【完結】神官として勇者パーティーに勧誘されましたが、幼馴染が反対している

カシナシ

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本編

10 アノン

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 この村は、男も女も芋みたいだ。日焼けした肌、焦茶色の髪、焦茶色の瞳。たまに緑や青がひとさし入っているくらいで、特に変わり映えしない。

 そんな村の中で、ただ一人、フェリスだけが異色だった。

 親は二人とも芋なのに、何が起こったのか誰も分からない。芋から白鳥が産まれたのか?と思うほどに真っ白な肌。金糸に近い髪に、少し垂れた萌葱色の大きな瞳。身体さえ丈夫であれば、女どもは我先にと襲いかかっただろう。そのくらい特別な容姿をしていた。

 しかしフェリスの親は、この村の中で最もオシドリ夫婦と呼ばれる仲の良い愛情深い夫婦で、だからこそ神は神子を授けたのだろうと、村人達はこそこそと囃し立てていた。


 そんな可愛い幼馴染を、誰に渡す?村長の息子の、俺が?


 同い年の子供は、全員フェリスに近づかないよう言い含めた。
 フェリスは体が弱くてあまり家から出られないのも、俺に都合が良かった。

 毎日まめに花を摘み、挨拶をする。村で口説く方法は、これしかない。しかし、狭い部屋だけが世界だったフェリスには、抜群に効いた。すなわち、恋人となった。


 鼻が高かった。俺の恋人は、こんなに可愛いんだと。こんな可愛い子が、俺にぞっこんなんだぞ、と。



 フェリスは神官に憧れるようになった。
 最初はなれるわけないのに、と微笑ましくみていた。神官なんて、神力があるだけではなれない。

 薬草の知識もいるし、修行をしなくちゃいけないし、なにより、こんな村ではそのための知識なんか手に入る訳がない。
 現に、今いる神力の持ち主は、かすり傷を少し治すくらい。血が滴るような深い傷となれば、消毒してひたすら寝るくらいしか対処法はない。


 というのに、フェリスはどんどんと腕を上げていった。村人から感謝されるようなった。
 ……なんだ?面白くない。

 フェリスの勉強に使っていた本を探してみると、うちの家にあるものと違う。これか!こんな高そうな本があるなんて!

 内容は、あまり勉強しない俺には分からないもの。分かるのはきっと村中探してもフェリスだけ。俺はそれをズタズタに割いてやった。こうすればもう、フェリスは学べない。……神官には、なれない。

 それでいい。フェリスは俺の横で儚げに笑っていればいいんだ。そう思って満足した。

 そうすると、フェリスはかつてないほどに泣いた。泣きすぎて息も止まってしまうんじゃないかと思うくらい、泣いた。
 俺は、なんてことをしてしまったのだろう。『二度としない』なんて、意味のない言葉だとわかっていた。だって、もう、教本は無いのだから。

 死のうと思った。俺なんかフェリスに嫌われたら生きていけない。
 そう思って森へと足を踏み入れた。ちょっと怖かったから、父の部屋にあった『魔物避け』を持って。




 すると、フェリスはまた泣いていた。俺が死んでしまうのかと思って怖かったと。
 その時、俺の胸は妙に……すっ、とした。
 なんだろうか。この、気持ちは。




 フェリスは性に疎い。たぶん、フェリスを狙う村の男どもには、俺が牽制しすぎたから。女の方がまだわかっているだろう。あいつらは結構えげつない話をしてケラケラ笑っているのを、知っている。

 徐々に教えていくのは、楽しかった。何にも知らないフェリスが、可愛い。怖がって震えるのを、いつまでも見ていたい。

 それも15歳、解禁の年となれば、抱くのは必然だった。どういうわけだかフェリスの中はいつもキツくて、とんでもなく気持ちいいのに、本人はあまり気が進まないようで、少し苛立って乱暴にしてしまう。俺が良いのだから、お前も良いに決まってるのに!

 神官の修行も資格も必要ない。今だって十分役に立っているじゃないか。
 このまま、フェリスは俺の隣にいればいいと、思っていたーーーーあの、勇者パーティーが来るまで。





 レオンとかいう胡散臭い男を、フェリスがぼうっとして見ていた。
 瞬時に怒りが湧き上がる。何を見ているんだ!?お前は、俺のものなのに!

 その日の夜は、一段と手荒く抱いた。泣いていても、悪いのはフェリスだ。俺のことを好きだといいながら、ぽっと出の他の男に見惚れるなんて、浮気性だ。

 それなのに、次の日。フェリスは懲りずにあの三人組と一緒に、森を案内までしていた。

 はらわたが煮え繰り返るような怒りを、全てフェリスの中に吐き出す。昨日ので分からなかったんだ、もっと分からせないといけない。お前は、俺のものなんだって。あんないけすかない、この世の全てを手に入れたみたいな嘘くさい余裕の男なんか、絶対にヤバい奴だって。


 そして家に閉じ込めて、ほっとした。


 そうだ、最初から閉じ込めておけばよかったんだ!


 結婚したら、部屋にはちゃんとした鉄格子を付けよう。
 神官?もう一人神力を持つやつがいる、そいつを修行に出したらいいだろ。フェリスは俺だけを見ればいい。

 安心して宴に参加した。レオンの野郎は、女に擦り寄られてだらしの無い顔をしている。ふん。これのどこがいいんだ。見る目の無いやつめ。

 俺の隣には、ララとポーラがいた。幼馴染だし、俺にはフェリスがいるし、ただ楽しく食べているだけ。


「ね、アノン。飽きない?同じ人とするのって」

「は?飽きる訳ねぇし」


 そう言いながら、そうっと頬に口付けられてどぎまぎしていた。……最近、あいつは泣いてばっかりだ。辟易としてくるのは、仕方のないことだろう?

 女の子を、教えてあげると言われて、ふらふらと着いていった。これは、知らないことを知るためだから、浮気じゃない。勉強だ。そう、自分に言い聞かせて。















 そういえば今日は、勇者の旅立つ日だな。

 のそのそと裸に服を着る。あいつ。フェリス、まさか、行ってないだろうな……?
 嫌な予感がして家に行ってみれば、閉じ込めておいたはずの窓が完全に破壊されていた。

 慌てて村の入り口に行くと、もう勇者達が。……そして、フェリスも、背負い袋を持って。















 あいつは、俺を捨てた。捨てられたんだ。







 むしゃくしゃして、森に入ってやった。魔物避けを持っているから、当然、魔物も来ない。
 そして、フェリスも、来なかった。


 しばらく森を歩いて、空が暗くなってきたのでとぼとぼと帰る。帰り道には、そこかしこにフェリスがいた形跡があって、さらに俺の気分を落ち込ませた。


 フェリスが来たら、魔物よけをすぐに袋に入れて隠していた。
 そうしたら、魔物が寄ってきて、フェリスが必死こいて守ってくれる。

 腹が空いたら、料理を作ってくれて。

 熱いからと、ちっさい口でふうふうと冷まさせてくれて。

 喉が渇いたら、華奢な手のひらに水を出して、こぼれないようにそっと飲ませてくれて。

 足が痛いと言えば、両手で揉みほぐしてくれた。……自分の方が、探し回ってよっぽどぼろぼろだったのに。


「ぐっ……ふぐぅぅうう……っ!」


 情けない涙を、堪える。

 俺、一体何をしていたんだろう。
 フェリスが幸せそうに笑ったのなんか、最後に見たのはいつだったんだ?

 そうでなきゃ、村を出る時、あんなに笑顔な筈はなかったのに。








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