第二王子の婚約者候補になりましたが、専属護衛騎士が好みのタイプで困ります!

春浦ディスコ

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第3話 二人の婚約者候補③

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「嫌とは?」

何を言っているのか理解できないとばかりにダンス講師がヴェロニカをいぶかしげに見つめる。

「私は、お父様とフリード殿下以外と踊る気はありません」
「これは練習ですよ」
「練習でも男性と手を繋ぐなどありえません」
「それでは上達は厳しいですよ」
「それ以外の努力は惜しみませんわ」

講師の目を逸らさずにヴェロニカが返答する。
平行線な会話をたどる二人にシャルロットが思わず声を掛けた。

「先生、よろしかったら私がリード役を請け負いましょうか?」

「ええ?あなたが?」

「はい、妹がヴェロニカ様と同じようなことを言うのでリード役も練習したことがありますわ」

「あなたが、リード役?冗談じゃないわ」

突っぱねるヴェロニカにシャルロットが言い返す。

「あらヴェロニカ様、一ヶ月後には社交パーティーがあると聞きましたわ。フリード殿下と踊る機会もあるかもしれませんし、出来ることはしておいたほうがいいと思うのです」

「……まあ、あなたがそこまで言うのなら」
「ええ、一緒にがんばりましょう」

シャルロットの言葉に少なからず納得したのかヴェロニカは渋々、シャルロットの手を取った、

ガーデンパーティーの一件もあり、少し気まずさがあるが、シャルロットは努力を惜しまないヴェロニカを応援したくなった。
ヴェロニカはただ譲れない考えがあるだけだろう。

「では手拍子に合わせて」

講師の声と手拍子に合わせてステップを踏む。
腕にも手のひらにも余計な力が入っていることが伝わってくる。
だがそれは真剣さから来るものに思えた。

「ヴェロニカ様、伸びやかな姿勢が素晴らしいですわ。あとはそのまま私に委ねるようにしてみて」

「ふんっ当然よ」

言葉とは裏腹にヴェロニカから無駄な力が抜けた。

「その調子で続けて」

講師が止めるまで、ヴェロニカは必死にシャルロットについて踊った。

ーーー

ダンスの練習から部屋に戻るなり、ベッドにダイブする。

行儀が悪いが誰も見ていないしいいだろう。
シャルロットは充足感に包まれていたが、足がひどく疲れていた。
ヴェロニカの熱意に呼応するようにシャルロットも踊り続けた。
シャルロットは張っているふくらはぎを揉んでみる。
実家であれば、侍女があれやこれやと世話をしてくれるのだが……。

この時間だとなぜか侍女がいない。
王城に来てから四日目に新しい侍女が来たかと思うと、次の日からはまたいつもの侍女に戻った。
しかし朝の仕度は手伝ってくれるが昼食の片付けが終わるとどこかに行ってしまい、なぜか夕方以降は現れない。

「なぜかしらねえ?嫌われてしまったのかしら」

思いあたる節があるとすればフリードの婚約者候補となったことだが、同じ条件のヴェロニカには常に侍女が付き添っている。
もしくはヴェロニカからの嫌がらせも考えたが、ヴェロニカが王城の侍女に口出しできるとは思えない。

うとうとと微睡んでいると、ノックの音が部屋に響いた。

「はあい」
「少し宜しいでしょうか」

アランの声がして前室と繋がる扉を開ける。

「夕食です」
「業務外でしょう?無理しなくてよいのよ?でもありがとう」

自室にワゴンが運ばれる。

「……侍女の件は伝えなくてよいのですか?」
「続くようだったら、申し上げるつもりよ。ただ忙しいだけの可能性もあるし、その場合侍女達が可哀想だわ」

「……分かりました。あなたがそう仰るなら」
「心配してくれてるのね。あなたに面倒をかけてることは申し訳ないと思っているの」
「いえ、これも職務の一環だと思っているので……ただ」

「ただ?」

「差し出がましいとは思うのですが、もう一人の婚約者候補様に、……少しお優しすぎるかと」
「ふふふ、そうね、あなたはあの現場を見てるものね」

ガーデンパーティーでビンタされた件だ。

「シャルロット様の優しさを利用して殿下の婚約者になりたいだけでは?」
「うーん、そうね、私は……こんなこと大きな声で言えないけれど、そうなってもいいと思っているの」

アランは信じられないとばかりに目を開いている。

「婚約者の座を譲るということですか」
「譲ると言うと私に決定権があるようで語弊があるけれど、特別なりたいわけじゃないもの」

シャルロットは言葉を続ける。

「それにね、ヴェロニカ様の様子を見ていると、本気で殿下を想っているのが伝わってくるでしょ?あの一件は驚いたけれど、今はもうなんとも思っていないわ」
「女性はみな、フリード殿下の花嫁になりたいのかと」
「ほとんどの女性はそうかもしれないわね」

「あなたは違うと?」
「内緒よ。こんなこと知られたら怒られてしまうわね」
「もちろん他言はしませんが……」
「婚約者になったらなったで頑張るわよ?今も手を抜いているつもりはないわ」

婚約者候補としての意気込みを述べると、アランはそうですか、とだけ言うとワゴンを置いて退出していった。

去り際の眉間の皺を思い浮かべる。

(何か私の回答が不服だったかしら?)


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