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第20話『罪を赦す強さ』③
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「アイヴィちゃん! そこは危ないです。すぐに何か掴まれる物に捕まってください!」
「ふふ。無駄だよ。あの子には傀儡魔法を刻み込んである。この意味が貴女には分かるでしょ?」
私は魔王の言葉にすぐアイヴィちゃんの耳を塞ぐが、アイヴィちゃんは何も変わらず緩やかに屋根の端に向かって歩き始めた。
「なんで!?」
「……なるほどね。先に与えておいた命令は取り消せないんだ。これは良い事を知ったよ」
「魔王! 貴女は!」
「あの子には、シーラが私に危害を加えようとする度に歩く様に命令してある。そして、自分に触れようとする相手には傀儡魔法を使う様にね。使えない時は、何としても逃げ出す様に命令してるんだ!」
「っ」
「さ。早く私に使ってる魔法を解いてよ。良いの? 私に攻撃し続けていると、あの子、死んじゃうよ?」
「……」
私は無言のまま魔法を解除した。
そして、土の魔法を解除すると、黙って立ち尽くしている私に近づいてきたが、オリヴァー君が剣を向けた事で怯えたように、一歩二歩と下がる。
「わ、私に手を出したら、あの子がどうなるか! 良いの!? シーラが悲しむよ? 泣いちゃうよ!?」
「シーラ様」
「申し訳ございません。手を出さないでください」
「ふ、ふふん。そう来なくっちゃ」
「しかし、ただで逃がすつもりはありませんよ!」
私は右手に魔力を集中し、魔王の体に触れて、傀儡魔法が使われるよりも前に爆発させた。
そして、塵になった魔王をそのままに、私は屋根から飛び降りようとしているアイヴィちゃんに向かって飛び込んだ。
飛行魔法をクッションにしながらアイヴィちゃんを受け止めて、抱きしめたまま魔力の痕跡を追い、背中を魔法で焼く。
いくら傀儡魔法が直接刻まれていようが、それを消してしまえばもう使う事は出来ないからだ。
しかし、アイヴィちゃんは最後の抵抗とばかりにナイフを手に持って、私に何度も何度も突き刺すのだった。
「シーラ様!!」
「手を、出さないで!! オリヴァー君が傀儡魔法に操られたら、私では止められません!!」
「っ!」
「大丈夫。必ず解放しますから」
「っ、あぁ、ああぁぁああああ!!」
「痛い、ですよね。でも、少しの、間。我慢してください」
アイヴィちゃんは私の腕の中で、叫びながら、何度も何度も私にナイフを突き立てた。
しかし、私はより強く私と同じくらい小さなアイヴィちゃんの体を抱きしめて、焼き続けた。
どれほどそうしていただろうか。
完全に傀儡魔法の痕跡は消え、アイヴィちゃんの腕が落ちるのを感じながら、私は火傷の痛みを少しでも和らげる為に、水の魔法で背中を冷やすのだった。
「……ごめんなさい。アイヴィちゃん。こんな乱暴な方法しか取れなくて」
「っ、っく」
「あの時、ただ、貴女を悪として断じるのではなく、もっとよく見るべきでした。貴女の背後にいた悪意を」
私は震えているアイヴィちゃんから離れながら笑った。
泣いている子供を安心させるように。
「大丈夫。もう怖い物は何も無いですよ。一人が寂しいなら、夜は手を繋いで一緒に寝ましょう。母の様に。姉の様に」
「……ゆるして、くれるの?」
「何もなく、許してあげる事は出来ません」
「っ」
「しかし、自らの行いを反省し、悪い事をしたのなら謝って、次からは気を付けるという事であれば、私からこれ以上言う事はありませんよ」
「しーら……」
「長い間。一人でよく頑張りましたね。アイヴィ」
私は泣き続けるアイヴィをいつまでも抱きしめるのだった。
「ふふ。無駄だよ。あの子には傀儡魔法を刻み込んである。この意味が貴女には分かるでしょ?」
私は魔王の言葉にすぐアイヴィちゃんの耳を塞ぐが、アイヴィちゃんは何も変わらず緩やかに屋根の端に向かって歩き始めた。
「なんで!?」
「……なるほどね。先に与えておいた命令は取り消せないんだ。これは良い事を知ったよ」
「魔王! 貴女は!」
「あの子には、シーラが私に危害を加えようとする度に歩く様に命令してある。そして、自分に触れようとする相手には傀儡魔法を使う様にね。使えない時は、何としても逃げ出す様に命令してるんだ!」
「っ」
「さ。早く私に使ってる魔法を解いてよ。良いの? 私に攻撃し続けていると、あの子、死んじゃうよ?」
「……」
私は無言のまま魔法を解除した。
そして、土の魔法を解除すると、黙って立ち尽くしている私に近づいてきたが、オリヴァー君が剣を向けた事で怯えたように、一歩二歩と下がる。
「わ、私に手を出したら、あの子がどうなるか! 良いの!? シーラが悲しむよ? 泣いちゃうよ!?」
「シーラ様」
「申し訳ございません。手を出さないでください」
「ふ、ふふん。そう来なくっちゃ」
「しかし、ただで逃がすつもりはありませんよ!」
私は右手に魔力を集中し、魔王の体に触れて、傀儡魔法が使われるよりも前に爆発させた。
そして、塵になった魔王をそのままに、私は屋根から飛び降りようとしているアイヴィちゃんに向かって飛び込んだ。
飛行魔法をクッションにしながらアイヴィちゃんを受け止めて、抱きしめたまま魔力の痕跡を追い、背中を魔法で焼く。
いくら傀儡魔法が直接刻まれていようが、それを消してしまえばもう使う事は出来ないからだ。
しかし、アイヴィちゃんは最後の抵抗とばかりにナイフを手に持って、私に何度も何度も突き刺すのだった。
「シーラ様!!」
「手を、出さないで!! オリヴァー君が傀儡魔法に操られたら、私では止められません!!」
「っ!」
「大丈夫。必ず解放しますから」
「っ、あぁ、ああぁぁああああ!!」
「痛い、ですよね。でも、少しの、間。我慢してください」
アイヴィちゃんは私の腕の中で、叫びながら、何度も何度も私にナイフを突き立てた。
しかし、私はより強く私と同じくらい小さなアイヴィちゃんの体を抱きしめて、焼き続けた。
どれほどそうしていただろうか。
完全に傀儡魔法の痕跡は消え、アイヴィちゃんの腕が落ちるのを感じながら、私は火傷の痛みを少しでも和らげる為に、水の魔法で背中を冷やすのだった。
「……ごめんなさい。アイヴィちゃん。こんな乱暴な方法しか取れなくて」
「っ、っく」
「あの時、ただ、貴女を悪として断じるのではなく、もっとよく見るべきでした。貴女の背後にいた悪意を」
私は震えているアイヴィちゃんから離れながら笑った。
泣いている子供を安心させるように。
「大丈夫。もう怖い物は何も無いですよ。一人が寂しいなら、夜は手を繋いで一緒に寝ましょう。母の様に。姉の様に」
「……ゆるして、くれるの?」
「何もなく、許してあげる事は出来ません」
「っ」
「しかし、自らの行いを反省し、悪い事をしたのなら謝って、次からは気を付けるという事であれば、私からこれ以上言う事はありませんよ」
「しーら……」
「長い間。一人でよく頑張りましたね。アイヴィ」
私は泣き続けるアイヴィをいつまでも抱きしめるのだった。
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