113 / 318
青の村への旅にて 青の老竜人の見えない底と深まる謎
しおりを挟む
「ちくしょう。あそこまで力を込めて頭つかまなくても良いだろーが……」
兄さんが仕留めたワニみたいな魔獣の焼けた肉を食べながらぼやく。血抜きや解体とかで、そこそこ時間が経ってるのにラカムタさんにつかまれた頭がまだ痛むみたい。僕は持参していた乾燥果物を食べるのをやめて兄さんに聞いた。
「兄さん、そんなに痛いなら同調で状態を確認しようか?」
「ヤート、ガルの自業自得なんだから気にしなくて良いわよ。それにガルは無駄に頑丈だしね」
「マイネ……」
「何?」
兄さんが食べるのをやめて姉さんを鋭い目で見て、姉さんも姉さんで兄さんを冷めた目で見ている。ほんの一瞬前まで和やかな食事時だったのに、今じゃ少しのきっかけで大乱闘になりそうな緊張感が満ちていく。いっしょに食事してるリンリーとイリュキンは急な展開に対応できないみたいだから僕が止めるしかないみたい。
「ホッホッホッ、元気なのはよろしいが、もっと落ち着くべきですな」
「オワッ!!」
「キャッ!!」
緊張感が高まり兄さんと姉さんが正に動き出そうとした時に、いつのまにか僕達のそばにいたタキタさんが兄さんと姉さんの肩に触れていた。……いつ僕達のそばに来たんだろ? いくら兄さんと姉さんの様子に集中してとはいえ、河沿いっていう開けた場所で近づいてくるのを見逃すなんてありえない。イリュキンも突然現れたタキタさんに一瞬身体をビクッとさせていた。
「……タキタ、何かあったのかい?」
「ガル殿とマイネ殿にご忠告をと思いましてな」
「じいさん、何の用だ」
「ガル、失礼よ」
「マイネ殿、構いませんよ。ただ、あちらの御仁をこれ以上刺激しないようにお願いしたい」
タキタさんが二人の肩に触れていた手を離して大人達が座っている方を指差す。タキタさんの指の方向を目で追ったら、噴火寸前の火山って感じのものすごく険しい顔で僕達を見ているラカムタさんがいた。兄さんは目が合ったらしくヒュッて小さく息を飲み、リンリーは恐る恐る兄さんと姉さんに声をかける。
「……ガル君、マイネさん、今は静かに食ベましょう」
「私もこれ以上ラカムタ殿を刺激したくはないな」
「「…………」」
兄さんと姉さんはお互いを少し見た後、同時にフッと息を吐いて静かに食事を再開した。タキタさんは大丈夫と判断したのか僕達を見回した後、軽く頭を下げてラカムタさんや他の水守達の方に戻っていく。僕はその後ろ姿を見ながらイリュキンに聞いた。
「イリュキン」
「何かな? ヤート君」
「タキタさんって、どんな人?」
「……タキタか。一言で言えばよくわからないかな」
「よくわからない? 水守のまとめ役でいつもいっしょにいるのに?」
「いつもというわけじゃないよ。実際、赤の村での交流会には来なかったしね。あとよくわからないっていう言い方がピンとこないなら、こう言い替えよう。タキタは何をどこまでできるかの底がわからない存在だね。それに……」
「それに?」
「タキタが何歳なのか私は知らない」
イリュキンの言った事が不思議で僕達は顔を見合わせた。
「俺達竜人族は子供の時は別として、大人になってからは歳なんて数えねえから当たり前だろ」
「それでもだいたい何歳かは知ってるものだよ。だけどタキタの場合、お祖母様や青の村長に他の水守達にもタキタの年齢を聞いた事があるけど誰も知らなかった」
「なんで、そんなにタキタさんの年齢が気になったんですか?」
「竜人族は魔力量が多いから老化しにくいという事があるにせよ、昔からタキタは見た目が変わらないからさ」
「じいさんばあさんの見た目なんて俺達が生まれてからの数年でそこまで変わるか?」
「うん、確かに私が生まれて十年程度で老齢の域に達してるものの見た目が急激に変わるとは思っていないさ。だけど、タキタの見た目がお祖母様や青の村長や他の水守達が子供の頃から変わっていないのは、さすがにおかしいだろう?」
「「「…………」」」
どうやら僕がタキタさんを観察する事にしたのは間違ってなかったみたいだ。同じ青から見てもよくわからないなら観察しかないよね。ただ問題なのは、どうやってタキタさんの素や実力の底を見るかだ。タキタさんに同調を使えばいろいろわかると思うけど、もしかするとタキタさんなら同調をごまかすくらいできるかもしれない。……虎穴に入らずんば虎子を得ずって前世で言われてたし僕の方から動いてみようかな。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
