魔王メーカー

壱元

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第四章

第三十一話

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 「酒飲みの街ガンパルティア」というだけあって、飲み屋がどこまでも軒を連ねている。しかもそのほぼ全てが満席だ。

「すげえだろ。でもオレらがこれから行くのはもっと比べものにならねえくらいすげえところだ」

ウロがそう言い、ギザ歯を見せつけて笑う。

その言葉通り、川の中に建つ一際大きい四階建ての建物へと私達は入って行った。

「『酒飲みの街』最大で最高の飲み屋だ」

ウロが言う。

受付は仮にも酒場とは思えない程丁寧で、代表者たるマギクと問答した後、「金」級の証たるネックレスを確かめていた。

許可が出て案内される。

「ここは『銀』級以上のパーティしか入れないんだ。代表者が『銀』級以上なら全員がそうじゃなくても大丈夫だけどな」

道中、リレラが説明してくれた。

宴会場に到着すると、思わず声が漏れた。

「わあ」

一応個室ではあるのだろうが、下手したら一室で普通の酒場全体の広さがあり、ランタンの優しい光に照らされた黒を基調とする清潔感のある内装の中、色とりどりに光り輝くくらげが泳ぐ大水槽がある。

「綺麗…」

「だよね! ここに来るのは3回目だけど、いつも感動するよ」

マギクはそう言いながら水槽に一番近い席に座った。

「初めてだよね? せっかくだしこっちに来なよ」

「よろしいんですか?」

「もちろん」

マギクの言葉に甘え、真横にくらげを望む彼の向かいの席に座らせてもらった。

「来たのも初めてですけど、くらげを見たのも実は初めてなんですよ。くらげって海の生き物ですよね? 海に行ったことがなくて」

「そうだろうね、ケンダル王国は内陸国だし。依頼によっては海に行くこともあるから楽しみにしておいてね」

注文はどうする、とマギクは皆に声を掛けた。

「あたしはいつもどおり蜂蜜酒だな! 串焼きとラザニアも!」

「俺も前と同じの。あと全員で食えるやつもなきゃだろ」

「なら大魚の煮込みは必須っしょ。あとパンも。飲み屋の癖にここのパン、マジでイケるからな」

メンバーたちは元気よく口々に応え、マギクは嬉しげに頷きながら給仕人に一つずつ伝えていく。

「グレアも好きなの頼みなよ」

そんな中、私もリレラに背中を押され、いくつか注文させてもらった。

 しばらくして全員分の飲み物が届き、料理も出揃った。

「乾杯!!!」

笑顔で豪快にグラスを交わす。

ウロとジールバードが料理を取り分け、話を楽しみながらつまみ、味わう。

少し落ち着いてきたところでマギクが切り出した。

「グレアさん」

「なんでしょうか」

豆のスープを匙ですくい、口に運んでいた私は思わず手を止め、身構えた。

「君が寝ている間に僕たちは少し話し合ったんだ。今、『夜明けの旅団』には潤沢に資金がある。地龍とあの怪物を倒すことが出来たからね。やろうと思えば温泉街で一年くらいは活動を休止して遊び惚けていられるくらいだ。だから、もうこれ以上お金は要らない」

「…それはすごいですね。一年バカンスだなんて」

意図が見えず、ただ他愛のない相槌だけを打つ。

マギクは同じ調子で続ける。

「しかも、その討伐作戦で君は身の危険を顧みず幾度となく僕たちを救ってくれた。もし君が居なかったらこの場に居る少なくとも半数は既にこの世に去っていただろうし、全滅していてもおかしくない。つまるところ…」

「マギクまどろっこしいって!」

その時、ほろ酔いのリレラが横からマギクにぶつかった。

「もう、さっさと言っちゃいなって!」

「そうだ。またコイツをビビらせてんじゃねえかお前」

「確かにちぃとばかし遠回りだな」

続いてウロとジールバードも騒ぎ立て、マギクも「わかった! わかったから!」と楽しそうに応えた。

「こほん」

再度落ち着き、咳ばらいを一つしてからマギクは話す。

「君は『夜明けの旅団』に貢献した。それに僕たちはこれ以上の資金は求めてない。だから…」

私は固唾を飲んだ。

「君を依頼主に差し出すのではなく、仲間として迎えたい」

「それって…」

「うん。グレア、この瞬間から君は『夜明けの旅団』の一員だ。よろしく」

私は思わず手から匙を落とした。

「夜明けの旅団」の一員…!! みんなの一員…!!

私は立ち上がり、何度も飛び跳ねた。

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