僕は人畜無害の男爵子息なので、放っておいてもらっていいですか

カシナシ

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番外編(と言いつつ番号順)

73 新婚(1)

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「唯一の伴侶に生涯愛を捧げ、尽くすことを誓いますか」

「「誓います」」


 そう厳かな結婚式の真っ最中。触れるか触れないかくらいの静かなキス――――台本通りだ――――を交わした僕たちは、自分史上最高に、


 イライラしていた。




 何故かと言えば!

 僕たち、三日と開けずに肌を重ねているのが日常になっているのに、学園を卒業して結婚式の本格的な準備に入った瞬間、を禁止されてしまったのだ。









***




 卒業し、結婚式まであとわずか十数日。いよいよ毎日を本番に向けて準備を始める。そう聞いてソワソワした僕も、トマムさんの次の言葉で、一瞬の内に不安を覚えた。


「ロローツィア様の磨き上げにも力を入れなければなりませんし、坊ちゃんには数々の台本を覚えてもらわなければなりません。何より、新郎新婦は清廉せいれんでなければなりません」

「ええ……」


 特別張り切っているのが、トマムさん。それに、ジェイスさんという、新しくついた僕専属の侍従さんも、トマムさんの後ろでこくこくこくこくと頷いている。


「神の前で、爛れ切った新郎新婦など言語道断!坊ちゃんには童貞に戻ってもらわなくてはなりません」

「無理だろう」


 僕もそう思う。けれど、僕の両親も結婚式中は初夜まで我慢したと言うから、そういうものらしい。体力の温存にもなるし、距離的に離される訳じゃない。


 だから、大丈夫だろう。そう、思っていた。


 ところが、たった三日目くらいから、少し肌寂しくなってきた。
 毎日のように湯船やマッサージやらサウナやら、グレイも一緒に受けるのだけど、ちらちらちらちら見える胸筋の盛り上がりとか、腕の血管とか、すうっと綺麗な顎のラインとか、もう、目の毒になってきて。


 マッサージをするスタッフさんたちの手前、欲情してはいけない。頑張って床や天井のシミを数えていた。


 そして王都での結婚式。アレキウス様やマリーベル姫、ショーン様やジキル先輩など、友人たちもみんな祝福してくれた。二次会、三次会まであって、ワイワイ楽しく過ごして、初夜だと思うよね?

 違うんだ。僕たちはシュトーレン辺境でもう一度、結婚式を挙げなくてはならなかった。貴族って二回三回結婚式するのが当たり前なんだって。王都を発って、観光やらなにやらでお金を使いながら、辺境まで一週間。




 そして今、シュトーレン辺境の領都で、これまた盛大に結婚式を挙げたところ。この後、三日三晩、領地を巡って新婚行列をする。領民はその間ずっと酒池肉林のお祭り騒ぎ。なんでも、この世界に娯楽が少ないから、こういったお祝い事には命を削るが如く全力で楽しむのだそう。

 夜は『最後の親孝行』とか言ってそれぞれの家族と思い出を語らいながら眠る。それはね、親孝行はしたいし文句などなくやるんだけど……。

 お色直しで慌ただしく衣装を着替えている間、考えていたのはいかにグレイの正装を剥がすか、だ。ギラついた深紅の瞳を思い出すだけで、後孔がじゅっと濡れる。さっきの誓いのキスはすごく物足りなくて切なくて、お互い目を合わせて悟った。グレイも、同じことを思っている。

 清廉な新郎新婦とは程遠いんじゃないだろうか。頭の中は煩悩でいっぱいなんだもの。


「あ……グレイ」

「ロローツィア。そのドレスも似合っている。天使のように愛らしい」

「あ、ありがとう……グレイも」


 白いドレープのきいた、ドレスだけど男女どちらでも着れるデザイン。きらきらの屑ダイヤがたくさん散りばめられていて、スリットからちらりする、僕の肌を一層美しく見せてくれる。
 グレイは凛々しい、辺境の傭兵団の正装姿。軍服に近くて、グレイのスタイルの良さがとってもよく分かる。近付くだけで妊娠しそうな色気だ。

