【完結】神官として勇者パーティーに勧誘されましたが、幼馴染が反対している

カシナシ

文字の大きさ
2 / 22
本編

2 どうして(2)

しおりを挟む
 僕たちはお互いに実家に住んでいるから、会えるのは外でだけ。そういう村人のカップルは多い。

 防護柵の中でもひっそりと目立たない所に納屋なやが建っていて、そこで人目を気にすることなくいちゃいちゃするのだが、僕たちはまだ子供と言うこともあって使わせてもらえなかった。そういう事は、15を過ぎないとだめらしい。

 14になったアノンは、その行為をやりたがった。僕はキスだけで十分ドキドキするし、それ以上のことは全くわからなかったのに、アノンに連れられて納屋へ行った。


『ほら、ここから少し見えるだろ?サラとオーキッドの……』

『え……あんまり見えないよ。でも、声が……』


 ただでさえ夜で、暗いのだ。納屋の中の灯りは小さなカンテラ一つだけで、木板の隙間からは、なにか折り重なっているようにしか見えない。
 でも、声は納屋の外まで響いていた。苦しそうなサラ姉さんの声。オーキッド兄さんのくぐもった声。それから、何かぶつかり合うような音。

『ねぇ、アノン。サラ姉さん、もしかして酷いことされてるのかも。助けた方がいいかもしれない……』

『ちがうちがう!そんな訳ねぇだろ!二人とも子作りしてんだよ。すげー気持ちいいって。な?興味わかねぇ?』

『え……ちょ、っと……怖い、かな……』


 僕がそういうと、アノンはつまらなさそうにぶすくれた。









 度々アノンは僕をその納屋に連れていく。早起きな僕は、夜だから眠たい。落ちそうになる瞼を擦りながら、それでも恋人のいう事だからと、従って。

『おっ、今日はレイとジェームズだ。やっとだぜ』

『え、何が?』

『男同士ってこと。ほら、見えるか?』

『うぅん……?』


 よく目を凝らす。この頃には僕は夜目が効くようになっていて、困ったことに、彼らが何をしているのかをばっちりと目撃してしまったのだ。


『えっ……』


 あげそうになった声を両手で押し留めた。
 レイ兄さんのお尻に、ジェム兄さんのおちんちんが、入っている……!?


『すげぇ……レイ、気持ちよさそう。な、フェリス?』

『ど、どうだろう……苦しそう、じゃない?』

『そりゃあ、あんまり声だしたら村中に聞こえるからだ。我慢してんだよ』

『本当……?』


 アノンがものすごく期待に満ちた瞳で僕を見た。
 けれど僕には、やっぱり苦しそうで、可哀想だとしか思えなかった。






 15になると、アノンは僕を納屋に引き摺り込み、行為を繰り返すようになった。

 納屋が空いている日は全部使おうとしているんじゃないかってくらいに。

 勉強の甲斐あって僕は生活魔法を少し使えるようになっていたから、お尻を浄化し、粘土の高い水を出して、アノンのおちんちんに塗った。それでも納屋の中は常に埃っぽく、いくら浄化をかけてもわらが身体にくっついて痛いから、嫌だった。

 アノンも僕も、大人の見様見真似で行為をしてみたが……やっぱり、苦しいし、痛いし、とても不愉快だった。
 それでもなぜかアノンの方は気持ちいいらしくて、僕は次第に、ついていけないという気持ちが大きくなっていった。








 15歳になると同時に僕たちは成人と見做みなされる。村人の殆どは親の手伝いから、本格的に家業を継ぐためにいそしむようになる。
 僕の家は農家だったが、神官様と文通を続けていて、そろそろ教会に来て修道するのはどうかと誘われていた。

 僕はもちろん行きたいし、村中が『ぜひ行って修行してきて、立派になって帰ってこい』と言う。だが、アノンは顰めっ面で反対していた。


『都会に出れば村に帰ってくる訳ねぇだろ。皆んな神官に騙されてる。フェリス、行くな。絶対に行くな』

『そんな……僕、神官になりたくて、勉強を頑張ったのに……もっともっと勉強したいよ…………』


 アノンに破かれた教本は、丁寧にページをつなぎ合わせてなんとか修復していた。神力の回復魔法が、物にまで効くとは思わなかったけれど、多分これは、僕の執念の成せる技なのだろう。

