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帝都脱出計画
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アランの勅命
「……やはり、来たわね」
私は、北の黒鷲城で、帝都の密偵からの緊急報告書を読んでいた。
イザベラの流産。
そして、アランが、それを「エリアーナによる呪詛」と断定し、私とルシアンを「国賊」として捕縛する勅命を出した、という内容だった。
「……呪詛、か」
隣で、ルシアンが、冷たく呟いた。
「使えるものはなんでも使う。あの人らしいわ」
「だが、今回は、冗談では済まん」
ルシアンの表情は、厳しかった。
「『国賊』として、勅命が出た。これは、事実上の『宣戦布告』だ。アランは、帝国軍を動かす大義名分を手に入れた」
「……」
「今、この城は、安全だ。だが、帝都に残っている、お前の父(リステン侯爵)が、危ない」
「……!」
私は、息を呑んだ。
そうだ。アランは、北に手が出せないとわかれば、必ず、帝都にいる父を、人質に取る。
(父も、守らなければ)
※※※※※※※※※※※※※※※
二つの脱出計画
「アンナ。お父様に、緊急の連絡を」
「はい、エリアーナ様」
「『アランの勅命が届く前に、全ての資産を放棄し、帝都を脱出しろ』と」
「……どちらへ?」
「わたくしたちの『仲間』の元へ」
私は、地図を広げた。
「中立派の貴族たち……洪水の一件で、わたくしたちに恩義を感じている、南部の領主たちの元へ、身を隠すように、と」
「……かしこまりました。すぐに!」
アンナが、密書を手に、部屋を飛び出していく。
「……エリアーナ。お前の父は、それでいい。だが、俺たちは、どうする?」
ルシアンが、私に問いかけた。
「この城に、籠城(ろうじょう)するか?」
「……いいえ」
私は、首を横に振った。
「籠城は、ジリ貧になるだけだわ。アランは、帝国全土の富を使い、兵糧攻めにしてくる。北の民を、飢えさせるわけにはいかない」
「……では、打って出るか。帝都に、攻め込むか?」
「それも、まだ早いわ。アランには『大義名分』がある。今、こちらから手を出せば、わたくしたちが、本当に『反逆者』になってしまう」
「……」
「ルシアン。わたくしたちも、ここを離れるわ」
「……何? 城を、捨てるのか?」
ルシアンが、驚きの顔で私を見た。
※※※※※※※※※※※※※※※
帝都への「帰還」
「捨てるんじゃないわ。『囮(おとり)』になるのよ」
私は、ルシアンに、私の計画を打ち明けた。
「アランが欲しいのは、誰? あなたの首? 北の領地?」
「……いや。あいつが欲しいのは、お前だ」
「そう。そして、あなた(ルシアン)を失脚させることだ」
「……」
「だから、わたくしたちは、アランの『勅命』通り、帝都に『出頭』するのよ」
「……正気か、エリアーナ! 捕まりに行くようなものだぞ!」
ルシアンが、私の肩を掴んだ。
「もちろん、正面からではないわ」
私は、帝都の地図を指差した。
「アランは、帝都の北門で、わたくしたちを捕らえようと、大軍を配置するでしょう」
「……ああ」
「でも、もし、わたくしたちが、帝都の『南門』から、堂々と入城したら?」
「……!?」
「アランの軍は、北に集中している。南は、手薄よ」
「……だが、南から入って、どうする。皇宮に、乗り込むのか?」
「いいえ。乗り込むのは、皇宮ではなく……」
私は、帝都で、今、最も「安全」で、最もアランが「手出しできない」場所を、指差した。
「……『大聖堂』よ」
※※※※※※※※※※※※※※※
大聖堂への逃げ込み
「……大聖堂、だと?」
ルシアンは、私の意図が読めず、眉をひそめた。
「なぜ、あんな場所に」
「ルシアン。イザベラは、今や民衆から『聖女』と呼ばれているわ。そして、アランは、そのイザベラ(聖女)の『世継ぎ』を呪い殺した『魔女』を、討伐しようとしている」
「……」
「つまり、アランは、今、『宗教』の力を、最大限に利用しているの」
「……それが、どうした」
「帝国の『大聖堂』は、皇帝(アラン)の権力でも、手出しができない『聖域』よ。そして、帝国の宗教のトップである『大神官』は、アランのやり方を、快く思っていない、強硬な保守派だわ」
「……」
「わたくしたちは、アランに捕縛される『国賊』としてではなく、『アランの圧政から逃れてきた、敬虔(けいけん)な信者』として、大聖堂に『保護』を求めるのよ」
「……!」
ルシアンの金色の瞳が、見開かれた。
「アランは、大聖堂に保護されたわたくしたちを、無理やり引きずり出すことはできない。もし、そんなことをすれば、彼は、帝国全土の『信者』を、敵に回すことになる」
「……面白い」
ルシアンは、数秒間、黙って地図を睨みつけた後、ついに、声を出して笑った。
「……はは。はははは! まったく、お前は、最高だ、エリアーナ!」
彼は、心の底から楽しそうだった。
「アランの『大義名分(宗教)』を、逆手に取って、アランの足元の、一番安全な場所である聖域に、逃げ込む、か」
「ええ。そして、そこから、アランとイザベラの『化けの皮』を、一枚ずつ、剥がしていくのよ」
私は、ルシアンと二人、帝都の地図を見下ろし、不敵な笑みを交わした。
