同室のアイツが俺のシャワータイムを侵略してくるんだが

カシナシ

文字の大きさ
1 / 17

1

しおりを挟む

「聞いてくれ!」


 どうしてもこればっかりは消化できない。

 胃から迫り上がって漏れる事態になる3秒前。

 俺は親友に相談する程までに、追い込まれていた。


「マジで秘密にして欲しいんだけど、その上で聞いて欲しい」

「君がそういう時ってけっこーしょうもない気がするけど、分かったよ、レイジーン」


 誰にも聞かれることのないように、学園の屋上へと連れてきた親友。バルカスは、へいへいと軽い相槌を打った。

 俺の悩みは本当に逼迫していたから、バルカスのそんな態度なんか気にせず、声を顰めて話し始める。



「アイツが、俺のシャワータイムに侵入してくるんだ」



 バルカスが変な顔をした。聞け、最後まで聞け。



「まず事の始まりは多分、三ヶ月前くらい。

 俺の同室のアイツ、知ってるだろ?ロドリック・シルファ。俺がシャワー浴びてる時にさ、『ちょっと用を足したい』て言うから、『おう、漏らすなよ』って答えたんだ。

 ほら、寮のシャワールームって便器と一緒になってて、間にはガラスの扉しかないだろ。つまり丸見えなんだよ、お互い。

 俺、気ぃ遣ってシャワーの勢い強くしたり、アイツの方見ないようにしてやったんだ。裸見られるより、用を足す姿見られる方が嫌だろうと思って。

 その時は全く気にしなかった。でも、それから半月、一週間、三日……って、段々とシャワー中に入ってくることが多くなった。一ヶ月前くらいには、もうほとんど毎日入ってくることに気が付いたんだ。

 俺のシャワー時間さぁ、そりゃこの銀髪のキューティクルを死守しないといけないから、ちょっとは長いかもしれねえ。けどさ、たかだか10分くらいなんだよ。そんな毎回待てなくなるなんて、おかしいだろ?

 だから俺、ちょっと妙だな、って思って『俺がシャワー入る前に行っとけよ』て言うようにしたんだ。そしたらあいつ、『ああ、今は大丈夫だ』っつう。ああわかってくれたか、って思うじゃん?


 ところがどっこい。アイツやっぱり、入ってくるんだよ。俺呆れてさ、ついついロドリックの方見たら……あいつ、俺の方ガン見してんの。

 いやいや、俺の配慮はなんだった?アイツもう、目が飛び出そうなくらい俺の方見てるからさ、流石に恥ずかしくなって『こっち見んな!』っつったの。そしたらなんて言ったと思う?『壁を見ている』って宣うんだ!

 はぁ?って思ったよ。なんでわざわざ俺の向こう側の壁見てんだよ!って。

 でもさ、そう言われたら俺、なんだか自意識過剰みてぇじゃん?『そうか……』ってまたシャワー浴びるんだけど、やっぱり一度気になるとすげー視線な気がしてくる訳。

 だから今度は、シャワールームのガラス扉をどうにかしようと思ったんだ。水垢とか汚れ付けたら曇るだろ、って。で、わざと水を多めにかけたり、石鹸カス付けたりしたんだ。

 でも数日経っても全然曇らない。それどころかピッカピカで汚れ一つついてない。おかしいよな?よく観察したら、アイツ…………毎日!シャワーの後に掃除してやがった。

 それがシャワールームのガラス扉だけだったなら俺も文句言えるんだけどさ、アイツ感心するくれー他も綺麗にしてくれてんの。洗面台とか便器とかだけじゃなくて、ソファまでなんか柔らけー布巾で拭ったりしてんの。アイツ本当に公爵令息か?

 だから俺も文句言えないじゃん。ってか俺も掃除しなきゃいけないのに、アイツやらなくて良いって言うからなんか申し訳ねーしありがてーし。

 でもそれとこれとは別じゃん?俺の裸なんか価値はねーけど、見られてっと落ち着かねぇし、心のシャワーができない。リラックス出来ないんだよ!

 もういよいよガラス扉に細工しようとしたんだ。やすり買って来て、表面削ったらモザイクみたいになるかと思って。コッソリじわじわやってみたんだ、それが三日前。

 やすりって結構力要るし、すぐ使えなくなるしであんまり進まねぇけど、やっと股間覆えるくらいはザラザラになってきたな、って思ってたら、昨日。


 帰って来たら、ガラス扉が…………新品になってたんだ。


 思わず二度見したよ。あんだけ苦労したのに、もう傷の一つもないクリアでまっさらな状態になってさ。『これどうした?』って聞いたら、『古くなっていたから、取り替えといた』って言うんだ。それもアイツの自費で。

 ありえねーだろ?確かにアイツは公爵令息だし小遣いは多いだろうけど、俺が傷付けたガラスをアイツが支払って新品に変えちまった。そんなんされたらもうガラス扉に細工出来ないじゃん!

