私との婚約を破棄して、妹と結婚……? 考え直してください。絶対後悔しますよ?

冬吹せいら

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劣等感 

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勝った……。

勝った勝った! お姉様に勝った!

私はその場で、小躍りしたい気分だった。
しかし、それはあまりにみっともないことなので、自重する。


お姉様は、私より、何もかもが優れていた。
きっと、遺伝なのだろう。
死んでしまった、お姉様のお母様は、優秀な魔法使いだったそうなのだ。

剣技に長けているお父様の血も、同時に引き継いで、とにかくできないことなんてない。完璧な人。

それが、ミュシー・モナード。

私はずっと、劣等感を抱いていた。
何をするにしても、お姉様と比べられてしまう。

学園でも、トップクラスの成績を残し続けているのに、ミュシーはもっとすごかった……。なんて、常に言われてきたのだ。

とにかく悔しかった。
それに、お姉様も、負けず嫌いなせいで、ほとんど私を褒めてくれなかった。

どれだけ努力して、結果を出しても、それが普通だ。あなたは別に、特別優れた何かがあるわけじゃない。

そう言って、より高いレベルを、私に求めてくる。

それがどれだけ、日々、プレッシャーだったことか……。

だけど、今日からは、私がお姉様より、何もかも上。
侯爵家の令息、ギルガム様が、元々こうなる前から、私に好意を持っていたというのは、かなり予想外だったけど……。

もしかしたら、神様が、全ての運命を、調和させてくれたのかもしれない。
今までの人生が、あまりに恵まれなさすぎたから、ご褒美をくれたのだろうか。

「ヒーナ! ギルガム様がいらっしゃったわ!」
「はいっ! 今向かいます!」

いよいよか……。

私は、気合を入れ直して、歩きだした。

☆ ☆ ☆

「……はい。これでよろしいですね?」
「あぁ。ありがとうミュシー」

婚約をなかったことにするためにも、どうやら手続きが必要なようで。

部屋で休んでいた私は、二人のいる部屋に呼び出された。

手続きと言っても、書類にサインするだけだ。
さっさと済ませて、私は部屋に戻ることにした。

二人も……。私を引き留めない。
それどころか、見つめ合っている。
もう少しで、キスさえしてしまいそうな勢いだ。

……気が早いというか、なんというか。

自分の元婚約者と、血の繋がっていない妹のキスなんて、見たいわけがない。
早く部屋を出ようと、ドアに手を伸ばしたところで……。

お母様の言葉を、また思い出した。

二人の、魂の相性……。
私とギルガム様の相性は、まぁまぁだった。
可もなく不可もなく。

お互いの顔を見つめ合うのに夢中で、私がまだ、部屋を出ていないことに気が付かない二人に向かって……。私は、手を伸ばした。

そして、魂の相性を確認する。

「えっ……」

思わず、声が漏れてしまった。

「なっ、なんだミュシー。まだいたのかい」
「お姉様、悪趣味ですわよ?」
「……この結婚は、今すぐやめるべきです」
「は? 君は一体なにを」
「とんでもない災いが起きます。二人の魂の相性は……最悪です」
「魂? 相性?」
「ギルガム様? 少々お待ちくださいね?」
「あっ、あぁ……」

にこやかな笑みを、ギルガム様に向けたあと、ヒーナがこちらに向かってきた。

「……ちょっと、外で。ね?」

さきほどとは打って変わって、怖い顔をしながら、私を部屋の外に追い出した。
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