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第四章
第四十七話 前編
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マギクが「喰」を連発する。
ユメリアはそれを何かしらの魔法を使って回避しながら、横から迫るグレアの剣をいつの間にか手に持っていた盾で受け止め、そのまま弾く。
ラーラがその隙に死角から「星滅刀」で斬り付ける。
だがそこに敵の姿は無かった。
「あまりにも無謀」
突如背後からトロールの怪力を使って振り下ろされる剣。
グレアは身体を回転させて先程拾った剣でそれを受け止めると、「柳」を利用して敵の姿勢を崩す。
その瞬間、マギクが「光槍」を放つ。
しかし次の瞬間、ユメリアが本来居たはずの場所には金属の盾があり、光は反射してマギク本人に向かう。
魔力でマギクに勝るラーラが咄嗟に放つ「闇」魔法でそれを搔き消す。
ユメリアはその間に今度はラーラの真後ろに移動し、剣を突き立てる。
ラーラは一瞬「獣化」しながら後ろ回し蹴りを放つが、ユメリアはやはりそこには居なかった。
彼女は三人の間に佇んでいた。
「その程度の知性で復讐しようだなんて」
三人が一斉に放つ魔法は交差し、空を切る。
「復讐するときは」
ユメリアが上空から語りかける。
刹那、グレアは空に居た。
急速に重力加速する感覚。
「風射」で勢いを殺して着地に成功するが、敵が真横に突然現れ、防御の為に翳した剣を手から弾き飛ばされてしまう。
「もっと賢く」
無防備なグレアを鋭い突きが襲う。
「雲歩」で距離を取って回避するが、背中が熱くなり、腹から剣が生える。
グレアは突如背後に現れたユメリアに身体を貫かれ、地に臥した。
「もっと覚悟を持ってやるものだ」
「グレア様!」
ラーラが「影渡り」で接近し、「星滅刀」を放つ。
「復讐は子供の遊びじゃない」
真横から出現したユメリアに蹴り飛ばされ、血を吐きながら地面を転がる。
さらに一瞬で接近し、頭部へ一撃必殺の踏みつけを放つ。
辛うじて「影渡り」で回避するが、蹴りによるダメージは軽くない。
「お前たちのような『餓鬼ども』は大人しく暮らしていればいいのに」
その時、マギクが電撃で形成された神速の砲弾:「雷弾」を発射する。
ユメリアは余裕をもって回避する。
しかし直後、足元から強い魔力反応を感じ、半ば焦りながら遠くへと移動する。
「深淵刀」によって抉られた右膝下。
(反応がもう少し遅かったら右脚全体が消し飛んでいた…)
顔を上げたユメリアへマギクの「蟻の花火」が飛んでくる。
咲き乱れる「死の花」。それに連動させ、グレアが上部から超高温の青い炎「霊炎」を次々落とす。
たまらず大きく離れた位置に移動し難を逃れる。
(「伯爵殺し」の片割れ…あいつの背骨と内臓は刺し壊したはず)
ユメリアは再度魔法発動の準備をしながら敵を見据えた。
服に血が染み、穴も開いている。なのに傷は塞がっている。
(再生魔法か…)
ユメリアはそれとその使い手の希少性と有用性、言い換えれば「厄介さ」を知っていた。
「ラーラ様、マギク様!」
その時、遠くからグレアの声が響く。
「『影渡り』に似た仕組みの魔法です! 『理識』で魔力の流れを見たから間違いありません。『高速移動』ではなく、『瞬間移動』です!」
確信に迫ろうとする「伯爵殺し」。
(「楽しむ」時間はお終いだな)
ユメリアは思考を切り替えた。
「『影渡り』? 分析が甘いな。私はそんな面白みのない魔法は使わない」
そう言うと、彼女は地面から砂粒を取り、両手の中に隠した。