 だから今朝は、もういよいよ、ガラス扉の前に濡れた紙をいくつも張り付けたんだ。わかるだろ?もうそこまでしたら、ああ見られるの嫌なんだなって空気読むよな?
 そしたらアイツ、秒で取りやがった。『汚い』とか言って!」


「どうどうどう……レイジーン、相当溜まってるね……」

「たりめーだろ!癒しのシャワータイムを邪魔されてんだぞ!」


 むしゃくしゃして、頭をガシガシと掻く。自慢の銀髪が乱れてしまうが、それどころじゃない。


「そんなに嫌なら、部屋替えて貰えばいいじゃないか。というか、本人に伝えたのかい?」


 バルカスはよしよしと俺の髪を直してくれながら、至極もっともな事を言う。
 それが言えたら苦労はしてない!


「いや。同室はアイツがいいんだよ。掃除もしてくれるし忘れ物チェックもしてくれるし、風邪引いた時の看病なんて最高に優しいし、やっぱり天才で秀才だから一緒に勉強しててタメになることが多いし。嫌って訳じゃないんだ。シャワー問題だけなんだよ」

「へぇ……でもやっぱり、言うべきじゃない?現にレイジーンは、嫌な思いをしているんだから。その分だけシルファ様も、飲み込んでもらうべきだよ」


 手元が暇なのか、さらさらと銀髪を結えられる。バルカスは俺と同じ、子爵家非嫡男。身の回りのことは自分で出来るよう躾けられている。だからこそ、俺とは親友のように仲良くなれた。


「うーん……じゃあ、なんて言ったら良いと思う?あんまり角は立たせたくないんだ。アイツ、基本的には良いやつだし」

「でも、要は覗きってことでしょ?致命的じゃない?」


 そうバルカスに言われ、俺はぐっと唸った。


「覗き……って言うか、ガン見だから違う」

「よりタチ悪いよ?」


 悪く言わないでくれ。俺はロドリックを傷付けたい訳じゃないんだ。

 でもやっぱり、本人に言うしかないかなぁ……。


しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

兄様の親友と恋人期間0日で結婚した僕の物語

サトー
BL
スローン王国の第五王子ユリアーネスは内気で自分に自信が持てず第一王子の兄、シリウスからは叱られてばかり。結婚して新しい家庭を築き、城を離れることが唯一の希望であるユリアーネスは兄の親友のミオに自覚のないまま恋をしていた。 ユリアーネスの結婚への思いを知ったミオはプロポーズをするが、それを知った兄シリウスは激昂する。 兄に縛られ続けた受けが結婚し、攻めとゆっくり絆を深めていくお話。 受け ユリアーネス(19)スローン王国第五王子。内気で自分に自信がない。 攻め ミオ(27)産まれてすぐゲンジツという世界からやってきた異世界人。を一途に思っていた。 ※本番行為はないですが実兄→→→→受けへの描写があります。 ※この作品はムーンライトノベルズにも掲載しています。

ゲーム世界の貴族A(=俺)

猫宮乾
BL
 妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。

雪解けに愛を囁く

ノルねこ
BL
平民のアルベルトに試験で負け続けて伯爵家を廃嫡になったルイス。 しかしその試験結果は歪められたものだった。 実はアルベルトは自分の配偶者と配下を探すため、身分を偽って学園に通っていたこの国の第三王子。自分のせいでルイスが廃嫡になってしまったと後悔するアルベルトは、同級生だったニコラスと共にルイスを探しはじめる。 好きな態度を隠さない王子様×元伯爵令息(現在は酒場の店員) 前・中・後プラスイチャイチャ回の、全4話で終了です。 別作品(俺様BL声優)の登場人物と名前は同じですが別人です! 紛らわしくてすみません。 小説家になろうでも公開中。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

元執着ヤンデレ夫だったので警戒しています。

くまだった
BL
 新入生の歓迎会で壇上に立つアーサー アグレンを見た時に、記憶がざっと戻った。  金髪金目のこの才色兼備の男はおれの元執着ヤンデレ夫だ。絶対この男とは関わらない!とおれは決めた。 貴族金髪金目 元執着ヤンデレ夫 先輩攻め→→→茶髪黒目童顔平凡受け ムーンさんで先行投稿してます。 感想頂けたら嬉しいです!

【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。

天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。 成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。 まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。 黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。

ノーマルの俺を勝手に婚約者に据えた皇子の婚約破棄イベントを全力で回避する話。

Q矢(Q.➽)
BL
近未来日本のようでもあり、中世の西洋のようでもある世界。 皇国と貴族と魔力が存在する世界。 「誰が皇子と婚約したいなんて言った。」 過去に戻った主人公が、自分の死を回避したいが故に先回りして色々頑張れば頑張るほど執着されてしまう話。 同性婚は普通の世界。 逃げ切れるかどうかは頑張り次第。 ※ 生温い目で優しく暇潰し程度にご覧下さい。

処理中です...