姉の結婚式に姉が来ません。どうやら私を身代わりにする方向で話はまとまったみたいです。式の後はどうするんですか？親族の皆様・・・！？

9 〜グレイン視点1〜

 俺、グレイン・ラインハルトは父から一昨年爵位を継いだばかりだ。父は早めにリタイヤし領地で母とのんびりしたいと、早々に引っ越して行った。そんなに早く父がリタイヤするとは思っていなかった俺は、騎士として働いていた為二足のわらじ状態で、騎士と領主の仕事を行なっていた。

 ある日、騎士として街の争いを収め、途中で立ち寄った教会で彼女に会った。ふんわりと優しい笑顔で子供達の相手をしたりバザーでモノを売っていた。身なりからどこかの令嬢だと思う。売っているモノを見ると刺繍されたハンカチやクッションカバーだった。

 話しかけると、彼女が刺繍したものだとわかり、ハンカチを1枚買った。丁度俺のイニシャルのGがあったのだ。

 その後も教会でたまに彼女を見かけた。いつも笑顔だ。可愛らしい。彼女を見ているだけで心が癒された。俺があと10歳若ければ交際を申し込むのに、残念だった。コッソリ調べ彼女が、グレイス男爵令嬢だという事が分かったが、まあ15歳の年の差は大きい。諦めよう

 

 貴族の情報収集のパーティにも、たまには顔を出している。その場で思いもよらぬ債権を得る事になった。顔なじみの公爵がグレイス男爵にお金を貸していたが、自分の領地が天災にあった為、その債権を誰かに買って欲しいと言うのだ。俺は騎士としての収入・領地も増収だった為、難無く債権を手に入れた。

 そして、男爵家に提案した。

 『もし、令嬢と結婚させてくれるなら、この債権は無しにしても良い。但し、無理強いはしたくない。本人が嫌なら負債をちゃんと返してくれれば良い』

 と。彼女にも思いを秘めた人がいるかも知れない。無理矢理嫁がせる事はしたくなかった。それなのに、男爵は娘を差し出す事を選んだのだ。



 顔合わせの日、俺は驚愕した。

 妻になるはずの彼女は、彼女の顔をした他人・・・・・・・・・だったのだ。つまり彼女は双子で、姉が俺の妻になり彼女は義理の妹になるのだ。

 俺が唖然としている間に顔合わせは終わり、俺はクラクラする頭を抱え部屋を出た。しかし、部屋の中からは長女であるカレンが叫んでいる。

  『愛の無いおじさんとの結婚なんてイヤよっ！何で私なのよ、ソフィアでいいじゃない』

 『カレン、グレイン様は素敵な方じゃない』

 『だったらソフィアでいいじゃない！！』

 『カレン、お前が長女として嫁ぐのが順当だろう。ラインハルト家に嫁ぐのはお前だ、いいなっ！！』

 そんなやりとりが聞こえ、俺は暗い気分になった。何とかしなければ。