私との婚約を破棄して、妹と結婚……? 考え直してください。絶対後悔しますよ?

冬吹せいら

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調子に乗る妹

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家に着くと、大騒ぎだった。
メイドたちが、あっちへこっちへ、忙しく走り回っている。

私は一人、部屋へと向かった。

「あら、お姉様」

部屋の前に、ヒーナが立っていた。
どこか誇らしげな顔をしている。
まだ少しだけ、体に光が残っていた。

「ヒーナ……。おめでとう。妹が聖女になるだなんて、とても嬉しいことだわ」
「……本当に、そう思ってますか?」
「……本当よ」

私は精一杯、優しい微笑みを浮かべてみせた。
だけど、ヒーナは何かを疑うような表情をしている。

「負けず嫌いのお姉様が、こんなにもあっさりと祝福してくれるだなんて……。意外ですわ」
「負けず嫌い……。そうね。でも、聖女として目覚めたことは、手放しに喜ぶべき出来事だと、私は思うわよ」
「そうでしょうか。なんだかお姉様、無理をしているように見えますけど」
「いいえ。そんなことはないわ。ごめんなさい。部屋で休んでもいいかしら」
「待ってください」

ヒーナに、手を掴まれた。
その力は……。昨日までのヒーナとは違う。
聖女であるという自信だろうか。

「なにかしら」
「先ほど、教会でお父様が話していた件ですが」

ギルガム様が、私との婚約を破棄し、ヒーナと結婚したいと思っている。
そういう話だ。

「私、断ろうと思ってます」
「……え?」
「だって、惨めじゃないですか。聖女として目覚めた私が、婚約者まで奪ってしまうだなんて」

ヒーナが、憎たらしく笑った。
……この子、どういうつもり?

「今までお姉様は、いかなることであっても、私より優れていたし、勝ってきた……。ですが、今日からそれは、逆転するでしょう。わかるのです。力が漲ってくるのが」
「ヒーナっ、痛い……」

ヒーナが、私の腕を、まるで潰すかのように、力強く握ってきた。

「わかるでしょう? あれだけ毎日、剣技などで鍛えているお姉様より……。今の私の方が、力が強いのです」
「……どうやら、そうみたいね」
「聖女となったことで、身体能力が向上したのでしょう……」

ようやく離された手には、真っ赤な跡が付いていた。
男性に握られたとしても、ここまでにはならないだろう。

「もちろん、魔法の腕も、私の方が上だと思います。試しに……。そうですね。あの木を見てください」

ヒーナが指を差したのは、中庭に生えている大きな木だ。

「何をするつもり……?」
「ふふっ」

少し笑った後、木に向かって、手を伸ばした。
すると……。

木に、縦に亀裂が入った。
そして、真っ二つに割れてしまったのだ。

……技術もさることながら、力強さもある。
私は、かなり魔法に自信を持っているけど……。あんなことはできない。

「どう? お姉様。これが今の私なの……」
「……あなたの力はわかったわ」
「これで、ギルガム様まで奪ってしまったら……。お姉様、生きてる価値なんて、なくなってしまうわよね?」
「随分、大きな口を叩くようになったのね。聖女として目覚めて、まだ数時間だというのに」
「十分な時間です。自分が優れた人間の仲間入りしたと、気が付くためにはね」
「……聖女は、そのようなことは言わないわ。常に清い心を持って、民を救い、祈りを――」
「知りません。そんなこと。この力をどのように使おうが、私の自由です」

ヒーナは、元々卑屈なところがあったけど。
力を持ってしまったせいで、より一層、ねじ曲がってしまったのだろうか。

……今のお母様が、変わってしまった時のことを思い出す。
さすが、親子といったところかもしれない。

「……私やあなたが、何を言おうと、ギルガム様と私の婚約は、破棄されますよ。なかったことにすらなるわ。もう、疲れてしまったから、部屋で休ませてちょうだい」
「ふふっ……。そうね。おやすみなさい」

ヒーナに嘲笑われながら、私はようやく、部屋に入ることができた。
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