「頭の足りないお前たちにヒントをやろう」
そしてグレア、ラーラに投げ付ける。
その砂粒一つ一つが瞬く間に剣に変化する。
面食らいながらも、グレアは「理識」で、ラーラは「闇」魔法でその全てに対処する。
しかし敵は生じた隙を利用して真横からラーラに殴りかかる。
回避の体勢を取った時、その手の中に突如剣が出現する。
リーチの変幻に対応しきれず肩から胸にかけて大きく裂傷を負う。
しかしせめてもの報いとして、咄嗟に「獣化」した手で手打ちの打撃を見舞い、防がれつつも一瞬の隙を作り出す。
それを見逃さなかったマギクが敵の死角から「雷弾」を放つが、
「こんなことも出来る」
とユメリアが笑いながら魔力を込めると、一瞬にしてユメリアとグレアの位置が「逆転」する。
「は?」
無情にも一切速度を緩めることなく接近する「雷弾」。
ラーラが後ろから抱き締め、グレアごと地面に倒れることで辛うじて回避する。
だが次の瞬間、ラーラの身体に密着していたのは剣だった。
腹を突き刺され、地面に寝転がったまま動けなくなる。
気が付けば先程バラまかれた剣たちに混ざって地面に寝ていたグレアはとうとう敵の正体を理解した。
彼女の推察に違わずユメリアは「指定した物体間の座標を交換する魔法」、「転地」の使い手である。
魔法学校の四年間のほぼ全てをこの魔法の習得と鍛錬に費やした彼女のそれは人智を超えた精密性を持つ。
回避や攻撃の際に見せた「瞬間移動」は常人にはその存在を捉えることさえ難しい、「地面に落ちている砂岩との座標交換」によるもの。ひとたび攻撃に転じれば「人と剣が入れ替わる」、「バラまいた砂が刃に変化する」という変幻自在・千変万化の武器と化すのである。
加えて座標把握の為に常時周囲に魔力探知を張り巡らせている為、死角からの攻撃であっても(それが魔力を伴うものである限りは)手に取るように知覚することが出来る。
まさに攻防一体。
だが「魔王の卵」たちには希望の光が弱いながらも見えていた。
ユメリアはそれを何かしらの魔法を使って回避しながら、横から迫るグレアの剣をいつの間にか手に持っていた盾で受け止め、そのまま弾く。
ラーラがその隙に死角から「星滅刀」で斬り付ける。
だがそこに敵の姿は無かった。
「あまりにも無謀」
突如背後からトロールの怪力を使って振り下ろされる剣。
グレアは身体を回転させて先程拾った剣でそれを受け止めると、「柳」を利用して敵の姿勢を崩す。
その瞬間、マギクが「光槍」を放つ。
しかし次の瞬間、ユメリアが本来居たはずの場所には金属の盾があり、光は反射してマギク本人に向かう。
魔力でマギクに勝るラーラが咄嗟に放つ「闇」魔法でそれを搔き消す。
ユメリアはその間に今度はラーラの真後ろに移動し、剣を突き立てる。
ラーラは一瞬「獣化」しながら後ろ回し蹴りを放つが、ユメリアはやはりそこには居なかった。
彼女は三人の間に佇んでいた。
「その程度の知性で復讐しようだなんて」
三人が一斉に放つ魔法は交差し、空を切る。
「復讐するときは」
ユメリアが上空から語りかける。
刹那、グレアは空に居た。
急速に重力加速する感覚。
「風射」で勢いを殺して着地に成功するが、敵が真横に突然現れ、防御の為に翳した剣を手から弾き飛ばされてしまう。
「もっと賢く」
無防備なグレアを鋭い突きが襲う。
「雲歩」で距離を取って回避するが、背中が熱くなり、腹から剣が生える。
グレアは突如背後に現れたユメリアに身体を貫かれ、地に臥した。
「もっと覚悟を持ってやるものだ」
「グレア様!」
ラーラが「影渡り」で接近し、「星滅刀」を放つ。
「復讐は子供の遊びじゃない」
真横から出現したユメリアに蹴り飛ばされ、血を吐きながら地面を転がる。
