【完結】神官として勇者パーティーに勧誘されましたが、幼馴染が反対している

カシナシ

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番外編

お前のアノンから、愛を込めて

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 フェリスが出て行って、二年。
 お前は知っているか。
 この二年の内に、色々あったぞ。

 俺はララと結婚させられた。ララとは、ただの興味本位で行為をしただけで、ララに興味があった訳じゃ無い。本当だ!
 それなのに、だらだらと誘われて、流されて……気が付いたら、子供が出来ていた。

 お前なら分かるだろ。あいつの性格の悪さ。ララは、結婚するまで殊勝な態度だったのに、結婚した途端に鬼嫁になっちまった。

 俺のこと、『ど下手くそ!腰振るだけなら猿でも出来るわ!』なんて言うんだ……冗談じゃないよな。お前も証言してくれたら、嬉しい。ララは愛撫がどうとか角度がなんとかと色々煩くなって、元々あんまり好きじゃ無いやつってのもあって抱かなくなった。

 そしたらさ、すぐに他の男と歩いてやがる。
 子供もさ、最初はララに似てるなーって思っていたんだが、少し顔がしっかりしてきたら、俺の要素がない。多分他の村人なんだろうけど……みんな似たり寄ったりの顔をしているから、分からない。

 どうせ子供はまとめてみんなで育てるし、特に問題はない。それが、悔しいよ。

 お前の親父さんさ、すげぇぞ。
 観光大使とかってやつになったんだ。知ってるか?

 村に人を集めるために色々派手な飾り物を作ったり、お前の好きなレモンパイのお店を開いたりしているんだ。おかげで神官の巡礼地のひとつみたいになったし、村の人も収入も増えたって聞いた。

 聞いた、てのは、もう俺は村長の息子じゃ無いから。裏庭を耕して、細々と野菜作ってる。俺の親父?拗ねて酒ばっか飲んでるよ。後始末をするのは俺だってのに。みんなから支持されなくなって村長を下ろされて、それがショックみたいだ。

 俺は村人たちから、フェリスを振り回した挙句今でも未練タラタラ男だって言われているらしい。たまに帰ってくるララから聞いた。でも、その通りだ。俺は今でも、お前が好きだ。愛している。お前がいなくなって初めて、どれだけ愛されていたか分かった、馬鹿な野郎だ……。

 ララはもうすぐ他の男の子供を産む。あいつさ、ぶくぶく太ってきたのにまだ現役らしい。ある意味尊敬するぜ。でも俺、ララを見て分かった。結婚した女がぶくぶく太る理由。お前んちは違うけどさ。結婚したら安心して動かなくなるって、本当だわ。あいつ、俺と結婚したまま金だけ搾り取る気だぜ!

 あーあ、早く離婚してぇけど、ララの親が村守役だからビビっちまって言えてねぇ。俺が村長の息子の時ならまだしも……そうだ、お前から言ってくれたら聞くと思うんだ。頼む!

 


 お前は、頑張っているか?きっとお前のことだから、パーティーメンバーに尽くして可愛がられているんだろう。前までは、俺に尽くしてくれていたのに。本当に後悔している。悪かった。お前ほどの良妻なんて、どこ探したって見つけられやしない。


 辛いことはないか?
 旅はフェリスの柔肌には厳しいことばかりだろう。傷付いてないか?帰ってきたら、優しく舐めて消毒してやるよ。

 18歳になったお前は、ますます立派に、綺麗になったんだろうな。お前の載った新聞は全部取ってある!
 村中みんなが待ってるぜ。迷宮踏破をしたら、すぐに帰ってこいよな!そうしたら、ララと離婚して、お前と結婚するから。照れるけど、今なら言える。フェリスを愛している!

 俺の歌声をこの手紙にのせて、届けられたらいいのに。せめて、歌詞だけでも読んでくれたら嬉しい。

 ~~~以下、延々とポエムが続く~~~


 P.S. 実は、手紙代が結構かかるんだ。何度か送ったからな。ああ、返信が無くても気にして無い。忙しいんだろ?分かってる。代わりにさ、ちょっとばかし多めに金を送ってくれないか?

 お前のアノンから、愛を込めて。




 ――――――――――――――


 拝啓、アノン殿

 貴殿の手紙がフェリスに届くことはありません。
 フェリスは神官の中でもトップの実力を誇ります。だからでしょうか。貴殿の欲望塗れの手紙は、フェリスに近付く前に突如として浄化の炎に包まれ、天高く舞い上がり神の元へと昇華しました。ということになっておりますので、悪しからず。

 そんなことは置いておいて、いい提案があります。

 貴殿は妻子あり、金なし、さらに、暴力や虚言、過度な束縛、自己愛、盛りだくさんでキリがありませんが、まず心配すべきは収入といったところでしょうか。お金を稼げば、人としていくらかはマシになるかもしれませんよ。多分。

 一晩考えたので、ぜひこの切符を有効に使って下さい。あとは使者に託します。

 P.S.フェリスは確かに美しい天使ですね。毎晩愛でるのに忙しいため、これ以降の返信は遠慮します。



 敬具


 ――――――――――――

 レオンは開拓村行きの片道切符と共に、さらさらと特に考えず適当に書いた手紙を使者へと託した。
『フェリスを不快にする虫がいるため、駆除を』……ではなく、『活躍中の神官を狙う不届者がいるため、迅速な対応を』と事付けて。

 その後、アノンは父親と共に移住を決めた。あの村での居心地の悪さに根を上げた、というのがフェリス向きの報告。

 実際は、最後までフェリスとの縁を切りたく無いと暴れたが、丁寧な返信の手紙を読んでから、脱力感に襲われ、使者に引き摺られるままに運ばれていった。

 村長の息子であれば手に入れられた魔物避け。
 それを持たないアノンは、もう開拓村から出ることは無いだろう。

 今では失恋の歌謡を弾き語っているらしい。力仕事に向いていないからだ。顔は悪く無いため、そこそこの人気だそう。ただし収入の大半は妻子への仕送りに強制徴収されている上、酒浸りの父親付き。

 いずれは誰かと結ばれるかもしれないし、誰も近寄らないかもしれない。どちらにせよ、フェリスの視界から跡形もなく消えれば、それでいい。

 レオンはすっきりとした気分で、報告書を燃やした。









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