慈愛と復讐の間

レクフル

文字の大きさ
78 / 79

閑話 崩壊 1

しおりを挟む

 ボタメミア国、王都メイヴァインは今日も賑わっていた。

 この国を象徴するかのように、何処よりも大きく、何処よりも煌びやで、何処よりも活気に溢れていた。

 王都の北に位置する王城は、威厳に満ちているようにそこに君臨し、城下を見下ろすようにそびえ建っていた。

 王都の北側には高い山があり、それがこの王国の守り神のように不動の盾として聳えている。
 そこは鉱山となっており、日々希少な鉱物が得られる事から、大切な財源ともなっていた。

 以前は貧富の差が激しく、王都から離れた街や村では貧困に喘ぐ者も多く死亡率も高かったが、それは年々解消されていっている。

 この国は何処よりも住みやすい国と言われる程となり、それは慈愛の女神の加護を得られているからだと言い伝えられていた。

 しかし、いつからか魔物が出現するようになり、それは多く人々を襲い、国の政策で生活が楽になっていくのと同時に魔物被害は日を増して多くなっていた。

 そうした事もあって、国は軍事力を上げると共に、魔物を討伐できる者を育成し、活躍の場を設けていった。
 それが後に冒険者という枠組みに入り、冒険者ギルドへの発足へと繋がっていく。

 魔物に襲われ、村が壊滅する事も少なくなく、親がいなくなった孤児が増え、その事にも国は対応する事となる。
 
 そんな情勢の中、国王に待望の男の子が生まれた。

 王族にはない、黒髪で黒眼のその子は、歴代の賢王ルーファスを彷彿とさせた。
 その男の子はアマディスと名付けられ、大切に育てられた。
 
 アマディスには特殊な能力があった。それは普通は見えないであろう存在が見える能力だった。
 それ以外にも魔力が高く、身体能力と学習能力も共に高く、幼い頃より神童と言われ皆から期待された。
 多くの事を学ばせ体を鍛え、魔法の講義も早い段階から取り入れ学ばせていった。

 そうしてアマディスは博識で聡明で、強靭な体と高度な魔法と剣技を扱える青年へと成長していった。

 日々勉学に励み、剣術や魔術の訓練に精を出し、国勢について学ぶ為に仕事を手伝い、近隣の村や街へも情勢を知る為に積極的に訪れる。
 そんな多忙な毎日を過ごしていたアマディスが唯一安らげるのは、精霊ウルスラと共にいられる時間だった。

 幼い頃より霊や精霊が見えていたアマディスは、それを知った霊によく悪戯をされていた。
 突然目の前に現れて脅かしたり、何もない所で足を引っ掻けて躓くようにさせたり、馬車が走る前に突き飛ばしたりしてからかわれていた。

 それは幼いアマディスにとっては恐怖でしかなく、そんな目に合った時は一人部屋で身を守るように踞って泣いていた。

 そうしているとウルスラはアマディスの元に現れて、優しく微笑んで慰めるのだ。その笑顔はひだまりのように暖かく安心できて、寄って来ようとする霊達がウルスラを嫌そうにして遠ざかっていくのだ。
 アマディスにとってウルスラは自分を守ってくれる女神のように思えたのだった。

 ウルスラは多くを語らないが、アマディスが聞いた事に関しては答えてくれる。それよりも、誰にも言えない話や辛い事、悩み等を聞いてくれるウルスラの存在は無くてはならないものとなった。
 ウルスラはいつも何も言わずに優しく包み込むように微笑んで、それがアマディスには心地よく癒される時間となったのだ。

 ウルスラもアマディスと共にいられるのが楽しくて嬉しくて、その時間を大切に思った。
 アマディスはルーファスを思い出させる。笑い方、話し方、雰囲気がルーファスに似ていたのだ。

 その能力の高さ、人望の厚さ、謙虚さ、そして弱さがルーファスを彷彿とさせる。もしかしたらルーファスの生まれ変わりなのかも知れない。魂は似たものを感じたけれど、それがルーファスのものかどうか迄は分からなかった。女神であれば分かったのだが。

 アマディスとの時間はウルスラにとって幸せな時間となった。何処に行くにも傍を離れず、それがアマディスの力となったのだった。

 幾年かが過ぎ、アマディスは王位を継承し国王となった。

 アマディスの人柄、人望、才能、実力に、誰もがアマディスが王となるのに納得した。そしてアマディスは歴代の賢王ルーファスの再来とまで言われるようになっていった。

 同盟国から美しく聡明な姫を娶り、より国内は安定していった。子供にも恵まれ、女の子と男の子を授かった。
 
 幸せだった。

 アマディスの幸せを見守るウルスラもまた、幸せを感じていたのだ。

 この頃までは……
 
 アマディスは魔物被害で親を亡くした子供達の行く先にも積極的に関わっていて、その中で何人かの孤児を王城で働かせていた。

 主に下女や下男といった雑用となる仕事が多かったが、それでも平民の孤児からしたら厚待遇だった。
 その中でも優秀な者には身分関係なく適した仕事を割り振っていて、何人かは執事や従者としても働くようになっていた。

 今側仕えとしている者もそうで、アマディスがまだ若い頃に赴いた魔物に襲われた村の生き残った男の子だった。
 名前はロヴィーと言った。

 ロヴィーは賢く弁えており、状況を判断する能力に長けていた。それ故、アマディスは行商や他国の交渉にもロヴィーを連れていく程だった。
 ロヴィーの判断はいつも正しく、アマディスにより良い交渉結果をもたらした。
 そうして長年、ロヴィーはアマディスに仕え、その信用を強固なものにしていったのだ。

 しかし、それは突然裏切られる事となる……



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

私の風呂敷は青いあいつのよりもちょっとだけいい

しろこねこ
ファンタジー
前世を思い出した15歳のリリィが風呂敷を発見する。その風呂敷は前世の記憶にある青いロボットのもつホニャララ風呂敷のようで、それよりもちょっとだけ高性能なやつだった。風呂敷を手にしたリリィが自由を手にする。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

処理中です...