 うーん、心配。これじゃあ、たくさんの人がグレイに惚れてしまうかも。


「ロローツィア、少しだけ」

「へ?……っん……」


 見惚れてぽけっとしてた僕に、グレイが足早に近づいて来て腰を引き寄せ、荒っぽい口付けをしてくる。やっぱりさっきのじゃ、余計に欲してしまうだけだったのだと、お互いに再確認。爪先立ちになって、グレイの唇を受け止めるのに必死だ。

 自然な流れで、グレイは僕のドレスを弄り出す。お尻に太もも、そして内側の際どいところまで布越しに触られて、そろそろ離れなくちゃと思うのに抗えない。もっとして欲しい。腰をグレイに押し付けていると、裾をがばりとたくし上げられて、お尻まで露出させられていた。


「あ……っ、あぅっ、だめ、グレイ……」

「限界だ、このあと三日もまだあるんだぞ。今なら10分くらい……」

「……10分……い、いける?」


 グレイは無言で、僕のドレスを汚れないように纏め、性急に蕾へ指を挿し入れる。久しぶりのグレイの指はとても太い気がして、ビリビリするような快感に早くもイッてしまいそう。


「ンンッ!もっ、早く……、いいから、グレイ、」

「しかし、まだ狭」

「ちょーだい……っ」


 涙目で懇願すると、グレイは頬をさっと赤らめた。そして自らのベルトを緩めようとした時。




「坊ちゃん!早く!お客さんが待ってますからっ!」



 バンッ!と無遠慮にトマムさんが入って来た!

 びっくりして固まった僕とグレイを見つけると、トマムさんの目が三角に吊り上がる!


「何を!しているんですか!ああもうロローツィア様のドレスが!離れて離れて!ジェイス!化粧直し!」

「はい、今」


 風のようにやってきたのはジェイスさん!ナニをしていたか、僕の露わになった部分など、全く気にしない!

 そんなシゴデキジェイスさんによって、僕はまるで『清廉潔白です』みたいな新婦にされてしまったのだった。







 グレイと二人並んで、控えめに微笑んでいた。

 完全なる外面である。だって、先ほど中途半端に触れ合ってしまったせいか、もう、ドレスの中の下着がびちょびちょだ。少しグレイの身体とぶつかったり、目が合っただけで胸の奥がキュウンと締め付けられて熱くなる。


『新婦、すっげー可愛いな……』

『可愛いのに色気やばくないか?』

『あの小さい体に、新郎のデカいのが入るんか?』

『無理だろ。オレでよければ練習台に……』

『おめぇどんだけ小せぇんだよっ!』


 そんな笑い声が聞こえてきて、僕はますます恥いって俯いた。何やら心配されているようだけど、入るようになったもん!グレイの、おっきいの……、と考えると、勃ってしまうから良くない。うう、考えないようにしないと。

 ふと、グレイと目が合った。僕はムラムラして仕方ないのに、グレイはもう平常時の、つまり、無表情だ。ちぇ。熱っているのは僕だけじゃないはずなのに、ズルい。


「ロローツィア、親戚たちがすまないな。下世話で」

「へっ!?あっ、いいのいいの。僕も慣れなくちゃいけないし」

「慣れなくていい。ロローツィアはそのままでいいのだから」

「リヒト!」


 そこで、ものすごーく酔っ払ったお兄さんがグレイに絡み出す。グレイの、親戚の方かな?身なりはとても立派で、辺境にお住まいにしては線の細い、綺麗な方だ。


「初めましてぇ、新婦さんっ!ボクはね、リヒトの愛人、ユーリスだよ~っ!よろしくねぇ~っ!」

「え……」



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