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閑話 崩壊 1
しおりを挟むボタメミア国、王都メイヴァインは今日も賑わっていた。
この国を象徴するかのように、何処よりも大きく、何処よりも煌びやで、何処よりも活気に溢れていた。
王都の北に位置する王城は、威厳に満ちているようにそこに君臨し、城下を見下ろすように聳え建っていた。
王都の北側には高い山があり、それがこの王国の守り神のように不動の盾として聳えている。
そこは鉱山となっており、日々希少な鉱物が得られる事から、大切な財源ともなっていた。
以前は貧富の差が激しく、王都から離れた街や村では貧困に喘ぐ者も多く死亡率も高かったが、それは年々解消されていっている。
この国は何処よりも住みやすい国と言われる程となり、それは慈愛の女神の加護を得られているからだと言い伝えられていた。
しかし、いつからか魔物が出現するようになり、それは多く人々を襲い、国の政策で生活が楽になっていくのと同時に魔物被害は日を増して多くなっていた。
そうした事もあって、国は軍事力を上げると共に、魔物を討伐できる者を育成し、活躍の場を設けていった。
それが後に冒険者という枠組みに入り、冒険者ギルドへの発足へと繋がっていく。
魔物に襲われ、村が壊滅する事も少なくなく、親がいなくなった孤児が増え、その事にも国は対応する事となる。
そんな情勢の中、国王に待望の男の子が生まれた。
王族にはない、黒髪で黒眼のその子は、歴代の賢王ルーファスを彷彿とさせた。
その男の子はアマディスと名付けられ、大切に育てられた。
アマディスには特殊な能力があった。それは普通は見えないであろう存在が見える能力だった。
それ以外にも魔力が高く、身体能力と学習能力も共に高く、幼い頃より神童と言われ皆から期待された。
多くの事を学ばせ体を鍛え、魔法の講義も早い段階から取り入れ学ばせていった。
そうしてアマディスは博識で聡明で、強靭な体と高度な魔法と剣技を扱える青年へと成長していった。
日々勉学に励み、剣術や魔術の訓練に精を出し、国勢について学ぶ為に仕事を手伝い、近隣の村や街へも情勢を知る為に積極的に訪れる。
そんな多忙な毎日を過ごしていたアマディスが唯一安らげるのは、精霊ウルスラと共にいられる時間だった。
幼い頃より霊や精霊が見えていたアマディスは、それを知った霊によく悪戯をされていた。 突然目の前に現れて脅かしたり、何もない所で足を引っ掻けて躓くようにさせたり、馬車が走る前に突き飛ばしたりしてからかっていた。
それは幼いアマディスにとっては恐怖でしかなく、そんな目に合った時は一人部屋で身を守るように踞って泣いていた。
そうしているとウルスラはアマディスの元に現れて、優しく微笑んで慰めるのだ。その笑顔はひだまりのように暖かく安心できて、寄って来ようとする霊達がウルスラを嫌そうにして遠ざかっていくのだ。
アマディスにとってウルスラは自分を守ってくれる女神のように思えたのだった。
ウルスラは多くを語らないが、アマディスが聞いた事に関しては答えてくれる。それよりも、誰にも言えない話や辛い事、悩み等を聞いてくれるウルスラの存在は無くてはならないものとなった。
ウルスラはいつも何も言わずに優しく包み込むように微笑んで、それがアマディスには心地よく癒される時間となったのだ。
ウルスラもアマディスと共にいられるのが楽しくて嬉しくて、その時間を大切に思った。
アマディスはルーファスを思い出させる。笑い方、話し方、雰囲気がルーファスに似ていたのだ。
その能力の高さ、人望の厚さ、謙虚さ、そして弱さがルーファスを彷彿とさせる。もしかしたらルーファスの生まれ変わりなのかも知れない。魂は似たものを感じたけれど、それがルーファスのものかどうか迄は分からなかった。女神であれば分かったのだが。
アマディスとの時間はウルスラにとって幸せな時間となった。何処に行くにも傍を離れず、それがアマディスの力となったのだった。
幾年かが過ぎ、アマディスは王位を継承し国王となった。
アマディスの人柄、人望、才能、実力に、誰もがアマディスが王となるのに納得した。そしてアマディスは歴代の賢王ルーファスの再来とまで言われるようになっていった。
同盟国から美しく聡明な姫を娶り、より国内は安定していった。子供にも恵まれ、女の子と男の子を授かった。
幸せだった。
アマディスの幸せを見守るウルスラもまた、幸せを感じていたのだ。
この頃までは……
アマディスは魔物被害で親を亡くした子供達の行く先にも積極的に関わっていて、その中で何人かの孤児を王城で働かせていた。
主に下女や下男といった雑用となる仕事が多かったが、それでも平民の孤児からしたら厚待遇だった。
その中でも優秀な者には身分関係なく適した仕事を割り振っていて、何人かは執事や従者としても働くようになっていた。
今側仕えとしている者もそうで、アマディスがまだ若い頃に赴いた魔物に襲われた村の生き残った男の子だった。
名前はロヴィーと言った。
ロヴィーは賢く弁えており、状況を判断する能力に長けていた。それ故、アマディスは行商や他国の交渉にもロヴィーを連れていく程だった。
ロヴィーの判断はいつも正しく、アマディスにより良い交渉結果をもたらした。
そうして長年、ロヴィーはアマディスに仕え、その信用を強固なものにしていったのだ。
しかし、それは突然裏切られる事となる……
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