135 / 554
第9章 【過去編】偏愛と崩壊のカタルシス
第123話 偏愛と崩壊のカタルシス⑥
しおりを挟む「ねぇ……これ、いる?」
道路沿いの歩道で、一人座り込んでいた俺に、その人は声をかけてきた。
泣きながら後ろを振り向けば、そこには女の人がたっていて、俺は、その人を呆然と見上げた。
胸元辺りまで伸びた髪は、ミルクティーみたいな、とても明るい色をしていた。紺色のジャケットに赤いチェックのスカートは、どこかの学校の制服なのだろう。
ブレザーを着たその姿は、一般的に女子高生といわれる年代の人だった。
だけど、そのお姉さんが差し出してきたものを目にして、俺は体を強ばらせた。
涙でいっぱいになった目で、改めて確認すると、その手には、さっき俺が放り投げたペットボトルが握られていた。
俺はその人が、あの時コンビニで声をかけてきたお姉さんだと気づいて、青ざめる。
警察に連れていかれるのかな?
それとも、お母さんを呼ばれるのかな?
いろんなことが頭を駆け巡って、涙が止まらずに溢れてくると、俺はしゃくりあげるような声をあげた。
「ひっ……ぅ、ごめ……な…さぃ…っ」
「そんなに怖がんないでよ。ほしかたんじゃないの? これ」
すると、お姉さんは、ちょっと困ったような顔をして、その場にしゃがみこんだ。
そっと俺の顔を覗きこんで、優しく微笑む姿を見て、また涙が溢れてきた。
「おれ……っ、けいさつ……に、つかまる、の?」
「え? 警察?」
俺がそういえば、お姉さんは、きょとんと目を丸くて、驚いていた。
「警察に捕まるような悪ガキなの、君」
「だって、おれ、それ持っていこうとして……だから……っ」
悪いことをしたら、お巡りさんに捕まるのだと、子供ながらに理解していた
ひくひくと震えながら泣く俺を見て、お姉さんは、手にしたペットボトルを見て「あー」と納得したような声を上げると、その後、また優しく笑った。
「あはは、なんだこれのこと~? 万引きするつもりだった? でも、取ってないし。それに、これは、私が買ってきたやつだから警察には捕まらないよ!」
「でも……っ」
「でも、じゃないの! 本当に大丈夫だから。はい、喉乾いてるんでしょ?」
そういうと、お姉さんは、ペットボトルの蓋を開け、またそれを俺の前に差し出してきた。
お姉さんは、その後も、ずっと笑っていて、怒られないことを確信して安心したのか、俺はその後おそるおそるペットボトルを受けとると、意を決して喉に流し込む。
「ねぇ、君いくつ?」
「4歳……」
「はぁ!? 4歳!?」
瞬間、年齢を聞いて声を張り上げたお姉さんに、俺は再びビクリと肩を弾ませた。
「あ、ごめん。4歳とか……幼稚園児がこんなところに一人でいるとかヤバイじゃん! お母さんか、お父さんは? はぐれちゃったの?」
「……」
小さな子供が一人で、こんな車通りが盛んな歩道にいたことに、お姉さんは真剣な顔をして、俺を見つめてきた。
「お母さん、一緒に探しにいこうか?」
「──や、やだ! いきたくないッ!」
思わず、顔をあげ、そういった。
「俺ッ……帰りたく……な……ッ」
とっさに放った言葉は、紛れもない本心だった。
もう、あんな家帰りたくない。
すると、お姉さんは、その後暫く黙り込んだ後──
「あ、膝とか手とか、擦りむいてるじゃん!」
そう言って、俺の右膝を指さした。
それは、窓から飛び降りた時にできた傷だった。みれば、血が滲んでいて、久しぶりに出来た傷は、ジクジクと鈍い痛みを発していた。
「立てる?」
「え?」
お姉さんは、そういって、俺に手を差し出してきた。
「こんなところにいたら危ないし、この先に公園があるから、あっちいこっか? その怪我、消毒してあげる」
「…………」
知らない人に、ついて行ってはいけない。
そう、厳しく躾られていたはずなのに、俺は不思議とその手をとると、公園まで着いていくことにした。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる