処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!

秦江湖

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契約婚約の提示

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ルシアンの嘲笑 

「復讐ごっこか? 侯爵令嬢が俺の力を借りて?」

 ルシアンの嘲笑が、静かな応接室に響いた。 

「アランに恥をかかされたか? 振られた腹いせか? その程度で、俺の貴重な時間を潰したというなら、リステン家ごと北の雪に埋めてやるぞ」 

父が息を呑み、護衛たちが一斉に臨戦態勢に入る。

 だが、私は動じなかった。

 「わたくしが本気かどうかは、この『対価』を見てからご判断いただいても、遅くはありません」 

私は、父が持参した鞄から、一通の分厚い封筒を取り出した。 

「対価?」 ルシアンの眉が動く。

 「わたくしは、公爵様のお力を『借りる』つもりなどございません。わたくしは、公爵様と『取引』をしに来たのです」


※※※※※※※※※※※※※※※


「未来の知識」の開示 私は、ルシアンの目の前のテーブルに、その封筒を滑らせた。

 ルシアンは、警戒しながらも封を開け、中の書類に目を通し始めた。

 「……これは」 ルシアンの声のトーンが変わった。 


そこに入っているのは、1周目の知識(記憶)に基づいた、アランの政策に関する詳細な分析データだった。

 「公爵様がご存知の通り、アラン殿下は『新税制(塩の専売)』を計画しておられます」 

「……ああ」

 「ですが、その計画には、アラン殿下ご自身も気づいておられない、致命的な弱点がございます。その第一項目に」 


ルシアンは、私が示した箇所に目を通す。

そこには、塩の密輸ルートとして使われる予定の、アラン派閥の貴族の領地の名前が記されていた。

 「……なぜ、お前がこれを」

 「アラン殿下は、その密輸ルートで私腹を肥やそうとしていますが、そのルートはヴァレリウス公爵領の管轄する河川と繋がっております。ご存知でしたか?」


※※※※※※※※※※※※※※※


アラン派閥の弱み 

ルシアンは、目を見開いたまま、次の書類をめくった。 

そこには、アラン派閥の主要貴族たちの、詳細なスキャンダルリストが記載されていた。


 「バートン伯爵の、違法奴隷貿易への関与」 「マルケス侯爵の、軍事物資横流しの証拠」 

「……」 

ルシアンは、もはや驚きを隠そうともしなかった。 

「この情報は……我が諜報網でも掴めていなかったものばかりだ。リステン家の情報網は、これほどまでに優秀だったか?」 

「わたくしは、リステン家の情報網の、さらに『先』を知っておりますので」 

私は、悪魔王のことは伏せ、曖昧に答える。 


「わたくしは、アラン殿下の側に、誰よりも長くおりました。彼の思考、彼が信頼する人間の弱さ、その全てを知っております」 


※※※※※※※※※※※※※※※


契約婚約の提案 

私は、立ち上がった。 

「公爵様。アラン殿下は、このままではいずれ帝国を破滅させます。それは、貴方様の望むところではないはず」 

「……」 

「わたくしの『知識』と、リステン家の『財力』を差し上げます。それらは、貴方様の『軍事力』と『正義』と合わせれば、アラン殿下を打倒するに足る力となりましょう」

 私は、ルシアン公爵の金色の瞳を真っ直ぐに見据えた。 


「貴方様には、帝国の覇権を」

 「……」 

「わたくしには、アラン殿下とイザベラへの、復讐の舞台を」 

私は、彼に手を差し伸べた。 

「そのための『契約婚約』を、わたくしと結んでいただけますでしょうか?」 


ルシアンは、私の差し出した手と、私の顔を、値踏みするように、しかし熱を帯びた視線で、見比べていた。




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