兄さんが仕留めたワニみたいな魔獣の焼けた肉を食べながらぼやく。血抜きや解体とかで、そこそこ時間が経ってるのにラカムタさんにつかまれた頭がまだ痛むみたい。僕は持参していた乾燥果物を食べるのをやめて兄さんに聞いた。
「兄さん、そんなに痛いなら同調で状態を確認しようか?」
「ヤート、ガルの自業自得なんだから気にしなくて良いわよ。それにガルは無駄に頑丈だしね」
「マイネ……」
「何?」
兄さんが食べるのをやめて姉さんを鋭い目で見て、姉さんも姉さんで兄さんを冷めた目で見ている。ほんの一瞬前まで和やかな食事時だったのに、今じゃ少しのきっかけで大乱闘になりそうな緊張感が満ちていく。いっしょに食事してるリンリーとイリュキンは急な展開に対応できないみたいだから僕が止めるしかないみたい。
「ホッホッホッ、元気なのはよろしいが、もっと落ち着くべきですな」
「オワッ!!」
「キャッ!!」
緊張感が高まり兄さんと姉さんが正に動き出そうとした時に、いつのまにか僕達のそばにいたタキタさんが兄さんと姉さんの肩に触れていた。……いつ僕達のそばに来たんだろ? いくら兄さんと姉さんの様子に集中してとはいえ、河沿いっていう開けた場所で近づいてくるのを見逃すなんてありえない。イリュキンも突然現れたタキタさんに一瞬身体をビクッとさせていた。
「……タキタ、何かあったのかい?」
「ガル殿とマイネ殿にご忠告をと思いましてな」
「じいさん、何の用だ」
「ガル、失礼よ」
「マイネ殿、構いませんよ。ただ、あちらの御仁をこれ以上刺激しないようにお願いしたい」
タキタさんが二人の肩に触れていた手を離して大人達が座っている方を指差す。タキタさんの指の方向を目で追ったら、噴火寸前の火山って感じのものすごく険しい顔で僕達を見ているラカムタさんがいた。兄さんは目が合ったらしくヒュッて小さく息を飲み、リンリーは恐る恐る兄さんと姉さんに声をかける。
「……ガル君、マイネさん、今は静かに食ベましょう」
「私もこれ以上ラカムタ殿を刺激したくはないな」
「「…………」」
兄さんと姉さんはお互いを少し見た後、同時にフッと息を吐いて静かに食事を再開した。タキタさんは大丈夫と判断したのか僕達を見回した後、軽く頭を下げてラカムタさんや他の水守達の方に戻っていく。僕はその後ろ姿を見ながらイリュキンに聞いた。
「イリュキン」
「何かな? ヤート君」
「タキタさんって、どんな人?」
「……タキタか。一言で言えばよくわからないかな」
「よくわからない? 水守のまとめ役でいつもいっしょにいるのに?」
「いつもというわけじゃないよ。実際、赤の村での交流会には来なかったしね。あとよくわからないっていう言い方がピンとこないなら、こう言い替えよう。タキタは何をどこまでできるかの底がわからない存在だね。それに……」
「それに?」
「タキタが何歳なのか私は知らない」
イリュキンの言った事が不思議で僕達は顔を見合わせた。
「俺達竜人族は子供の時は別として、大人になってからは歳なんて数えねえから当たり前だろ」
「それでもだいたい何歳かは知ってるものだよ。だけどタキタの場合、お祖母様や青の村長に他の水守達にもタキタの年齢を聞いた事があるけど誰も知らなかった」
「なんで、そんなにタキタさんの年齢が気になったんですか?」
「竜人族は魔力量が多いから老化しにくいという事があるにせよ、昔からタキタは見た目が変わらないからさ」
「じいさんばあさんの見た目なんて俺達が生まれてからの数年でそこまで変わるか?」
「うん、確かに私が生まれて十年程度で老齢の域に達してるものの見た目が急激に変わるとは思っていないさ。だけど、タキタの見た目がお祖母様や青の村長や他の水守達が子供の頃から変わっていないのは、さすがにおかしいだろう?」
「「「…………」」」
どうやら僕がタキタさんを観察する事にしたのは間違ってなかったみたいだ。同じ青から見てもよくわからないなら観察しかないよね。ただ問題なのは、どうやってタキタさんの素や実力の底を見るかだ。タキタさんに同調を使えばいろいろわかると思うけど、もしかするとタキタさんなら同調をごまかすくらいできるかもしれない。……虎穴に入らずんば虎子を得ずって前世で言われてたし僕の方から動いてみようかな。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
32
あなたにおすすめの小説
《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!
犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。
そして夢をみた。
日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。
その顔を見て目が覚めた。
なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。
数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。
幼少期、最初はツラい状況が続きます。
作者都合のゆるふわご都合設定です。
日曜日以外、1日1話更新目指してます。
エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。
お楽しみ頂けたら幸いです。
***************
2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます!
100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!!
2024年9月9日 お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます!
200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!!
2025年1月6日 お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております!
ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします!
2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております!
こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!!
2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?!
なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!!
こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。
どうしよう、欲が出て来た?
…ショートショートとか書いてみようかな?
2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?!
欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい…
2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?!
どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
転生したので好きに生きよう!
ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。
不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。
奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。
※見切り発車感が凄い。
※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト)
前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した
生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ
魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する
ということで努力していくことにしました
【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。
大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。
そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。
しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。
戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。
「面白いじゃん?」
アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
天才魔導医の弟子~転生ナースの戦場カルテ~
けろ
ファンタジー
【完結済み】
仕事に生きたベテランナース、異世界で10歳の少女に!?
過労で倒れた先に待っていたのは、魔法と剣、そして規格外の医療が交差する世界だった――。
救急救命の現場で十数年。ベテラン看護師の天木弓束(あまき ゆづか)は、人手不足と激務に心身をすり減らす毎日を送っていた。仕事に全てを捧げるあまり、プライベートは二の次。周囲からの期待もプレッシャーに感じながら、それでも人の命を救うことだけを使命としていた。
しかし、ある日、謎の少女を救えなかったショックで意識を失い、目覚めた場所は……中世ヨーロッパのような異世界の路地裏!? しかも、姿は10歳の少女に若返っていた。
記憶も曖昧なまま、絶望の淵に立たされた弓束。しかし、彼女が唯一失っていなかったもの――それは、現代日本で培った高度な医療知識と技術だった。
偶然出会った獣人冒険者の重度の骨折を、その知識で的確に応急処置したことで、弓束の運命は大きく動き出す。
彼女の異質な才能を見抜いたのは、誰もがその実力を認めながらも距離を置く、孤高の天才魔導医ギルベルトだった。
「お前、弟子になれ。俺の研究の、良い材料になりそうだ」
強引な天才に拾われた弓束は、魔法が存在するこの世界の「医療」が、自分の知るものとは全く違うことに驚愕する。
「菌?感染症?何の話だ?」
滅菌の概念すらない遅れた世界で、弓束の現代知識はまさにチート級!
しかし、そんな彼女の常識をさらに覆すのが、師ギルベルトの存在だった。彼が操る、生命の根幹『魔力回路』に干渉する神業のような治療魔法。その理論は、弓束が知る医学の歴史を遥かに超越していた。
規格外の弟子と、人外の師匠。
二人の出会いは、やがて異世界の医療を根底から覆し、多くの命を救う奇跡の始まりとなる。
これは、神のいない手術室で命と向き合い続けた一人の看護師が、新たな世界で自らの知識と魔法を武器に、再び「救う」ことの意味を見つけていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる