第二王子の婚約者候補になりましたが、専属護衛騎士が好みのタイプで困ります!

春浦ディスコ

文字の大きさ
4 / 31

第4話 第二王子とお茶会

しおりを挟む
王城に住み込み始めて八日。
フリード殿下とお茶会という名の面会が行われた。
庭園で香り高い紅茶が注がれる。

「懐かしいだろ?」
「昔はこちらでよく遊びましたね」

案内されたのは来賓用エントランスから近い庭園ではなく、あまり使われないが落ち着いて会話の出来る裏庭と呼ばれる場所で、二人にとって所縁のあるスポットだった。
小さい頃に大人の和に入れない時に王子達とシャルロットはよくここで過ごした。

「お忙しい中、時間を作っていただきありがとうございます」
「むしろ来てくれたのに何日も都合がつかなくて申し訳ないよ。昨日久しぶりに王城に戻ってきてね」

「そうだったのですね」
「ヴェロニカとも面会して、雑務を終わらせたらまた南方に向かうよ」

随分忙しそうだ。
確かにガーデンパーティもフリードは顔すら出さなかった。
フリードの主催という話だったはずだが。

「今は南方で水害が酷くてね、あちこち見て回ったり物資を届けたりしているよ」

シャルロットはフリードの知らない一面に驚いた。
第二王子であるフリード自らそれほど活発に支援に動いてるなど全く知らなかったからだ。
フリードが紅茶を一口飲むとシャルロットに謝罪を口にした。

「……すまないね、婚約者候補なんてなりたくなかっただろ?」

シャルロットは肯定も否定もせずに、微笑みながら紅茶を口に含む。
ここで否定しても、嘘だとすぐにバレてしまうからだ。
昔馴染みであるからこそ、不必要なお世辞はフリードに通用しない。

「母上と俺が南方に訪問に行ってる間にヤードルが勝手に決めてさ、本当に困ったやつだよ」
「王太子殿下はフリード殿下にそろそろ身を固めて欲しいのかもしれませんね」

「母上も私もそんなこと望んでいないのに」
「あら、そうなのですね」
「あと少しの辛抱だ。母上が戻られたらこんな茶番は終わるだろう」

フリードの口ぶりにシャルロットは思わず言い返す。

「茶番だなんて……。ヴェロニカ様も私も真剣に取り組んでいますわ」
「もちろんそれは感謝してるよ。ただ今のところ結婚する気はないんだ」
「そうなのですね……あの、お忙しい中恐縮なのですが、宜しければ今度の社交パーティーではヴェロニカ様と踊ってほしいのです」
「ああ、婚約者候補として来てもらっている以上、都合をつけてエスコートはさせてもらうよ」
「ええ!ぜひ!」

ヴェロニカの頑張りが報われるかもしれないと、シャルロットは目を輝かせた。

「シャルロットは?俺とは踊りたくない?」
「そう言うわけではありませんが、ヴェロニカ様がとてもお上手なので、ぜひ二人が踊るところを拝見したいのです」
「君もダンスが上手じゃないか。まあいいか。ところで、アランはどうだい?相変わらず仏頂面かい?」

フリード殿下が離れた所で待機しているアランを一瞥いちべつする。
釣られて、シャルロットもアランを視る。
じっと動かずに後ろで手を組んでいる。

「ふふふ、仏頂面なんて。よくしてくれていますわ」
「実は俺の近衛騎士を君に付けたんだよ」
「それは大切な騎士様をありがとうございます」
「ああ、預かっている君達には真に信頼のおける騎士を、と思ってね」

バチンとウインクをするフリードのなんと様になることか。
これで、たくさんの女性を虜にしているのだろう。
忙しさを思うと噂は本当ではないかもしれないけれど。

たわいもない話が続く。
昔馴染みのフリード殿下との会話に、シャルロットはほんの少し心が休まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました

春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。 名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。 誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。 ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、 あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。 「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」 「……もう限界だ」 私は知らなかった。 宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて―― ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。