さらに一瞬で接近し、頭部へ一撃必殺の踏みつけを放つ。
辛うじて「影渡り」で回避するが、蹴りによるダメージは軽くない。
「お前たちのような『餓鬼ども』は大人しく暮らしていればいいのに」
その時、マギクが電撃で形成された神速の砲弾:「雷弾」を発射する。
ユメリアは余裕をもって回避する。
しかし直後、足元から強い魔力反応を感じ、半ば焦りながら遠くへと移動する。
「深淵刀」によって抉られた右膝下。
(反応がもう少し遅かったら右脚全体が消し飛んでいた…)
顔を上げたユメリアへマギクの「蟻の花火」が飛んでくる。
咲き乱れる「死の花」。それに連動させ、グレアが上部から超高温の青い炎「霊炎」を次々落とす。
たまらず大きく離れた位置に移動し難を逃れる。
(「伯爵殺し」の片割れ…あいつの背骨と内臓は刺し壊したはず)
ユメリアは再度魔法発動の準備をしながら敵を見据えた。
服に血が染み、穴も開いている。なのに傷は塞がっている。
(再生魔法か…)
ユメリアはそれとその使い手の希少性と有用性、言い換えれば「厄介さ」を知っていた。
「ラーラ様、マギク様!」
その時、遠くからグレアの声が響く。
「『影渡り』に似た仕組みの魔法です! 『理識』で魔力の流れを見たから間違いありません。『高速移動』ではなく、『瞬間移動』です!」
確信に迫ろうとする「伯爵殺し」。
(「楽しむ」時間はお終いだな)
ユメリアは思考を切り替えた。
「『影渡り』? 分析が甘いな。私はそんな面白みのない魔法は使わない」
そう言うと、彼女は地面から砂粒を取り、両手の中に隠した。
「頭の足りないお前たちにヒントをやろう」
そしてグレア、ラーラに投げ付ける。
その砂粒一つ一つが瞬く間に剣に変化する。
面食らいながらも、グレアは「理識」で、ラーラは「闇」魔法でその全てに対処する。
しかし敵は生じた隙を利用して真横からラーラに殴りかかる。
回避の体勢を取った時、その手の中に突如剣が出現する。
リーチの変幻に対応しきれず肩から胸にかけて大きく裂傷を負う。
しかしせめてもの報いとして、咄嗟に「獣化」した手で手打ちの打撃を見舞い、防がれつつも一瞬の隙を作り出す。
それを見逃さなかったマギクが敵の死角から「雷弾」を放つが、
「こんなことも出来る」
とユメリアが笑いながら魔力を込めると、一瞬にしてユメリアとグレアの位置が「逆転」する。
「は?」
無情にも一切速度を緩めることなく接近する「雷弾」。
ラーラが後ろから抱き締め、グレアごと地面に倒れることで辛うじて回避する。
だが次の瞬間、ラーラの身体に密着していたのは剣だった。
腹を突き刺され、地面に寝転がったまま動けなくなる。
気が付けば先程バラまかれた剣たちに混ざって地面に寝ていたグレアはとうとう敵の正体を理解した。
彼女の推察に違わずユメリアは「指定した物体間の座標を交換する魔法」、「転地」の使い手である。
魔法学校の四年間のほぼ全てをこの魔法の習得と鍛錬に費やした彼女のそれは人智を超えた精密性を持つ。
回避や攻撃の際に見せた「瞬間移動」は常人にはその存在を捉えることさえ難しい、「地面に落ちている砂岩との座標交換」によるもの。ひとたび攻撃に転じれば「人と剣が入れ替わる」、「バラまいた砂が刃に変化する」という変幻自在・千変万化の武器と化すのである。
加えて座標把握の為に常時周囲に魔力探知を張り巡らせている為、死角からの攻撃であっても(それが魔力を伴うものである限りは)手に取るように知覚することが出来る。
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