同室のアイツが俺のシャワータイムを侵略してくるんだが

カシナシ

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番外編:ロドリック 侵略前

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 綺麗なツラの男がいる。


 私にとってのレイジーン・アクアの印象はそれだけだった。


 見かけ倒しかと思いきや、成績も良く、良く笑い良くメソメソする、忙しい男。騎士科の連中はレイジーンによって纏められ、時に成敗され、『ここ数年で最も平和な学年』と言われるほどに和やかな雰囲気となった。


 数年前に卒業している兄の代では、いじめ、暴力、強姦騒ぎも度々起こるような学園で、だ。

 私はレイジーンの滑らかな銀髪がさらさら揺れるのや、晴れた空のような透き通る水色の瞳がきらきら光るのを、気に入っていた。一緒にいて苦にならない、麗らかな清流のような存在だった。






 ある時、私は魔力を暴発させ、利き腕を骨折してしまった。魔力が多すぎると、たった一瞬の油断で魔力が収束せずに漏れ出し、自分を傷つけてしまうのだ。

 すぐさま実家から、世話係が派遣されてきたので追い返した。私にはもう、世話係は必要ない。彼は私を溺愛するがあまりに、要らない世話まで焼いてくる。私はもう子供でもないのに!



 だから、心地良い存在であるレイジーンに、世話を頼んだのだ。

『あ、全然やるよ!オーケー、俺に任せろ!』

 彼は思いの外、世話上手だった。淡々とこなしていくのがちょうど良い。常に誰かしらの下心をぶつけられている私にとって、とても新鮮だった。

 利き腕は包帯や添木で固定されているので、レイが身体を拭いてくれた。私の股間を見てギョッとしていたのは面白かったが、何も言わずに。

 食事もアーンで食べさせてくれる。烟るような睫毛を伏せて匙を掬い、熱くないように冷ますまでして。擬似的な恋人のようで、私は日々ときめかされていた。

 そしていつも、『早く良くなれよ。お前がいねぇと張り合いねぇんだから』と笑う。

 ああ、と素っ気なく返すが、内心はキュンキュンと痛む胸を落ち着かせるのに必死だった。



 怪我は数週間で治った。……その私への献身ぶりが他の生徒にも見られていたレイジーンは、お嫁候補として数々の生徒に狙われることとなってしまった。


 口説かれているのに気付かない。
 言い寄られているのに気付かない。

 そんな奴らを普通に友人として扱うレイジーンに、私は日々ヤキモキしていた。あろうことか襲われる時もあったのに、『俺に喧嘩を売るなんていい度胸だ』と返り討ち。


 違う、そうじゃない。コイツ……まるで分かってない。


 自分がどれだけ美しいのか。その細腰を捕まえ、プリッとした尻を開かせ、内側、奥の方へ入りたい欲望を持つ男ばかりなのに、飄々と、笑うように躱している。


 それは、私のこともそうだった。


 全く、これっぽっちも、意識してくれていなかった。


 今まで女性に追いかけ回され辟易とし、騎士科に入れば淑女科も立ち入り禁止区域があるから安心だ、とまで下心を持つ者に嫌悪を抱いていた私が、まさか、逆の立場となるなんて。

 かといって、友人を今更口説くのはあまりに恥ずかしかった。直球で言える度胸なんて無い。私はそういうことに関しては無力だった。

 だから、手始めに、ちょっとでも意識してもらいたくて、彼の無防備となる空間へ徐々に侵入していったのだ。




 何のことはない。レイはこちらの方を見ずに侵入を許した。

 初めて見るレイの白い股体。

 目に焼き付けるように眺め回した。


 ………………ふむ………………。


 レイの肌はとても綺麗だ。シミ一つ無ければ、日焼けもしない。濡れた髪を掻き上げた際に見えた真っ白な頸が艶かしく、ついつい、用も終わっているのに眺めてしまった。

 その次に入った時は、長い脚の形の良さに、見惚れ。

 その次は、腰のくびれとまん丸に上がった尻に惹かれ。

 意識させるどころか、どんどん好きになっていってしまうのだが?





 あまりにシャワー中に入られるからだろう。とうとうレイが苦言を呈す。この時の私はもはや、レイの身体を堪能するのに忙しくて本来の目的を忘れていた。



『俺がシャワー入る前に行っとけよ』……と。



 当然の指摘だ。私の腹はゆるい訳じゃないがそういう設定の方がいいのか思案しながら、『ああ、今は大丈夫だ』と答えた。そう、本当に用を足している訳じゃないからだ。レイはホントかー?と疑うようにしながら、また入っていく。私もまた入る。


 もよおしたのだから仕方ないだろうと、堂々と。


 レイはちょこまかと裏工作を施すようになっていったが、そんなものは私の障害になり得ない。実家から『なんでも綺麗になるスプレー』をごっそり持ってきているからこれでどこでも掃除できる。シャワールームのガラス扉もまた、然り。

 やすりを持ち出してきたが、金で解決。もし私がレイなら、構わずやすりで傷付け続けるだろう。しかし公爵家を感じたのか、レイはガラス扉を傷付けることはしなくなった。そういう遠慮しいなところも好きだ。


 何か単語を暗記する紙を貼り付けもしていたが、そんなものは美しい景観を壊してしまう。勿論この場合、レイの身体のことだ。


 もっとよく見たい。ガラス扉は特に念入りに掃除をして一点の曇りもないように、かつ、撥水加工まで施しているが、あわよくばガラス扉の内側で、あのなめらかな肌に触れたい。


 …………ところで、いつになったら意識してくれるのだろう?





 そう思い始めた時に、真剣な様子のレイから話を切り出された。




 告白じゃなかったのは残念だが、まぁいい。これでレイと一緒にシャワーを浴びる、大義名分を手に入れたのだから。

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