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78話 来訪者
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「リュシアン様! お客様がいらっしゃいました! あ、申し訳ありませんっ!」
扉をノックした後、入室の許可を貰ったセヴランだったが、扉を開けると抱き合った二人がいたので思わず謝ってしまった。
そしてセヴランがいるのに、リュシアンはシオンを離さなかった。セヴランは目のやり場に困りつつ、思わず目線を下に向けてしまう。
「いや、問題ない。だが客人とは? 今日は誰も来る予定は無かった筈だが?」
「そうなんですが、その、なんと言いますか……」
セヴランが言いにくそうにしながらも、チラリとシオンを見る。それを見てリュシアンは察し、ハァと大きくため息を吐く。
「やはりな。まぁ、そうくるだろうと思った。後程対応するとして……ところで今、どこにいる?」
「はい、リュシアン様の仰ったとおり、門の外で待機して頂いております」
「それでいい」
「ですがとてもお怒りのご様子で……」
「放っておけ。向こうが非常識なんだ。簡単に対応されると思われても困るからな」
「畏まりました」
ペコリと頭を下げて、セヴランは出て行った。
今のやり取りが無かったかのように、リュシアンはまたシオンに顔を寄せて来ようとするが、それをシオンは止める。
「ま、待って! さっきお客様が来てるって言ってたでしょ?! 早く行かなきゃ!」
「それなら大丈夫だ。ノアが気にしなくてもいい」
「でも……」
「いや、違うな。言わなきゃいけない事と繋がるか」
「えっと、それはどういう事?」
「ノア、落ち着いて聞いて欲しい。僕はルストスレーム家を……フィグネリアを失脚させた」
「え……」
「だからもう君の脅威にはならない。安心して良いんだよ」
「ちょっと待って! 言ってる事がよく分からないよ!」
「そうだね。ちゃんと説明しなきゃね。まず、国王にこれまでの事を話して聞かせたんだ」
「これまでの事?」
「フィグネリアが聖女じゃないって事をだ」
「え?! でも、そんなの王さまが納得する訳ないでしょう?!」
「まぁね。その時代を生きていない筈の僕が知ってるのは可笑しいからな。だから証人を連れて行ったんだ」
「証人……」
「大司教ルーベンス。大神殿にいた司祭様だ」
「あ……」
「もちろん、あの当時を知っている人々にも話を聞いて、調書を作った。嘘の証言をした場合は口が聞けなくなるという制約を設けたんだ。うちの魔道士が役に立ってくれた」
「そんな事をして大丈夫なの?」
「嘘の証言をしなければいいだけの話だ。証人になってくれた人達も、皆ノアに感謝していたからな。喜んで証人になってくれたよ。嘘を言う必要もないしな」
「そうだろうけど、でも……」
「それからフィグネリアが公爵家に来た時、僕は王城へと呼び出されただろう? あの時、僕宛に国王から御状が届いたんだ。ご丁寧に封蝋に王家の紋章がちゃんと押してあってね。だから僕は騙された。しかし、王家と偽り紋章を偽造するなんて事は重罪なんだ。明らかにフィグネリアのした事だろうけど、その証拠を探すのに時間が掛かった」
「見つかったの?!」
「偽造を専門とする裏組織の人間を見つけてな。お陰でソイツと裏組織の奴ら全員を一掃する事も出来て一石二鳥だったな」
「へ、へぇー……」
「あ、ごめん、物騒な話だったね。それからルストスレーム家を徹底的に調べたんだ。君は覚えてないだろうけど、シオンは家族から冷遇されていてね。育児放棄されていたんだ。この国では、貴族の令息令嬢はきちんとした教育をしなければならないとされていて、それを疎かにしている時点で刑罰ものだ。この国の将来を担う人材を育成できない家門は、それだけで軽視される。言うなれば、自分の子供一人まともに育てられない奴に、重要な事を任せる事は出来ないって事だ」
「そうなんだ……」
「まぁ、だからクレメンティナ王女の事を言いに行った時、国王陛下は分が悪いとこちらの主張を全て受け入れたんだけどな」
「王女、さま?」
