。見ず知らずの令嬢を助け、更に殿下にその後を追わせることのできるリティシア様が、そんなことするはずありません。」
私が彼女を見つめると彼女は再び嬉しそうな笑顔を見せる。
「ご存知でしたか?殿下を追いかける女性は今まで数え切れないほどいましたが、逆に殿下が女性の後を追いかけたことなんて…ただの一度もないんですよ。」
するとまた出掛けてしまうのかと両親に引き留められるというデジャヴを繰り返し、なんとか屋敷から脱出しようと試みる。
令嬢に招待されたティーパーティに行くだけだと伝えるとあぁ、あの時リティ宛に届いた手紙がそうだったのか、とお父様が納得してくれた。
こっちの世界でどうかは知らないけどリティシアももう成人に近い年なのにいつまでたっても過保護なのね。
…親ってそういうものなのかしら。私はここまで大事にされた経験がないから分からないわ。
でもこんなに自分を心配してくれる両親がいるなんて悪役の癖にホント幸せ者だわ。
普通悪役とかって過去になにか辛いことがあって悪役になったりするんだけど…こんなに愛されて育ったのにどうして悪役になってしまったのかしらね。
まぁ恐らく原因は甘やかしすぎと本人の潜在的な性格でしょうね…。折角の両親の愛情を無駄にするなんて流石悪役令嬢としか言いようがないわ。
この二人は…小説で暴走したリティシアを止めなかったのかしら?
全てを奪った主人公を恨み、殺そうとしたあの時に…何もしなかったとは思えないのよね。
「リティ?」
「お母様、お父様。もし私が暴走するようなことがあれば、どんな手を使ってでも止めて下さい」
私の中にまだ悪役令嬢リティシアの魂の欠片が残っているかもしれない。
もしかしたら彼女が何らかの拍子に帰ってくるかもしれない。
そうなれば危険になるのは私の周囲の人間だ。彼女に声が届くとしたらアレクか…あるいは両親だろう。
私の言葉を聞いたお母様は何故か私をそっと抱きしめてくる。その突然の温もりに戸惑っているとお母様が微笑む。
「リティ、大丈夫よ。もしリティが間違った道に進もうとしても、私とアーゼルで正してあげる。だって私達は貴女の親なんだから。何を考えてそう言ったのかは分からないけど…そんな心配はしないでいいのよ。」
次いでお父様が私の頭を優しく撫でた。
「リリーの言う通りだ。リティ、結婚が嫌なら破棄したっていい。道を外れかけても私達が全力で正す。リティは自分が幸せになることだけを考えればいいんだよ」
ねぇリティシア…あんたこの二人に謝りなさいよ。こんなに愛してくれる両親の元で育ったのに悪役風情に成り下がるなんて…最低にもほどがあるわ。
お母様とお父様が私を本当の娘のように接する度に心が痛むが、同時に落ち着く自分もいる。思わずその言葉を受け入れてしまいそうになるが、どうにか振り払う。
…ごめんなさい。やっぱり私は私が幸せになることだけを考えるなんて…できないの。
複雑な感情を両親に気づかれぬよう、逃げるように私はその場を去るのであった。
馬車を降りると、私の屋敷には幾分か劣るものの、伯爵の名に恥じぬ立派な屋敷が私を出迎えてくれる。
隣に誰もいないという状況が案外久しぶりであることに気づき、同時に私は彼らの存在を頼りにしていたことにも気づく。
アーグレンもアレクもいないで…たった一人で参戦するなんて初めてだわ。
あの二人は悪役令嬢だってことを忘れるくらい例外的に私を助けてくれるけど…今回の味方は恐らくデイジー嬢だけだわ。
…デイジーさんっていう呼び方は令嬢として認めてないみたいだからこう呼ばないようにしないと。
これから起きるであろうことを考えると帰りたい気持ちがどんどん強くなっていき、もう引き返してしまおうかとすら考えてしまう。
しかし私の到着を待ち侘びていたらしい令嬢の姿が見え、そうもできなくなってしまった。
彼女は私の目の前で立ち止まると、ドレスの裾を軽く持ち上げ、お辞儀をする。
「お待ちしておりました、リティシア様!招待状を送らせて頂いたデイジー=シーランテと申します。もう一度お会いすることができて大変光栄でございます!」
そう言って顔を上げた彼女の瞳は正しく曇りなき眼そのもので、そのあまりの眩さに直視できない。
手紙を読んだ時も思っていたけど本当に心から私を好いてくれているのね…。
彼女はリティシアの噂…というか数々の悪行を知っているはずなのに。
「リティシア様、本日は私の主催するティーパーティにご参加頂き、ありがとうございます。リティシア様はここをご自分の家だと思ってどうぞ楽しんでいって下さいね!」
自分の家のようにって…よくリティシア相手に言えるわね。
リティシアにそんなこと言ったらすぐに屋敷が火事になるわよ。燃え盛る屋敷を見て怒る伯爵に対して、リティシアはきっとこう言うのよ。私の家だから好きにしていいでしょって。
…そりゃぁ…私はそんなことしないけどさ。
「…デイジー嬢、自分の家のように思えだなんて簡単に言うものではないわ。何をされるか分からないわよ」
リティシア以外にも性格の悪い令嬢はいくらでもいるだろうから、彼女が巻き込まれないようにしなければ。
私の言葉を受けたデイジー嬢は目を丸くして驚いた後、急に吹き出したかと思うと満面の笑みを見せる。
「リティシア様がそんなことする訳ありませんよ。見ず知らずの令嬢を助け、更に殿下にその後を追わせることのできるリティシア様が、そんなことするはずありません。」
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