僕は人畜無害の男爵子息なので、放っておいてもらっていいですか

カシナシ

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本編

28 強制 微※

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「ほんの少しだけ、ハイな気分になると思うんだけど……どう?どんな感じ?」

「……っ、帰る!」

「えっ、なんでっ?」


 はぁ、はあ、と上がっていく息に、熱。時間が経てば経つほどに良くない、気がする。

 腕を掴まれそうになったのを避けると、オーランドは悲しそうに眉を下げた。


「そんなに、オレのこと……嫌い?こんなに、いい匂いさせてるのに。ほら、おいで……」

「なんでこんな……………………、かえ、る!」


 僕の首筋に顔を寄せてくるオーランドを、思わず引っ叩いてしまう。傷ついた表情を見て、しまった、と思うけれど、身体の火照りが危険信号を発していて余裕がない。

 まだ、走れる。大丈夫だ、僕の自慢の足、頑張って!

 オーランドに構わず、僕は走った。走って走って、少し先の視界もふにゃふにゃになって、マズイと思いながら寮の自室へとなだれ込む。


「熱っ……、はぁ、はぁ……っ、う」


 僕から、くらくらするほどのフェロモンが大量に香っている。甘い甘い、アルファを誘うフェロモン。“欲しい”、“今すぐに”、そんな見境のない下品な香りに思えて、自分自身を締め殺したい衝動に駆られる。

 下履きの中は先走りと後孔からの愛液でべとべとになっていて、それ以外も汗で濡れていたから全部脱ぐ。裸になった僕はシーツに潜って、腫れて痛む陰茎をどうにかしようと奮闘した。

 僕は、こういったことにあまり免疫がない。前世でも虚弱で大人になる前にこちらへ転生したから、縁がなかった。どう見ても、放置して収まる熱量じゃない。


「どうし、よ……うっ、あっ、」


 確か、絞るのだっけ?硬くなったそれをぎゅっと握っても、痛いし、中のものは出そうにない。違う、ネクタイ置きだ!これを……どうするんだっけ?

 困った。泣きそう。どうにも出来ないまま、爆発しそうな頭の熱でぼうっとなり、気絶した。






 気がつくと外がガヤガヤと騒がしい。誰かが叫んでいる。


「ああああ!あアアアッ!!」


 僕だった。自分の口から出ている声に、驚いて起きたらしい。

 外からひどい大声が、たくさん響いてきて、僕の頭をかき混ぜていく。


『入れろ!おれのオメガだ!おれのもんだぜ!!』

『なんで扉が頑丈になってやがるんだ!』

『早くヤリてぇ!ヤリてぇ!ケツ出せよアバズレ!!』


 ひぃぃぃっ!怖い、なんなの!?


『おわっ!』

『なんだこの床、っ!?』

『滑るぞ、うわっ!』


 ……どうやら、精霊さんたちが彼らをすっ転ばしてくれているみたい。だけど、相変わらず扉の前で僕を狙っている。
 本能的危機感に逃げようと窓を見るけれど、ここ、三階。無理だ、逃げられない。

 涙目になっていると、怒声の中にたったひとつ、僕を心配する、聞き覚えのある声がした。


『ロローツィア!大丈夫かっ!?』


 ドンドンドンドンッ!と扉を激しく叩く音。聖域もかけていなかった。そういえば、魔術が上手く扱えない。こんな状況で集中なんか、出来る訳なかった。


「だ、れ……?っは、」


 誰、だっけ?知っているのに、思い出せない。ぐわんぐわんと脳が揺れる。まるで揺さぶられているみたいで気持ち悪い。それでも扉にはしっかりと鍵を掛けていたみたいで、開けて欲しい気持ちと、開けて欲しくない気持ちがせめぎ合う。


『!グレイリヒトだ!開けていいか!フェロモンが漏れている!』


 グレイの声だった。いつになく切羽詰まっている声。僕を、心配している。


『周りは騎士を借り、他の生徒は遠ざけた!入っていいか!』


「あい、あと……ごじゃ、まふ……ぐりぇ、はあっ……」


 呂律が回らない。とてもじゃないけど、鍵を開けに立つこともできない。

 身体は骨が無くなってしまったようにぐにゃぐにゃだった。なんとか声を絞り出すと、バキッ!という音と共に、扉が蹴破られる。ああっ、せっかく付けてくれた扉!

 シーツにくるまって動けないでいる僕を見て、グレイは顔を真っ赤に染め上げ、叫んだ。


「ろ……っ!なんて強いフェロモンなんだ……!もう大丈夫だ。俺の部屋に連れて行く。あそこならフェロモンも漏れない」

「……うぅ、はっ、はっ、」


 本来の力を発揮する逞しいグレイの腕に抱き上げられて、風のように運ばれる。僕は荒い息を上げるしか出来ない。

 シーツにくるまっていた僕は、理性を失った大勢の生徒たちに囲まれていて、襲い掛かられていたことなんか、全く気づかなかった。グレイがあまりに速かったのと、騎士さんたちが抑えていてくれたから。







 そこからの記憶が、朧げだ。

 体が熱くてたまらなくて、そしてすごく気持ち良くて、まるでとろけたバターになったみたいで、何も考えられなくて。

 けれど、きっと夢。



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