「いや、何でもない。とにかく、君が冷遇されていた事も明らかにされた。使用人にもキツく当たり散らしていたから、聞けばすぐに何でも教えてくれたよ。使用人達もフィグネリアに酷い目にあっていたそうで、だから仕返しとばかりに君に辛くあたったみたいだ」
「え? 私、そうだったの?」
「あ、いや、まぁ……嫌な事は思い出さなくても良いんだけど、そういう経緯があったのは事実で……それからフィグネリアの散財、ルストスレーム伯爵の投資失敗、鉱山崩落事故の人命救助放棄、領地の収益詐称、国家への税金の詐称並びに横領、まぁあげたらキリが無い程、不正のオンパレードだった。我がモリエール家からの鉱山崩落事故の援助金も、ほぼ使われずに借金の支払いに回されていたしな。よくもこれだけやっていて偉そうに金を要求できたものだ」
「そうだね。フィグネリアお嬢様は、とにかくお金を回せ、旦那にお金を払うように言え、みたいな事をずっと私に言って怒ってたもの。あ……」
「どうした? ノア?」
「あ、の……フィグネリアお嬢様が旦那って言ってたって事は、私とリアムって結婚してたの?」
「えっ! それは、うん、そう、なんだけど、な……」
「そうだったんだ……ごめん、覚えてなくて……でもそっか。私、リアムと結婚してたんだ。そっかぁ……」
「まぁ、うん、そうだ、ね」
「でも悔しいなぁ」
「悔しい? なにがだ?」
「だって結婚式のこと、何にも覚えてないんだもん。あのね、ずっと夢だったんだぁ。教会で結婚式挙げるの。私きっと、嬉しそうに笑ってたんだろうね」
「それは……」
「でも良いの。忘れちゃってても。きっとその時はシオン? は、幸せだったって思えるから」
「いや、それは、だな……」
「ごめん。話途中だったのに別の事言っちゃって。それで?」
「あ、ああ、そうだな、それでだな……」
結婚式の事を言った途端にリュシアンはバツが悪そうな、気まずそうな顔をする。もしかしたら結婚式で何か失敗とかしたのかな? とシオンは勘ぐったけれど、それを確認するのはやめておいた。きっとリュシアンが困るだろうから、何も言わずに微笑むだけにしておいた。
結婚式の事は覚えていたかったなと、ない記憶に思いを馳せるシオンであった。
扉をノックした後、入室の許可を貰ったセヴランだったが、扉を開けると抱き合った二人がいたので思わず謝ってしまった。
そしてセヴランがいるのに、リュシアンはシオンを離さなかった。セヴランは目のやり場に困りつつ、思わず目線を下に向けてしまう。
「いや、問題ない。だが客人とは? 今日は誰も来る予定は無かった筈だが?」
「そうなんですが、その、なんと言いますか……」
セヴランが言いにくそうにしながらも、チラリとシオンを見る。それを見てリュシアンは察し、ハァと大きくため息を吐く。
「やはりな。まぁ、そうくるだろうと思った。後程対応するとして……ところで今、どこにいる?」
「はい、リュシアン様の仰ったとおり、門の外で待機して頂いております」
「それでいい」
「ですがとてもお怒りのご様子で……」
「放っておけ。向こうが非常識なんだ。簡単に対応されると思われても困るからな」
「畏まりました」
ペコリと頭を下げて、セヴランは出て行った。
今のやり取りが無かったかのように、リュシアンはまたシオンに顔を寄せて来ようとするが、それをシオンは止める。
「ま、待って! さっきお客様が来てるって言ってたでしょ?! 早く行かなきゃ!」
「それなら大丈夫だ。ノアが気にしなくてもいい」
「でも……」
「いや、違うな。言わなきゃいけない事と繋がるか」
「えっと、それはどういう事?」
「ノア、落ち着いて聞いて欲しい。僕はルストスレーム家を……フィグネリアを失脚させた」
「え……」
「だからもう君の脅威にはならない。安心して良いんだよ」
「ちょっと待って! 言ってる事がよく分からないよ!」
「そうだね。ちゃんと説明しなきゃね。まず、国王にこれまでの事を話して聞かせたんだ」
「これまでの事?」
「フィグネリアが聖女じゃないって事をだ」
「え?! でも、そんなの王さまが納得する訳ないでしょう?!」