帝都脱出(という名の、帝都帰還)計画が、動
「……やはり、来たわね」
私は、北の黒鷲城で、帝都の密偵からの緊急報告書を読んでいた。
イザベラの流産。
そして、アランが、それを「エリアーナによる呪詛」と断定し、私とルシアンを「国賊」として捕縛する勅命を出した、という内容だった。
「……呪詛、か」
隣で、ルシアンが、冷たく呟いた。
「使えるものはなんでも使う。あの人らしいわ」
「だが、今回は、冗談では済まん」
ルシアンの表情は、厳しかった。
「『国賊』として、勅命が出た。これは、事実上の『宣戦布告』だ。アランは、帝国軍を動かす大義名分を手に入れた」
「……」
「今、この城は、安全だ。だが、帝都に残っている、お前の父(リステン侯爵)が、危ない」
「……!」
私は、息を呑んだ。
そうだ。アランは、北に手が出せないとわかれば、必ず、帝都にいる父を、人質に取る。
(父も、守らなければ)
※※※※※※※※※※※※※※※
二つの脱出計画
「アンナ。お父様に、緊急の連絡を」
「はい、エリアーナ様」
「『アランの勅命が届く前に、全ての資産を放棄し、帝都を脱出しろ』と」
「……どちらへ?」
「わたくしたちの『仲間』の元へ」
私は、地図を広げた。
「中立派の貴族たち……洪水の一件で、わたくしたちに恩義を感じている、南部の領主たちの元へ、身を隠すように、と」
「……かしこまりました。すぐに!」
アンナが、密書を手に、部屋を飛び出していく。
「……エリアーナ。お前の父は、それでいい。だが、俺たちは、どうする?」
ルシアンが、私に問いかけた。
「この城に、籠城(ろうじょう)するか?」
「……いいえ」
私は、首を横に振った。
「籠城は、ジリ貧になるだけだわ。アランは、帝国全土の富を使い、兵糧攻めにしてくる。北の民を、飢えさせるわけにはいかない」
「……では、打って出るか。帝都に、攻め込むか?」
「それも、まだ早いわ。アランには『大義名分』がある。今、こちらから手を出せば、わたくしたちが、本当に『反逆者』になってしまう」
「……」
「ルシアン。わたくしたちも、ここを離れるわ」
「……何? 城を、捨てるのか?」
ルシアンが、驚きの顔で私を見た。
※※※※※※※※※※※※※※※
帝都への「帰還」
「捨てるんじゃないわ。『囮(おとり)』になるのよ」
私は、ルシアンに、私の計画を打ち明けた。
「アランが欲しいのは、誰? あなたの首? 北の領地?」
「……いや。あいつが欲しいのは、お前だ」
「そう。そして、あなた(ルシアン)を失脚させることだ」
「……」
「だから、わたくしたちは、アランの『勅命』通り、帝都に『出頭』するのよ」
「……正気か、エリアーナ! 捕まりに行くようなものだぞ!」
ルシアンが、私の肩を掴んだ。
「もちろん、正面からではないわ」
私は、帝都の地図を指差した。
「アランは、帝都の北門で、わたくしたちを捕らえようと、大軍を配置するでしょう」
「……ああ」
「でも、もし、わたくしたちが、帝都の『南門』から、堂々と入城したら?」
「……!?」
「アランの軍は、北に集中している。南は、手薄よ」
「……だが、南から入って、どうする。皇宮に、乗り込むのか?」
「いいえ。乗り込むのは、皇宮ではなく……」
私は、帝都で、今、最も「安全」で、最もアランが「手出しできない」場所を、指差した。
「……『大聖堂』よ」
※※※※※※※※※※※※※※※
大聖堂への逃げ込み
「……大聖堂、だと?」
ルシアンは、私の意図が読めず、眉をひそめた。
「なぜ、あんな場所に」
「ルシアン。イザベラは、今や民衆から『聖女』と呼ばれているわ。そして、アランは、そのイザベラ(聖女)の『世継ぎ』を呪い殺した『魔女』を、討伐しようとしている」
「……」
「つまり、アランは、今、『宗教』の力を、最大限に利用しているの」
「……それが、どうした」
「帝国の『大聖堂』は、皇帝(アラン)の権力でも、手出しができない『聖域』よ。そして、帝国の宗教のトップである『大神官』は、アランのやり方を、快く思っていない、強硬な保守派だわ」
「……」
「わたくしたちは、アランに捕縛される『国賊』としてではなく、『アランの圧政から逃れてきた、敬虔(けいけん)な信者』として、大聖堂に『保護』を求めるのよ」
「……!」
ルシアンの金色の瞳が、見開かれた。
「アランは、大聖堂に保護されたわたくしたちを、無理やり引きずり出すことはできない。もし、そんなことをすれば、彼は、帝国全土の『信者』を、敵に回すことになる」
「……面白い」
ルシアンは、数秒間、黙って地図を睨みつけた後、ついに、声を出して笑った。
「……はは。はははは! まったく、お前は、最高だ、エリアーナ!」
彼は、心の底から楽しそうだった。
「アランの『大義名分(宗教)』を、逆手に取って、アランの足元の、一番安全な場所である聖域に、逃げ込む、か」
「ええ。そして、そこから、アランとイザベラの『化けの皮』を、一枚ずつ、剥がしていくのよ」
私は、ルシアンと二人、帝都の地図を見下ろし、不敵な笑みを交わした。
帝都脱出(という名の、帝都帰還)計画が、動
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