僕は人畜無害の男爵子息なので、放っておいてもらっていいですか

カシナシ

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本編

24 給餌

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 放課後。


『おれはどこも悪くねぇ!』と不審がるショーン様も、例によって小さなピンクの塊をこさえていたので、サクッと浄化した。

 どうやら浄化後は、皆さん反省タイムに入るらしい。目をぐるぐるさせたショーン様は、僕をパッと見て、項垂れる。


「おれ……おれ、ごめんな、ロロ。おれ、なんかしてたよな!?分かんないけど、なんかごめん!!」

「えっ?いえ、そんなには……」

「ショーン。とりあえず、落ち着こう。ね?ロロくん、ショーンは連れて帰るね」

「は、はい」


 なんとなくショーン様が落ち込んでいるのは似合わないというか、意外だった。ジキル先輩がショーン様を摘むように連れて出て行く。さすが、先輩。頼り甲斐がある。

 ショーン様ならすぐに立ち直りそうだな……と若干失礼なことを考えていると、アレキウス様が気まずそうな顔をしていた。


「そういえば……ロローツィア。昼間はすまなかったな。関わらないと決めたのに、あれは看過かんか出来なかった。エカテリーナも派手に慈悲深さを演出したが、ロローツィアの気持ちには寄り添わないし、結局謝罪もしていない」

「お気持ちは、嬉しかったです。気にしないようにはしていますが、良い気分ではありませんでしたから」

「私の性格なら、ああいうことが目の前で起これば止めていたはずなのだが……その、薬の影響で性格まで変わるなんてことがあるのか?」


 首を捻るアレキウス様に、握力を鍛えていたグレイが反応する。


「迷宮にいた魔物だが、ある色にだけ興奮する奴がいた。その色を見るとやたら攻撃的になる。それと似たようなものでは?」

「そうか。そういう風に、条件があるかもしれないな」

「薬師の協力を得なくては。宮廷薬師……いや、その前に影から……、そうだ、あの三人の尋問は誰に任せようか……」


 思考にふけるアレキウス様を他所よそに、グレイと一緒に夕飯だ。それを見たアレキウス様も一緒に食べたがったので、トマムさんが慌てて手配をする。


 いつも通りたらふくと食べて、最後のデザートだけは、僕がグレイにあーんしてあげる。ちょっとした幸福感だ。


「ロローツィアに食べさせてもらうと、いつもの何倍も美味い気がする」

「本当?たくさん食べて、体力つけてね」

「いいなぁ……」


 グレイにプディングを食べさせていると、アレキウス様がようやく思考から帰ってきた。うっかり口からポロリと出てしまったみたいで、言ってすぐに口を押さえていた。


「間違えた。聞かなかったことにしてくれ」


 そう言って目を逸らす殿下、可愛い。普段あんなにキチンとして、大人びた対応をする人だからこそ、微笑ましい。

 グレイはいぶかしげに眉を上げた。


「珍しいな。婚約者に一途だったアレキウスが、そんなことを言うとは」

「だから、間違えたと言った」

「そうか。分かった。聞かなかった」

「……はぁぁ~、もう、触れてくれるな」


 顔を真っ赤にしているアレキウス様が幼児のように見えて、僕は思わず、アレキウス様にも匙を差し出していた。


「アレキアス様。よろしければ、どうぞ」

「え……」

「これは、【聖なる調理器具】と言って、毒も泥も混入していても浄化してくれるスプーンですから、安心して頂けると思います。残念ながら僕の手から離すことは出来ないのですが」

「……グレイと、間接……」

「いえ、唾液も浄化されますから、いつでも新品ということになります。この世で最も衛生的です」

「…………そうか……なるほど……」


 アレキアス様の『なるほど』は、衛生面が気になっていたのかな。少し口を開けてくれたので、つるんとしたプディングを差し入れた。これも僕のお気に入り。男爵子息風情ではありつけなかった、高級な甘いもの!グレイのおかげで頂けている。


「……確かに、美味しい。すごいな。聖者には、そんな魔術まで」

「えと、味はシェフさんの腕に依ります」

「そうだが……そうなんだが……」

「アレキウス、俺は分かるぞ」

「それならいいか」


 何の通じ合い?
 二人でウンウン頷いていて、ちょっとした疎外感だ。

 右へ、左へ、二人にデザートをあげていると、弟たちが小さかった時を思い出して、会いたくなってきた。離乳食をだらだら溢したり、嫌なものを吐き出したりする分、もっと大変だったなぁ、と。

 まだ入学してから然程経っていないのに、色々あって疲れてしまったのかも。もちもちぷくぷくほっぺに会いたい。癒されたい。


『兄ちゃん!一緒に寝よ!』『にいにのご飯が食べたい!』『にいにい、絵本読んで!』『にに、抱っこ』『あばぁ~』って、きっと一度に全部言われてわたわたするのだろうけど。あの騒がしさが懐かしくて恋しい。

 ハァ……と小さく息を吐き出した。分からないように気をつけたつもりだったのに、彼らには気づかれてしまった。


「どうした、疲れたのか?毎日すまない」

「流石に疲れたんだろう?今日はもう休もうか」

「ああ、いえ、気を遣わせてしまいすみません。では、お言葉に甘えさせてもらいますね」


 最後のひと匙は自分の口にパクリとして、寝ることにした。
 もう、この寝台無しでは寝られないかもしれないというくらいに馴染んでいる、花びらベッドに。








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