悪役令嬢カタリナ・クレールの断罪はお断り(断罪編)

三色団子

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悪役令嬢カタリナ・クレールの新たな人生

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公爵令嬢カタリナ・クレールは、悪役令嬢としての断罪の日を冷静に迎えていた。
王太子アッシュから投げつけられる「公爵令嬢とは思えぬアリッサに対する悪行、この恥知らずめ!」という罵声も、学園生徒たちの冷たい視線も、彼女の心には届かない。すべては乙女ゲームの筋書き通り。彼女の「悪事」はヒロインの行動や言葉使いの貴族としての在り方を注意したものだったが曲解され、弁明は許されなかった。

​公爵令嬢の地位と豪華なドレスを剥奪されたカタリナは、粗末な木綿の服とわずかな金貨を握りしめ、王都を追われた。

カタリナは身分を隠し、自らをリナと名乗って、辺境の小さな港町へとたどり着く。
​「何か、貴族の娘にできることなんてあるかしら。」
​途方に暮れた彼女が見つけたのは、町の外れにある古びたパン屋だった。店主の老女は無愛想だったが、リナの真面目さと、貴族の教育で培われた「集中力」と「完璧さ」を認め、住み込みで雇い入れてくれた。

​慣れない重労働と火の熱さに耐える日々のリナ。令嬢だった頃の美しい指先は荒れ、顔には小麦粉がついていたが、焼きあがったパンの香りを嗅ぐたび、心は満たされていった。
ここでは、彼女の価値は家柄でも、婚約者でもなく、パンの味によって決まる。自分の力で生活を築く自由が今のカタリナを真に輝かせ始めた。

​一方、王都ではアッシュ王太子が後悔の念に囚われていた。カタリナを追放した後、公務が滞り始めたのだ。彼女が裏で処理していた複雑な政務や、貴族間の軋轢の調整が誰もできず、彼の負担は増す一方だった。

私は今まで何をしていたんだ!カタリナがいなくなった今、正常に考える事が出来る。

何故あんなにも考えの視野が狭かったのか?正常な判断が下せなく感情のままにカタリナを断罪してしまったのか、不思議に思う。

何故だかあんなにも必要としていたアリッサにも何も感じなかった、今では距離をおき友人以上の接触はしていない。

何故あんなにもアリッサに執着していたのか分からない。

​「カタリナは皆に対して傲慢だったが、王太子妃としての職務には誰よりも忠実だったではないか?」
​アッシュは、カタリナの「悪事」が、実は公務を円滑に進めるための厳格な配慮の裏返しだったことに気づき始めた。
彼は公務を放り出し、アッシュ自らカタリナの行方を探そうとした。

​半年後、地方視察と偽って港町を訪れたアッシュは、運命に導かれるようにパン屋の暖簾をくぐる。カウンターにいたのは、小麦粉で汚れたエプロンをつけ、生き生きとした表情で客と話す、リナと名乗るカタリナの姿だった。

​「いらっしゃいませ。本日のおすすめは、挽きたての全粒粉を使ったパンですよ、如何ですか。」

​カタリナは彼に気づきながらも、ただの客として淡々と接した。その完全に断ち切られた縁を前に、アッシュは動揺した。



アッシュは客が引いた頃カタリナに声を掛けた。

「久しぶりだなーーー変わりが無いようで安心した。」

カタリナは黙ってアッシュの話しを聞いていた。

​「カタァ…いや、ーーーリナ。私と一緒に王都に戻ってくれないか。君の潔白は私が証明する。もう一度、私の隣で…」
​アッシュの言葉を、リナは静かに遮った。

​「殿下、私はもう、あなたの世界には戻りません。今はここが私の居場所なのです。私のパンを待つ人がいるのです、だから殿下のお気持ちには応えられません。」

「カタリナーーー」アッシュは諦めきれなかった。

だが​その夜ーーー。

王都からカタリナの才覚を再び利用しようと企む貴族の刺客がパン屋を襲った。

夜中静まり返った静寂の中硝子が激しく割れる音が町中に響いた。
近くに宿を取っていたアッシュも駆けつけるがアッシュが剣を抜くよりも早く、リナのパンを愛する町の人々が集まり、彼女を守ってくれた。
​騒動が収まった後、リナはアッシュに向かって微笑んだ。

​「殿下、私を守ってくれたのは、あなたの権力ではありません。私のパンと、大好きなこの町の人々との繋がりです。」

​アッシュは、自分が彼女に与えることができるものは、もはや何もないことを悟った。

アッシュは王都に戻り、心に決めた。

「私は、王位継承権を放棄する」そしてカタリナと共に過ごそうーーー。

アッシュは父王に自分の胸の内の話し、王太子の座を降りた。王太子には弟のケルゲンとした。
ケルゲンも王太子の教養も勉強していたので引き続きも問題無く進んだ。


そして​数週間後ーーー。


​リナのパン屋の隣に、質素ながら二階建ての家が建てられた。

その新しい住人は、王太子の座を捨て平民となったアッシュでした。

​「カタリナ…僕もパンを焼くのが上手くなりたいんだ。君の隣で、一からやり直させてくれないだろうか?」

リナは目を細めて微笑んだ。

​「貴方の心がそうさせるならーーー。ただし、殿下ーーー、今日からあなたは下町のただのパン職人見習なのですよ、本当によろしいのですか?」

「あぁ、勿論だ。」アッシュもにこやかに微笑んだ。

「それから、カタリナ僕のことはアッシュと名前で言って欲しい。」

「はい、アッシュ。」とカタリナは嬉しそうに微笑んでくれた。

​悪役令嬢カタリナ・クレールの運命は、最高権力からの解放と隣にいるアッシュとの新たな人生のパートナーという形で、真の幸福へと書き換えられたのでした。

カタリナはアッシュを見て、断罪からも幸せがあるものだなぁ~とーーーカタリナはしみじみと感じていた。

        ーfinー
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感想 4

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みんなの感想(4件)

このえ
2025.12.17 このえ

う〜ん?
これは王子は婚約者を追放したら仕事がまわらなくなった
なので元婚約者を探す
押し付けるため
見つけたけど断られた
元婚約者を好きだとかふざけた事を抜かしながら片付けられない仕事を弟に押し付け逃げた

強制力があったとしてもこの王子
無能だよね
王様すでに見限っていたんじゃなかろか
だから自ら言ってくれて無駄が省けたと思っていたりして



解除
ライダーワン

婚約破棄でなくて、断罪でした。

解除
ライダーワン

婚約破棄したのに2人とも幸せになるというのも、いいですね。

解除

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