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正人の話 其の壱漆
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「ひぃいいい……」と言って身震いとともに月読尊は体を丸めてその場にうずくまった。
「く、くそっ、これは……」
「な……、なに今の……、体が……、震えて止まらない……」
「香奈子が……」
「か、香奈子……? 香奈子が……、どうしたって言うの……?」
「香奈子が……、死んだ」
「え……」
見上げると、空が無くなっていた。そこには宇宙があった。大気が渦を巻くようにして真空に吸い取られ、地球は直接宇宙と触れ合っていた。
「和也が……、目覚めるぞ……」
「な、なによそれ……。どう言うことなのよ……、香奈子が死んだ……? 嘘よ……。和也がどうしたって言うの……? ねえ、なんだか息苦しいわ」
「空を見て見ろよ」
「そ、空……?」そう言われて月読尊は空を見上げた。「な……、なんなのよこれ……」
今まで空気と言うフィルターを通して見上げていた星々が、今は突き刺すほどの輝きを放っている。平面に散りばめられていた星々は、立体的に浮かび、遠くとも個々が球状であることがわかる。
月読尊は思わず空に手を伸ばした。
「なんなのよこれ……、どうして宇宙がこんな近くにあるのよ……」
「それよりまずいっ!!! おい、八岐大蛇! 月読尊を守るぞ!!!」そう言うが早いか、隼人はのけぞるように空に咆哮を発すると、まるで天に上る龍のように、黒銀の大蛇へと姿を変えた。その姿は伊吹山で大地を叩き割った巨大な大蛇そのものだった。
そして七匹の八岐大蛇に目を向けると、「我が力となれ!!!」と声を上げ、大きく開いた口で八岐大蛇を飲み込んだ。
ねえ、何がどうなってるのよ。
日本が、無くなるんだ。
日本が? ねえ、暗くて見えないわ。ここはどこなの?
わりいな。お前を守るため、今だけ俺の一部になってもらった。
俺の一部? なによそれ。
お前を飲み込んだ。
私を、飲み込んだ? 食べたってこと?
あっはっは! ちょっと違うな。
わからないわ。
俺の体の中で、繋がってるんだ。
気味が悪いこと言うのね。
今だけ我慢しろよ。お前を守るためだ。
まあいいわ。でも説明してよ。どうしてそうなったの?
言ったじゃねえか。香奈子が死んだんだよ。
嘘よ。そんなの嘘よ。ねえ、和也は? 和也はどこにいるの?
あいつは天逆毎と戦っている。
天逆毎? 知ってるわ、その名前。
和也は負ける。
和也が負ける? どうして? どうしてそんなことがわかるのよ。
和也は、どれだけ強くなっても天逆毎を倒すことはできねえ。
どうして強くなっても倒せないのよ。
同時に天逆毎も強くなるからだ。
それって……。
天逆毎に勝つことも負けることもできねえんだ。
なんなのよそれ……。あなた、さっきからわからないわ。
天逆毎と須佐之男命は、一人の神なんだ。
一人の神?
一人の神が二つに分かれた。それが須佐之男命と天逆毎だ。
でも、それがどうしたって言うのよ。
一人を半分だけ殺すなんてことできるわけねえんだ。
じゃあ、和也はどうすればいいって言うのよ。
どうもできねえ。
天逆毎を倒すには、和也も倒さなければいけないってこと?
そうなるな。
そんな、駄目よ……。
ああ。俺もそれは嫌だ。
じゃあ……。
一つ方法があるとすれば……。
「ぐはあああああっ!!!」と言って俺は吹き飛ばされた拍子に、月読尊を吐き出した。
「はあ、はあ、はあ……」と俺は息をするのがやっとだった。体もその衝撃に耐えられず、もとの人の姿に戻っている。「ぎりぎりか……、終わったのか……。月読尊は……」俺は立ち上がり、月読尊のところに行こうとした……、が、足に力が入らず、その場に倒れてしまった。
「おいっ! ……月読尊、……生きてるか?」俺は精一杯声をあげて呼び掛けた。
「ええ……、大丈夫みたい……。どうなったの……?」
「どうなったって?」
「和也……、和也のことよ」
「自分で目を開けて見てみろよ」
月読尊は横になったまま動けないでいた。目も開けられない様子だ。何とか寝返りをうち、上を向いたが自由に体を動かせるようになるまで時間がかかった。そして……。
「嘘よ、そんな……」何とか目を開け、起き上がると、そう言った。「な、なんなのよこれ……、ねえ、誰か説明してよ……」
「誰もいねえよ。俺とお前以外な」
空には大気が戻ろうとしていた。
赤く、鱗雲のような雲が空一面に見えた。
その雲を透かして、やはりその向こうに宇宙が見えた。
そして大地は平らだった。
人の手によって作られた物は何一つなかった。
山は無く、ただどこまでも続く平らな土地と、はるか遠くで繋がる一直線の空が見えるだけだった。
それはまるで原始の地球を見ているようだった。
赤い空はうっすらと光を放っていたが、太陽はどこにも見えなかった。
「ここ、どこなの?」
「日本に決まってるじゃねえか」俺は動かない体を何とか起こし、胡坐をかいて座ったまま言った。
「嘘よ……、そんな、これじゃあ……、みんな死んじゃった……」
「ああ。化け物も、人間も、生きてる奴は誰も居ねえ。力のある神は残っているかも知れねえがな。俺とお前みたいに」
