僕は人畜無害の男爵子息なので、放っておいてもらっていいですか

カシナシ

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本編

57 閨係※

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 あったかくて、熱くて、幸せで満たされている。

 引っかかっているだけのグレイのシャツは、もうくしゃくしゃだ。だって正面から欲望を受け入れて、抱き合っている。ちぅちぅと胸元を吸われたり、かぷっと喰まれたり、ゆったりと揺さぶられるのも、産湯を揺蕩っているようで気持ち良い。


「はぁ……っ、はぁ、グレイ、好き……」

「俺の方が、愛している」

「そんなの、分からな……、ひんっ」


 ドンッ!と奥深くを一突きされて、ちかちか星が舞う。グーッとお腹の底が締まると同時に、快楽の沼に叩きつけられ、訳がわからなくなった。


「あああああっ!ああ、あ、あ、あ、あ~っ、あ~っ!」

「まだ分かっていないのなら、教えてやる。愛しい……ロローツィア」

「ふぎぃ……っ」


 顔も涙と涎まみれで汚いだろうに、グレイはたくさんキスをしてくれて、ぴくぴくと絶頂から降りてくる。その間、グレイは悪趣味にも僕をじっと見て動かない。うう、あんまり見ないで欲しいよ……っ。


「ぐ、グレイ!ああっ、はやく、動いて」

「ん……」

「おねがいっ」


 僕のあられもないところは、グレイの太くて大きいものでみちみちといっぱいだ。いつの間にか、そのサイズのものをぴったり受け入れられるように変わっている。愛液でぐしょぐしょに濡れていてすんなり動かせるはずなのに、グレイは僕の鎖骨に跡を付けるのに夢中なご様子。
 それも、嬉しいのだけど、でも!

 もどかしくて、自ら腰を揺らしてしまう。下手な動きは絶頂にはほど遠くて、焦ったい。


「グレイ、ぐれい、ねぇ」

「……」

「う~~ッ、は、や、く!アッ」

「ふ……、お望み通りに」


 散々焦らされた挙句、どちゅんっ!とまた奥まで嵌め込まれて、強すぎる刺激にのけ反った。体格に見合って無駄なくついた筋肉の上半身は、僕をがっちり抱きしめて逃れられない。
 はふ、はふ、と空気を求める間抜けな魚の僕に、野獣のようなグレイが喰らいついているみたい。

 結局、グレイに翻弄されっ放しの僕は、意識を失うまで揺さぶられ続けたのだった。











「うゔ……」

「大丈夫か」

「だい“、じょば、な“い”……」


 いくら僕が体力のある方だからって、聖者だからって、初めてなのに飛ばしすぎじゃありませんか。
 というか、グレイは、初めてじゃないのか?え、それって、ちょっとショックかもしれない。

 僕がジーッと見ていると、グレイは僕の身体を綺麗に拭いたり、柔らかい新しい寝巻き(僕にピッタリだけどどこから出したの?)に着替えさせてくれたり、痛む腰や、接合部として働いてくれたお尻のあたりに軟膏(それまで用意してたの?)を塗ってくれたりと、甲斐甲斐しい。喉が渇いた……と思えば、とろりとした果汁入りのお水まで出てきた。気遣いが凄い。このスマートさは、絶対、初めてじゃない。


「グレイ……、あの……、僕、聞いていいのか分からないのだけど……」

「なんだ。ロローツィアに聞かれて困ることは何もないぞ」

「……そっか!じゃあね、あのね、グレイって、僕が初めてじゃない、よね?」


 グレイはぴしりと固まった。あ、やっぱり聞かない方が良かった。グレイがこんなに甘く激しく、誰かを抱いたなんてことを考えただけで、泣きそうになる。

 そして僕の泣きそうな気配を察したのか、グレイは優しく、控えめに声を発した。


「確かに、初めてではない。が、こんなに充足感の得られるものでもなく、ただ淡々とこなしただけだ」

「こなした……って、仕事、みたいに」

「ああ。男女一人づつ、娼婦と男娼をあてがわれて閨の講義を受けた」


 なんじゃそりゃあっ!異世界、恐ろしいっ……!

