魔王メーカー

壱元

文字の大きさ
128 / 206
第三章

第二十二話 後編

しおりを挟む
 私は剣を構えなおしてキオーテと向き合った。

「…まさか、ここで貴方と会うなんて」

私が言うと、彼は

「それはこちらの台詞ですよ」と返した。

「…主人も他の同僚の方もみんな亡くなったのに、まだこの城にいらっしゃるなんて」

彼は勘違いをしている。

その「主人」も「同僚の方」も、殺したのは私達なのに。

まだ詳細な情報が出回っていないのだろうか。…いや、そんなのは不自然だ。

だって、「貴族に比べたら情報に疎い」はずの冒険者が集う酒場のコルクボードに賞金首としてデカデカと掲示されていた訳だし。

キオーテは敢えて知らない振りをしている。

その時、先程「沈黙シレンシ」を掛けてきた魔法使いが魔力を溜めながら叫ぶ。

「おい新米! 気を抜くな、そいつは『伯爵殺し』の犯人だぞ!」

「分かってます」

キオーテは穏やかながら、重く、その一言を放つと、深呼吸し、私に向かって笑顔を作った。

「グレアさん、貴女がそんなことをしたなんて、僕は思っていません。だって、語ってくれたじゃないですか、『不幸な運命に苦しむ人を救うのが夢』だって。それに、危険を顧みず僕たちをあの魔物の攻撃から守ってくれたじゃないですか。そんな心優しい方だから、僕は尊敬しているのです。…偶然出会ったのが貴女で良かった。こんな状況ですが、どうかその剣を下ろして、しばし一緒にお話しませんか?」

顔は笑っているが、僅かながら声が震えている。

戦場で敵と向かい合うのが怖いのか? 否、彼は自分の「停戦交渉」の成否次第で自軍の存亡が決まると思って、その重すぎる責任に震えているのかもしれない。

だが、どのみちその心配は不要だ。

「こんな状況でも、敵であり、貴方のお仲間の仇でもある私を尊敬してくださって、信じてくださっているのですね」

私はきっぱりと答えた。

「ですが、私にとって、私のしたことは『夢』への一歩で、それが揺らぐことはありませんので」

そう言うと、キオーテの顔から笑みが抜けた。だが、どこか安心した表情にも見える。

「そうですか」

彼は「乾坤流」のやり方で剣を構え、鋭く私を見据えた。

「なら、仕方がありません。剣で決着を付けましょう」

二人の剣士は同時に動き出した。

クオーテがどんどん加速し、その勢いを維持したまま斬りかかってくる。

間違いない、私が教えた「駿馬」だ。

私はそれを剣で受け止めるが、勢いに押されてバランスを崩しそうになり、一旦距離を取る。

敵は再び「駿馬」で急接近し、しかも今度は足を狙った低い斬撃:「脛打すねうち」を食らわしてくる。

これも辛うじて剣で防ぎ、空中で一回転してさらに後方に逃げる。

十分に距離があるので反射的に魔法を放ちそうになったが、まだあの魔法使いは「沈黙」を継続し、私の魔法を封じるのに徹している。

逆にいえば、少なくともあいつはクオーテとの戦いの最中には「沈黙」によるサポートに集中して、攻撃を仕掛けてくる可能性は低い。

クオーテと一対一。剣対剣。あの剣術試合のリベンジマッチが、図らずもここで始まったということか。

私は定期的に距離を取りながら、続く「駿馬」に乗せた敵の攻撃を全て防ぎきる。そして、相手が不慣れな「駿馬」の使いすぎで疲れたことで出来た隙を突いて「隼斬り」を放った。

敵は辛うじて防御が間に合うが、急な攻撃に対応することで手一杯で、防御に意識の全てを奪われた。

その一瞬の虚を突いて敵の背後を取った。

「乾坤流」、「魂取たまとり」。

クオーテが教えてくれた技だ。

「さようなら」

私は全力で剣を振るった。

血が私の服を赤く染め、頬にも跳ねてくっつく。

死体は力なく地面に倒れた。

これで分かった。

今まで、バセリアのような親しい人も含めたあらゆる人間を殺めるとき、哀しいことに、私は一時的ではあるが何も感じなくなるようだ。

まるで相手にしているのが「人」でなく「作業」であるかのように。

 私は唖然として立っている「沈黙」の魔法使いに「駿馬」で接近し、首を刎ねた。

ふと見ると、さらなる何人かの敵兵が私に気付き、こちらに向かってきている。

遠く、前線の方では両軍が互角の戦いを繰り広げている。

もう一仕事するか、と剣を構えた時、空を大きな何かが横切った。

それは赤っぽく、鷹か何かのようだった。だが、桁外れに大きい。

その正体を見極めようとした時、その口が開いて、何かが落とされ、それは前線の方で爆発した。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

『召喚ニートの異世界草原記』

KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。  ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。  剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。  ――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。  面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。  そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。  「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。  昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。  ……だから、今度は俺が――。  現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。  少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。  引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。 ※こんな物も召喚して欲しいなって 言うのがあればリクエストして下さい。 出せるか分かりませんがやってみます。

処理中です...