「和也……、和也は?」
「ああ。心配すんな。いまから探しに行くんだ」
「く、くそっ、これは……」
「な……、なに今の……、体が……、震えて止まらない……」
「香奈子が……」
「か、香奈子……? 香奈子が……、どうしたって言うの……?」
「香奈子が……、死んだ」
「え……」
見上げると、空が無くなっていた。そこには宇宙があった。大気が渦を巻くようにして真空に吸い取られ、地球は直接宇宙と触れ合っていた。
「和也が……、目覚めるぞ……」
「な、なによそれ……。どう言うことなのよ……、香奈子が死んだ……? 嘘よ……。和也がどうしたって言うの……? ねえ、なんだか息苦しいわ」
「空を見て見ろよ」
「そ、空……?」そう言われて月読尊は空を見上げた。「な……、なんなのよこれ……」
今まで空気と言うフィルターを通して見上げていた星々が、今は突き刺すほどの輝きを放っている。平面に散りばめられていた星々は、立体的に浮かび、遠くとも個々が球状であることがわかる。
月読尊は思わず空に手を伸ばした。
「なんなのよこれ……、どうして宇宙がこんな近くにあるのよ……」
「それよりまずいっ!!! おい、八岐大蛇! 月読尊を守るぞ!!!」そう言うが早いか、隼人はのけぞるように空に咆哮を発すると、まるで天に上る龍のように、黒銀の大蛇へと姿を変えた。その姿は伊吹山で大地を叩き割った巨大な大蛇そのものだった。
そして七匹の八岐大蛇に目を向けると、「我が力となれ!!!」と声を上げ、大きく開いた口で八岐大蛇を飲み込んだ。
ねえ、何がどうなってるのよ。
日本が、無くなるんだ。
日本が? ねえ、暗くて見えないわ。ここはどこなの?
わりいな。お前を守るため、今だけ俺の一部になってもらった。
俺の一部? なによそれ。
お前を飲み込んだ。
私を、飲み込んだ? 食べたってこと?
あっはっは! ちょっと違うな。
わからないわ。
俺の体の中で、繋がってるんだ。
気味が悪いこと言うのね。
今だけ我慢しろよ。お前を守るためだ。
まあいいわ。でも説明してよ。どうしてそうなったの?
言ったじゃねえか。香奈子が死んだんだよ。
嘘よ。そんなの嘘よ。ねえ、和也は? 和也はどこにいるの?
あいつは天逆毎と戦っている。
天逆毎? 知ってるわ、その名前。
和也は負ける。
和也が負ける? どうして? どうしてそんなことがわかるのよ。
和也は、どれだけ強くなっても天逆毎を倒すことはできねえ。
どうして強くなっても倒せないのよ。
同時に天逆毎も強くなるからだ。
それって……。
天逆毎に勝つことも負けることもできねえんだ。
なんなのよそれ……。あなた、さっきからわからないわ。
天逆毎と須佐之男命は、一人の神なんだ。
一人の神?
一人の神が二つに分かれた。それが須佐之男命と天逆毎だ。
でも、それがどうしたって言うのよ。
一人を半分だけ殺すなんてことできるわけねえんだ。
じゃあ、和也はどうすればいいって言うのよ。
どうもできねえ。
天逆毎を倒すには、和也も倒さなければいけないってこと?
そうなるな。
そんな、駄目よ……。
ああ。俺もそれは嫌だ。
じゃあ……。
一つ方法があるとすれば……。
「ぐはあああああっ!!!」と言って俺は吹き飛ばされた拍子に、月読尊を吐き出した。
「はあ、はあ、はあ……」と俺は息をするのがやっとだった。体もその衝撃に耐えられず、もとの人の姿に戻っている。「ぎりぎりか……、終わったのか……。月読尊は……」俺は立ち上がり、月読尊のところに行こうとした……、が、足に力が入らず、その場に倒れてしまった。
「おいっ! ……月読尊、……生きてるか?」俺は精一杯声をあげて呼び掛けた。
「ええ……、大丈夫みたい……。どうなったの……?」
「どうなったって?」
「和也……、和也のことよ」
「自分で目を開けて見てみろよ」
月読尊は横になったまま動けないでいた。目も開けられない様子だ。何とか寝返りをうち、上を向いたが自由に体を動かせるようになるまで時間がかかった。そして……。
「嘘よ、そんな……」何とか目を開け、起き上がると、そう言った。「な、なんなのよこれ……、ねえ、誰か説明してよ……」
「誰もいねえよ。俺とお前以外な」
空には大気が戻ろうとしていた。
赤く、鱗雲のような雲が空一面に見えた。
その雲を透かして、やはりその向こうに宇宙が見えた。
そして大地は平らだった。
人の手によって作られた物は何一つなかった。
山は無く、ただどこまでも続く平らな土地と、はるか遠くで繋がる一直線の空が見えるだけだった。
それはまるで原始の地球を見ているようだった。
赤い空はうっすらと光を放っていたが、太陽はどこにも見えなかった。
「ここ、どこなの?」
「日本に決まってるじゃねえか」俺は動かない体を何とか起こし、胡坐をかいて座ったまま言った。
「嘘よ……、そんな、これじゃあ……、みんな死んじゃった……」
「ああ。化け物も、人間も、生きてる奴は誰も居ねえ。力のある神は残っているかも知れねえがな。俺とお前みたいに」
「和也……、和也は?」
「ああ。心配すんな。いまから探しに行くんだ」
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