 修復した、以前より脆くてすぐに紙片のこぼれ落ちてしまう教本。もう暗記するほど読んだその本は、神官になるための基本的な事項や魔法しか載っていないようなのだ。もっと、もっと強くて美しい魔法が使えるようになりたい。

 それなのに。


『俺のことはどうでもいいんだな?そうだよな、ただの村長の息子ってだけだもんな……』


 アノンはまた、森へ入ってしまった。












 防護柵を出て森へ入れるのは、鍛錬を重ね、魔物や山賊への攻撃手段を持つ村守役むらもりやくだけだ。けれど僕は即時の回復手段を持つということで、特別に村守役について捜索に加わることになった。

 必死だった。アノンをまた、傷つけてしまった。そしてアノンを探すために、守役のみんなも危険に晒してしまっている。

 集中力が高まっていたのか、神への願いが通じたのか。

 村守役が腕を失っても、僕の回復魔法で生やし。村守役を守る為にかけた守護しゅご魔法は攻撃を受けるたびに強固となり。手探りで作った魔物避けの薬は、小鬼の群れを一気に気絶させた。

 そうしてようやく見つけたアノンは、木に登ってがくがくと震えていた。……良かった。生きていた。











『……僕が神官になれば、男の妊娠するための薬も作れるようになるんだよ。いいの?』

『いい。俺には、フェリスがいるだけで十分なんだから』

『……そっか……』


 16歳になっていた。

 近隣の教会に行く件は、保留させてもらい、神官様には新たな教本を寄付して頂いた。本当に素晴らしいお人である。僕は毎日、頂いた二冊の教本を隅から隅まで舐めるように読み込み、一つ一つの魔法を丁寧に発動して修練度を高め、仕舞う際は天井に最も近く、盗人の目にも付かない所へ慎重に隠して、神へ、それからあの神官様への祈りを捧げた。

 しかしそれも、アノンの気に触ったらしい。僕が勉強に集中すればするほど、頻繁に自殺未遂を起こす。泣いて抱きついて引き戻す。アノンの目を盗んで勉強し、なぜか必ずバレ、森へ……その繰り返し。

 そして冒頭へと戻るのだ。



しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後

結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。 ※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。 全5話完結。予約更新します。

姉の婚約者の心を読んだら俺への愛で溢れてました

天埜鳩愛
BL
魔法学校の卒業を控えたユーディアは、親友で姉の婚約者であるエドゥアルドとの関係がある日を境に疎遠になったことに悩んでいた。 そんな折、我儘な姉から、魔法を使ってそっけないエドゥアルドの心を読み、卒業の舞踏会に自分を誘うように仕向けろと命令される。 はじめは気が進まなかったユーディアだが、エドゥアルドの心を読めばなぜ距離をとられたのか理由がわかると思いなおして……。 優秀だけど不器用な、両片思いの二人と魔法が織りなすモダキュン物語。 「許されざる恋BLアンソロジー 」収録作品。

婚約破棄と国外追放をされた僕、護衛騎士を思い出しました

カシナシ
BL
「お前はなんてことをしてくれたんだ!もう我慢ならない!アリス・シュヴァルツ公爵令息!お前との婚約を破棄する!」 「は……?」 婚約者だった王太子に追い立てられるように捨てられたアリス。 急いで逃げようとした時に現れたのは、逞しい美丈夫だった。 見覚えはないのだが、どこか知っているような気がしてーー。 単品ざまぁは番外編で。 護衛騎士筋肉攻め × 魔道具好き美人受け