「まぁね。その時代を生きていない筈の僕が知ってるのは可笑しいからな。だから証人を連れて行ったんだ」
「証人……」
「大司教ルーベンス。大神殿にいた司祭様だ」
「あ……」
「もちろん、あの当時を知っている人々にも話を聞いて、調書を作った。嘘の証言をした場合は口が聞けなくなるという制約を設けたんだ。うちの魔道士が役に立ってくれた」
「そんな事をして大丈夫なの?」
「嘘の証言をしなければいいだけの話だ。証人になってくれた人達も、皆ノアに感謝していたからな。喜んで証人になってくれたよ。嘘を言う必要もないしな」
「そうだろうけど、でも……」
「それからフィグネリアが公爵家に来た時、僕は王城へと呼び出されただろう? あの時、僕宛に国王から御状が届いたんだ。ご丁寧に封蝋に王家の紋章がちゃんと押してあってね。だから僕は騙された。しかし、王家と偽り紋章を偽造するなんて事は重罪なんだ。明らかにフィグネリアのした事だろうけど、その証拠を探すのに時間が掛かった」
「見つかったの?!」
「偽造を専門とする裏組織の人間を見つけてな。お陰でソイツと裏組織の奴ら全員を一掃する事も出来て一石二鳥だったな」
「へ、へぇー……」
「あ、ごめん、物騒な話だったね。それからルストスレーム家を徹底的に調べたんだ。君は覚えてないだろうけど、シオンは家族から冷遇されていてね。育児放棄されていたんだ。この国では、貴族の令息令嬢はきちんとした教育をしなければならないとされていて、それを疎かにしている時点で刑罰ものだ。この国の将来を担う人材を育成できない家門は、それだけで軽視される。言うなれば、自分の子供一人まともに育てられない奴に、重要な事を任せる事は出来ないって事だ」
「そうなんだ……」
「まぁ、だからクレメンティナ王女の事を言いに行った時、国王陛下は分が悪いとこちらの主張を全て受け入れたんだけどな」
「王女、さま?」
「いや、何でもない。とにかく、君が冷遇されていた事も明らかにされた。使用人にもキツく当たり散らしていたから、聞けばすぐに何でも教えてくれたよ。使用人達もフィグネリアに酷い目にあっていたそうで、だから仕返しとばかりに君に辛くあたったみたいだ」
「え? 私、そうだったの?」
「あ、いや、まぁ……嫌な事は思い出さなくても良いんだけど、そういう経緯があったのは事実で……それからフィグネリアの散財、ルストスレーム伯爵の投資失敗、鉱山崩落事故の人命救助放棄、領地の収益詐称、国家への税金の詐称並びに横領、まぁあげたらキリが無い程、不正のオンパレードだった。我がモリエール家からの鉱山崩落事故の援助金も、ほぼ使われずに借金の支払いに回されていたしな。よくもこれだけやっていて偉そうに金を要求できたものだ」
「そうだね。フィグネリアお嬢様は、とにかくお金を回せ、旦那にお金を払うように言え、みたいな事をずっと私に言って怒ってたもの。あ……」
「どうした? ノア?」
「あ、の……フィグネリアお嬢様が旦那って言ってたって事は、私とリアムって結婚してたの?」
「えっ! それは、うん、そう、なんだけど、な……」
「そうだったんだ……ごめん、覚えてなくて……でもそっか。私、リアムと結婚してたんだ。そっかぁ……」
「まぁ、うん、そうだ、ね」
「でも悔しいなぁ」
「悔しい? なにがだ?」
「だって結婚式のこと、何にも覚えてないんだもん。あのね、ずっと夢だったんだぁ。教会で結婚式挙げるの。私きっと、嬉しそうに笑ってたんだろうね」
「それは……」
「でも良いの。忘れちゃってても。きっとその時はシオン? は、幸せだったって思えるから」
「いや、それは、だな……」
「ごめん。話途中だったのに別の事言っちゃって。それで?」
「あ、ああ、そうだな、それでだな……」
結婚式の事を言った途端にリュシアンはバツが悪そうな、気まずそうな顔をする。もしかしたら結婚式で何か失敗とかしたのかな? とシオンは勘ぐったけれど、それを確認するのはやめておいた。きっとリュシアンが困るだろうから、何も言わずに微笑むだけにしておいた。
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