魔王メーカー

壱元

文字の大きさ
122 / 206
第三章

第十七話

しおりを挟む
 デザ村に来て九日目(私が目覚めて七日目) 

相変わらずラーラは昏睡状態。

昨日村長が言ったとおり、キアに代わって他のトロールが彼女の面倒を見てくれていた。心配じゃなかった訳ではないが、彼女のキアと同等に繊細な手つきを見ていて安心した。

一方、私の身体は順調に回復している。

多少の倦怠感はあるが、今まで通り全力で走ることが出来るようになったし、よほどの高精度を求めなければ、魔力コントロールも問題ない。

 元気を取り戻した私は、料理店で猪の丸焼きを他の客と分け合って食べたり、道端で売られている水色の果実の生絞りジュースを買って飲んだり、野原で子供たちと遊んだりして、一日デサ村を満喫した。

出会う村人は全員トロールだったが、みんな程度の差はあれど「汎人語」が話せるし、とにかく気さくで親切だった。文化も一見無骨に見えるが、その実、こだわりが感じられ、洗練されているように思われた。

また、私達を村まで運んでくれた方とも出会い、お礼を言い会話を楽しんだ。

とにかく楽しかった。

だが、何をしていても、ふと脳裏に「ラーラにも飲ませてあげたかった」という思いが電流のようにちらついて、行く先々でちょっぴり切ない気分にもなった。


 デザ村に来て十一日目(私が目覚めて九日目) 

まだラーラは目覚めない。

今日は久しぶりにキアが看護担当だ。

彼女の手伝いをしながら、色々と雑談をしたり、簡単な「亜人語」を教えてもらったりした。

キアは代々続く医者の家系の出身で、姉がいるらしい。

姉は今までトロール医術に触れることのなかった一般の村民への知識伝授に専念していて、一昨日来てくれたのはその「弟子」の内の一人らしい。

「姉ちゃん、薬草とか調べてる。人に教えるか、研究するかだけでほとんど部屋から出てこない。もしあの人が出てきたら、きっと槍が降るわ。そうじゃなくても、何か変わったことが起こる」

「へえ、そんなに!?」

「うん。変な人」

二人で笑い合った後、長めの休憩時間を取った。

「そうだ!」

我ながら妙案を思い付いた。

「キアさん、医術を教えてくれませんか? 私達は冒険者なので、自然の中で傷を負ったり病気になってしまう可能性が高いです。そうした時に、その場で出来る対処法とか知りたくて」

「分かった。…もう身体、大丈夫ね? 明日村の外、行こう。実際に見た方が覚えやすいでしょ」

「お、いいですね」

「ただし」

彼女は厳格な口調で言った。

「それなら、自分の身は自分で守ってね。森の中、魔物沢山いるから。冒険者なら、できるよね」

「…」

不安はある。病み上がりに未知の場所をいきなり探索するのだ。

だが、むしろこれは絶好の機会だ。私はいずれ軍勢を相手にしなければならないのだから、早いうちに感覚を取り戻しておくに越したことはない。

「喜んで」

私は答えた。

予想外の返答だったようで、キアの顔には驚きが見えた。

聞くと、彼女は今まで村を訪れた、この辺りの自然環境を知る人間に「森に分け入る」と言っていい顔はされなかったという。

「商人なんてそんなものじゃないですか?」

この村は人間の行商人との交易が盛んであるという話を思い出しながら、私は言った。

「…いや、冒険者もそんな感じだった。確か…『銀』級、嫌がってた」

「…」

少々恐ろしくなってきたが、結局行くことにはした。

…かなり手荒なリハビリになりそ

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

『召喚ニートの異世界草原記』

KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。  ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。  剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。  ――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。  面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。  そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。  「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。  昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。  ……だから、今度は俺が――。  現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。  少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。  引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。 ※こんな物も召喚して欲しいなって 言うのがあればリクエストして下さい。 出せるか分かりませんがやってみます。

処理中です...