「出来損ない」オメガと幼馴染の王弟アルファの、発情初夜

鳥羽ミワ
BL
ウィリアムは王族の傍系に当たる貴族の長男で、オメガ。発情期が二十歳を過ぎても来ないことから、家族からは「欠陥品」の烙印を押されている。 そんなウィリアムは、政略結婚の駒として国内の有力貴族へ嫁ぐことが決まっていた。しかしその予定が一転し、幼馴染で王弟であるセドリックとの結婚が決まる。 あれよあれよと結婚式当日になり、戸惑いながらも結婚を誓うウィリアムに、セドリックは優しいキスをして……。 そして迎えた初夜。わけもわからず悲しくなって泣くウィリアムを、セドリックはたくましい力で抱きしめる。 「お前がずっと、好きだ」 甘い言葉に、これまで熱を知らなかったウィリアムの身体が潤み、火照りはじめる。 ※ムーンライトノベルズ、アルファポリス、pixivへ掲載しています

あなたがいい~妖精王子は意地悪な婚約者を捨てて強くなり、幼馴染の護衛騎士を選びます~

竜鳴躍
BL
―政略結婚の相手から虐げられ続けた主人公は、ずっと見守ってくれていた騎士と…― アミュレット=バイス=クローバーは大国の間に挟まれた小国の第二王子。 オオバコ王国とスズナ王国との勢力の調整弁になっているため、オオバコ王国の王太子への嫁入りが幼い頃に決められ、護衛のシュナイダーとともにオオバコ王国の王城で暮らしていた。 クローバー王国の王族は、男子でも出産する能力があるためだ。 しかし、婚約相手は小国と侮り、幼く丸々としていたアミュレットの容姿を蔑み、アミュレットは虐げられ。 ついには、シュナイダーと逃亡する。 実は、アミュレットには不思議な力があり、シュナイダーの正体は…。 <年齢設定>※当初、一部間違っていたので修正済み(2023.8.14) アミュレット 8歳→16歳→18歳予定 シュナイダー/ハピネス/ルシェル 18歳→26歳→28歳予定 アクセル   10歳→18歳→20歳予定 ブレーキ   6歳→14歳→16歳予定

悪役令嬢のモブ兄に転生したら、攻略対象から溺愛されてしまいました

藍沢真啓/庚あき
BL
俺──ルシアン・イベリスは学園の卒業パーティで起こった、妹ルシアが我が国の王子で婚約者で友人でもあるジュリアンから断罪される光景を見て思い出す。 (あ、これ乙女ゲームの悪役令嬢断罪シーンだ)と。 ちなみに、普通だったら攻略対象の立ち位置にあるべき筈なのに、予算の関係かモブ兄の俺。 しかし、うちの可愛い妹は、ゲームとは別の展開をして、会場から立ち去るのを追いかけようとしたら、攻略対象の一人で親友のリュカ・チューベローズに引き止められ、そして……。 気づけば、親友にでろっでろに溺愛されてしまったモブ兄の運命は── 異世界転生ラブラブコメディです。 ご都合主義な展開が多いので、苦手な方はお気を付けください。

転生したら同性の婚約者に毛嫌いされていた俺の話

鳴海
BL
前世を思い出した俺には、驚くことに同性の婚約者がいた。 この世界では同性同士での恋愛や結婚は普通に認められていて、なんと出産だってできるという。 俺は婚約者に毛嫌いされているけれど、それは前世を思い出す前の俺の性格が最悪だったからだ。 我儘で傲慢な俺は、学園でも嫌われ者。 そんな主人公が前世を思い出したことで自分の行動を反省し、行動を改め、友達を作り、婚約者とも仲直りして愛されて幸せになるまでの話。

悪役令息に転生したので婚約破棄を受け入れます

藍沢真啓/庚あき
BL
BLゲームの世界に転生してしまったキルシェ・セントリア公爵子息は、物語のクライマックスといえる断罪劇で逆転を狙うことにした。 それは長い時間をかけて、隠し攻略対象者や、婚約者だった第二王子ダグラスの兄であるアレクサンドリアを仲間にひきれることにした。 それでバッドエンドは逃れたはずだった。だが、キルシェに訪れたのは物語になかった展開で…… 4/2の春庭にて頒布する「悪役令息溺愛アンソロジー」の告知のために書き下ろした悪役令息ものです。

処理中です...