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竜の恩讐編
リズベルの想い その2
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ひとしきり泣いた木苺は、そっと媛寿の体から腕を離した。
「もういいの? 木苺ちゃん」
「……はい」
天照からの確認に、木苺は短く答えた。
そして静かに立ち上がり、結城たちに背を向けた。
「リズベルさ―――」
結城が呼び止めようとするも、天照がすっと片手を上げて制止させた。
「結城ちゃん、この娘があなたたちと一緒にいられないのは、結城ちゃんだって解ってることでしょ?」
「……」
天照のその言葉に、結城は何も言えない。媛寿もそれを理解し、無言で目を伏せていた。
「この娘は伊勢神宮で預かるから。太陽神の名にかけて悪いようにはしないわ。しばらく時間をおいたら会いに来てくれてもいい。けれど、今は離れた方がいいのよ。お互いのためにも、ね」
「…………分かり、ました……」
天照の説得に、結城は微かに震えながらも承諾した。
木苺が天照の元まで歩いていくのと入れ違いに、ベネチアン仮面を外した須佐之男が小走りでやって来た。
「媛寿ちゃん、大丈夫だって。あの娘っ子は姉貴に任せとけば。何だったらオレが仕事の合間に様子を見に行って、古屋敷に伝えに言ってもいいからさ―――」
「すさのおさま……」
媛寿を元気付けようとしていた須佐之男の手を、媛寿は目を伏せながらそっと掴んだ。
「? 媛寿ちゃん?」
「その……あ…………ありがと……」
消え入りそうな小声だったが、媛寿ははっきりとお礼を言った。
「え!? お、おう……どういたしまして?」
意外なほどに素直にお礼を言われてしまい、須佐之男も反応に困り、照れて人差し指で頬を掻いた。
「須佐之男、そろそろ帰るわよ」
「わ、分かったよ、姉貴。じゃあ媛寿ちゃん、そういうことで」
天照に呼ばれ、須佐之男も慌てて扉に向かう。
「それじゃ結城ちゃん、また遊びに行くからね」
店の扉が開かれ、二度目にカウ・ベルが鳴るまでの間を、結城と媛寿は少し寂しげに見つめていた。表情には出ていないが、わずかに憑きものが落ちたような目をした木苺の横顔を。
「もういいの? 木苺ちゃん」
「……はい」
天照からの確認に、木苺は短く答えた。
そして静かに立ち上がり、結城たちに背を向けた。
「リズベルさ―――」
結城が呼び止めようとするも、天照がすっと片手を上げて制止させた。
「結城ちゃん、この娘があなたたちと一緒にいられないのは、結城ちゃんだって解ってることでしょ?」
「……」
天照のその言葉に、結城は何も言えない。媛寿もそれを理解し、無言で目を伏せていた。
「この娘は伊勢神宮で預かるから。太陽神の名にかけて悪いようにはしないわ。しばらく時間をおいたら会いに来てくれてもいい。けれど、今は離れた方がいいのよ。お互いのためにも、ね」
「…………分かり、ました……」
天照の説得に、結城は微かに震えながらも承諾した。
木苺が天照の元まで歩いていくのと入れ違いに、ベネチアン仮面を外した須佐之男が小走りでやって来た。
「媛寿ちゃん、大丈夫だって。あの娘っ子は姉貴に任せとけば。何だったらオレが仕事の合間に様子を見に行って、古屋敷に伝えに言ってもいいからさ―――」
「すさのおさま……」
媛寿を元気付けようとしていた須佐之男の手を、媛寿は目を伏せながらそっと掴んだ。
「? 媛寿ちゃん?」
「その……あ…………ありがと……」
消え入りそうな小声だったが、媛寿ははっきりとお礼を言った。
「え!? お、おう……どういたしまして?」
意外なほどに素直にお礼を言われてしまい、須佐之男も反応に困り、照れて人差し指で頬を掻いた。
「須佐之男、そろそろ帰るわよ」
「わ、分かったよ、姉貴。じゃあ媛寿ちゃん、そういうことで」
天照に呼ばれ、須佐之男も慌てて扉に向かう。
「それじゃ結城ちゃん、また遊びに行くからね」
店の扉が開かれ、二度目にカウ・ベルが鳴るまでの間を、結城と媛寿は少し寂しげに見つめていた。表情には出ていないが、わずかに憑きものが落ちたような目をした木苺の横顔を。
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