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竜の恩讐編
エピローグ……(終)
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『体から温かさが消えていくテルマーを前に、竜は悲しみに暮れていた。
せっかく友達ができて独りではなくなったのに、その友達を自分のせいで失ってしまった。
竜がどうすることもできずに泣いていると、雷に乗った神様がやって来た。
神様は竜ならテルマーを助けることができると言った。しかし代わりに竜は命を失っててしまうとも。
竜は迷わなかった。
テルマーは竜にたくさんの思い出をくれた。
竜はその恩返しをしたかった。
竜は自分の思い出はテルマーの中で生き続けてくれると信じた。
竜はテルマーに自分の心臓を譲り、心臓を失った竜は崖の底へと落ちていった。
テルマーは目覚めると、山の頂上にいた。
竜の姿はどこにも見えない。
テルマーは竜を探す旅に出ることにした。
竜に会って、テルマーはまた一緒に冒険がしたいと思った。
長い旅になると思ったが、テルマーは寂しくなかった。
竜はとても遠くにいるようで、いつも一緒にいるような気がしていた。
これから世界のいろんな場所を見て回る。
もう一度竜に会った時、自分が見てきたものをたくさん話せること。そして今度は竜と一緒にそれを見て回ること。
そう思ってわくわくしながら、テルマーは旅の一歩を踏み出した。
おわり』
爽やかなそよ風の吹く草原。
そこにたった一本だけ立つ木の陰で、ピオニーアは『テルマーと十三番目の竜』の本をそっと閉じた。
背表紙を見つめる目は優しげだが、どこか悲しげでもある。
(私はどこかで、この竜に憧れていた。
子どもを産まされ、一族から疎まれ、いずれ自分一人の力であの娘と生きていこうと誓っても、この憧れだけが心に残り続けた。
いいえ、私の心を支え続けた。
結城さんや媛寿ちゃんと出会って、一緒に過ごす時間が増えて、私が心に被せていた仮面はなくなっていった。
二人と過ごした時間が、私にとっての『旅』だった。
短い間だったけれど、二人と出会えて本当に楽しかった。
リズベルにも媛寿ちゃんにも申し訳ないことをしてしまったけれど、あの二人なら大丈夫だと思う。
結城さんもいてくれる。きっと大丈夫。
私が選んできたことは、全てが正しかったとはいえない。間違えたこともたくさんあった。
リズベルにも、結城さんにも、媛寿ちゃんにも、たくさん迷惑と苦労をかけてしまった。
それが良いことであるとも、許されることであるとも言えないけれど……ただ……ただ……私の生涯は、これで良かったのだと思える。
だから……)
木の根元に本を置き、ピオニーアは背を向けた。
「……ありがとう」
そう言い残し、ピオニーアは草原を地平に向かって歩いていった。
ある早朝の伊勢神宮。
誰もいない外宮を、珍しい髪色をした巫女が竹箒を持って掃除していた。
もう冬になろうという季節であったが、巫女の背中を温かい風が撫でた。
「っ!」
ほんの一瞬ではあったが、巫女は懐かしい気配を感じ、もう日が昇ろうとしている空を見上げた。
せっかく友達ができて独りではなくなったのに、その友達を自分のせいで失ってしまった。
竜がどうすることもできずに泣いていると、雷に乗った神様がやって来た。
神様は竜ならテルマーを助けることができると言った。しかし代わりに竜は命を失っててしまうとも。
竜は迷わなかった。
テルマーは竜にたくさんの思い出をくれた。
竜はその恩返しをしたかった。
竜は自分の思い出はテルマーの中で生き続けてくれると信じた。
竜はテルマーに自分の心臓を譲り、心臓を失った竜は崖の底へと落ちていった。
テルマーは目覚めると、山の頂上にいた。
竜の姿はどこにも見えない。
テルマーは竜を探す旅に出ることにした。
竜に会って、テルマーはまた一緒に冒険がしたいと思った。
長い旅になると思ったが、テルマーは寂しくなかった。
竜はとても遠くにいるようで、いつも一緒にいるような気がしていた。
これから世界のいろんな場所を見て回る。
もう一度竜に会った時、自分が見てきたものをたくさん話せること。そして今度は竜と一緒にそれを見て回ること。
そう思ってわくわくしながら、テルマーは旅の一歩を踏み出した。
おわり』
爽やかなそよ風の吹く草原。
そこにたった一本だけ立つ木の陰で、ピオニーアは『テルマーと十三番目の竜』の本をそっと閉じた。
背表紙を見つめる目は優しげだが、どこか悲しげでもある。
(私はどこかで、この竜に憧れていた。
子どもを産まされ、一族から疎まれ、いずれ自分一人の力であの娘と生きていこうと誓っても、この憧れだけが心に残り続けた。
いいえ、私の心を支え続けた。
結城さんや媛寿ちゃんと出会って、一緒に過ごす時間が増えて、私が心に被せていた仮面はなくなっていった。
二人と過ごした時間が、私にとっての『旅』だった。
短い間だったけれど、二人と出会えて本当に楽しかった。
リズベルにも媛寿ちゃんにも申し訳ないことをしてしまったけれど、あの二人なら大丈夫だと思う。
結城さんもいてくれる。きっと大丈夫。
私が選んできたことは、全てが正しかったとはいえない。間違えたこともたくさんあった。
リズベルにも、結城さんにも、媛寿ちゃんにも、たくさん迷惑と苦労をかけてしまった。
それが良いことであるとも、許されることであるとも言えないけれど……ただ……ただ……私の生涯は、これで良かったのだと思える。
だから……)
木の根元に本を置き、ピオニーアは背を向けた。
「……ありがとう」
そう言い残し、ピオニーアは草原を地平に向かって歩いていった。
ある早朝の伊勢神宮。
誰もいない外宮を、珍しい髪色をした巫女が竹箒を持って掃除していた。
もう冬になろうという季節であったが、巫女の背中を温かい風が撫でた。
「っ!」
ほんの一瞬ではあったが、巫女は懐かしい気配を感じ、もう日が昇ろうとしている空を見上げた。
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