 いや、元の世界でも時代が変わればあったのかな。僕の思考はポーンと宇宙へ飛んでいってしまった。世界とは。歴史とは。閨の講義とは。


「いつまで経っても合格を貰えないから、親に説明して辞めさせた。高額の給料に目が眩んだのだろう。と言ってもほんの数日間。今では二人とも顔も覚えていない」

「そっか……、そうなんだ……へぇ……」


 それ、絶対、グレイが好きで引き伸ばしたよね。こんな格好良すぎるアルファに抱かれるお仕事、お給料なんてなくったって応募殺到に違いないもの。ジトっとグレイを見つめながら、そうひとりごちる。


「……気持ち悪い、か……?」


 不安そうに僕の側へやってきてちょこんと座る大男に、愛しさが込み上げる。チョロい僕は、そういうこともあるのだと納得した。少し嫉妬心もあるけれど、グレイは僕が好きで、僕もグレイが大好きなんだから。


「ううん。……大事に抱いてくれて、ありがとう」

「……愛している、ロローツィア」

「僕も。愛してる」


 ぎゅうぎゅうと抱き合い、ちゅ、ちゅ、と戯れるようなキス。そこで、二人のお腹がぐうぅ~、と主張し始めて、僕たちは笑った。


「昼にしよう。それにしても、ロローツィアは体力があるな。一日中セックスしていたのに」

「……あれっ。そういえば、昼が二回きてる……ね?」

「そうだ。あまり可愛くて止まらなかった。今も我慢している」

「ええっ!?」

「だが、腹が減ってはな。トマム」

「へいっ!用意しておりますっ!」


 グレイが声をかけた途端、トマムさんが昼食のワゴンと共に乗り込んできた。よ、用意がいい……!それも、僕のお腹に優しそうなものから、グレイ向きのガッツリ系まで、種類が豊富。


「さぁさぁ、滋養強壮によく効きますからお召し上がりください。あっしはその間お片付けしていますからねぇ」

「ひいっ!す、す、すみませんトマムさん……っ!」

「いえいえ~!お気になさらず!あ、これは一応、避妊のお薬でござい」

「ありがとうございますぅ……」


 トマムさんはさりげなく僕にお薬を渡し、サッと上機嫌に鼻歌を歌いながら、アレヤコレヤした寝台を整え、脱ぎ散らかされた衣服を籠に仕舞い、踊るように掃除をしていく。

 完全に“関係を持った”と把握されていて、羞恥で埋まりたい。それなのにトマムさんが思った以上に普通で、いやむしろご機嫌で、なんだか戸惑ってしまう。

 戸惑っているうちに、僕はいつの間にかグレイの膝に乗ってご飯を食べさせられていた。こっちのグレイも上機嫌で、甘くとろけるような目で見つめられている。


「はふ、ふう、あの、グレイ。どうしてあんなに、トマムさんはご機嫌なの?」

「ああ、大方俺がロローツィアと結ばれて嬉しいんだろう。性的なことは極力遠ざけるようにしていたからな」

「えっ……そ、そうだったんだ」

「実際、俺は幸せだ。君のおかげで」

「……それは、お互い様だね。僕も」


 甘えるように胸筋を枕にして、グレイの話を聞く。






 グレイの先ほど言ってくれた、閨担当者の話の続き。

 14歳になってその閨教育が終わると、新人の若い使用人たちがグレイの寝室に忍び込んでくることが多々あったらしい。アルファのグレイは既に体格が出来上がりつつあって、一夜だけを懇願する者もいれば、未来の辺境伯夫人を狙っている者もいた。
 曰く、まだ精神的には未熟なうちなら、チャンスはあると思ったのだとか。


 お義父さまに相談したところ、『一人見せしめに処してみろ』という……なんとも荒っぽいご指示。実力主義の辺境伯らしいといえばらしいけれど、グレイは悩んだ末、その者に“児童を狙った性犯罪者”用の刻印をして叩き出した。

 この世界、あらゆる犯罪者は刻印をされる。その中で、特に“児童を狙った性犯罪者”の刻印は他の犯罪者からも嫌悪されるのだそう。

 もちろん忍び込んだものは全て紹介状なしで解雇されたが、その刻印も施された翌日からは、夜中の訪問者はピタリと止まった。


「14はギリギリ児童……だろう。自分で言うのもダメージを受けるが、奴らにも相応の罰だと思った。犯罪者村でさえ迫害されるらしいし、居場所はどこにも無くなるだろう」

「そんなことが……辛かったね……でも、よく決断したね」

「ありがとう。だが、そういう抑止力があっても、意味ありげに見つめてこられるだけで鳥肌が立つ。結局、冒険者として家を出た方が楽だった」

「安らげる場所じゃなくなっちゃったんだね……」

「ああ。だが、これからは君がいる」


 きゅ、と抱いたままスウゥと頭の匂いを吸われた。ちょっ。そんなところ嗅がないで!


「僕がグレイの癒しになれたのなら嬉しいな。あっ、そうだ!」


 あれを、グレイにも体験させてあげよう!
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