能力持ちの若き夫人は、冷遇夫から去る

基本二度寝
恋愛
「婚姻は王命だ。私に愛されようなんて思うな」 若き宰相次官のボルスターは、薄い夜着を纏って寝台に腰掛けている今日妻になったばかりのクエッカに向かって言い放った。 実力でその立場までのし上がったボルスターには敵が多かった。 一目惚れをしたクエッカに想いを伝えたかったが、政敵から彼女がボルスターの弱点になる事を悟られるわけには行かない。 巻き込みたくない気持ちとそれでも一緒にいたいという欲望が鬩ぎ合っていた。 ボルスターは国王陛下に願い、その令嬢との婚姻を王命という形にしてもらうことで、彼女との婚姻はあくまで命令で、本意ではないという態度を取ることで、ボルスターはめでたく彼女を手中に収めた。 けれど。 「旦那様。お久しぶりです。離縁してください」 結婚から半年後に、ボルスターは離縁を突きつけられたのだった。 ※復縁、元サヤ無しです。 ※時系列と視点がコロコロゴロゴロ変わるのでタイトル入れました ※えろありです ※ボルスター主人公のつもりが、端役になってます(どうしてだ) ※タイトル変更→旧題:黒い結婚

勘違い妻は騎士隊長に愛される。

更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。 ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ―― あれ?何か怒ってる? 私が一体何をした…っ!?なお話。 有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。 ※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。

婚約破棄に応じる代わりにワンナイトした結果、婚約者の様子がおかしくなった

アマイ
恋愛
セシルには大嫌いな婚約者がいる。そして婚約者フレデリックもまたセシルを嫌い、社交界で浮名を流しては婚約破棄を迫っていた。 そんな歪な関係を続けること十年、セシルはとある事情からワンナイトを条件に婚約破棄に応じることにした。 しかし、ことに及んでからフレデリックの様子が何だかおかしい。あの……話が違うんですけど!?

お買い上げありがとうございます旦那様

キマイラ
恋愛
借金のかたに嫁いだ私。だというのに旦那様は「すまないアデライン、君を愛することはない。いや、正確には恐らく私は君を愛することができない。許してくれ」などと言ってきた。 乙女ゲームのヒロインの姉に転生した女の結婚のお話。 「王太子殿下に魅了をかけてしまいました。大至急助けてください」にチラッと出てきたアデラインが主人公です。単体で読めます。

愛しい人、あなたは王女様と幸せになってください

無憂
恋愛
クロエの婚約者は銀の髪の美貌の騎士リュシアン。彼はレティシア王女とは幼馴染で、今は護衛騎士だ。二人は愛し合い、クロエは二人を引き裂くお邪魔虫だと噂されている。王女のそばを離れないリュシアンとは、ここ数年、ろくな会話もない。愛されない日々に疲れたクロエは、婚約を破棄することを決意し、リュシアンに通告したのだが――

冷酷王子と逃げたいのに逃げられなかった婚約者

月下 雪華
恋愛
我が国の第2王子ヴァサン・ジェミレアスは「氷の冷酷王子」と呼ばれている。彼はその渾名の通り誰に対しても無反応で、冷たかった。それは、彼の婚約者であるカトリーヌ・ブローニュにでさえ同じであった。そんな彼の前に現れた常識のない女に心を乱したカトリーヌは婚約者の席から逃げる事を思いつく。だが、それを阻止したのはカトリーヌに何も思っていなさそうなヴァサンで…… 誰に対しても冷たい反応を取る王子とそんな彼がずっと好きになれない令嬢の話

貴方の✕✕、やめます

戒月冷音
恋愛
私は貴方の傍に居る為、沢山努力した。 貴方が家に帰ってこなくても、私は帰ってきた時の為、色々準備した。 ・・・・・・・・ しかし、ある事をきっかけに全てが必要なくなった。 それなら私は…

処理中です...