私との婚約を破棄して、妹と結婚……? 考え直してください。絶対後悔しますよ?

冬吹せいら

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異変

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「驚きました……」

帰りの馬車は、リアスと一緒だった。

「私もです……。しかし、あれほどの力を、何のデメリットも無しに、使いこなせるとは思えません。本人は、聖女の力だと言っていましたが」
「それに関しては、私も同感です。ヒーナ様は、無理をしているのかと思っていたのですが……。そのような様子も無く」

今頃、ギルガム様と一緒の馬車で、ワインでも飲んでいるのだろう。

「むしろ、ギルガム様の方が、なんだか疲れたご様子でした」
「ギルガム様が?」
「はい。息切れするのだとか……。おそらく、ヒーナ様が、一人で森に向かったことで、強く心配した影響かと」
「……なるほど」

私は頷きながら……。

どうやら、その辺りにヒントがありそうだと睨んだ。

☆ ☆ ☆

「ギルガム様。大丈夫ですか?」
「あ、あぁ……。げほっ! げほっ!」

馬車の中で、私は慌てていた。

ギルガム様が、突然血を吐いてしまったのだ。

回復魔法を使っても、全然効果が無い。
それどころか、どんどん悪化していく。

「すぐに救護隊に連絡します。一旦馬車を止めましょう」
「いや、そこまでじゃないさ……。げふっ!」
「そんな。こんなに血が出ているのに」
「大丈夫だよ……。せっかく、あれだけの勝利を収めたんだから。水を差すわけにはいかないさ」

ギルガム様の笑顔が、とても頼もしかった。
きっと、この人は大丈夫だ。

『ヒーナ。お願い。私の話を信じて?』

……こんな時に、余計な話を思い出してしまった。

何が相性最悪よ。
ありえない……。絶対に。

「もう一度、回復魔法を……」
「だ、大丈夫だ。ヒーナ。むしろ、魔法をかけた方が、痛みが増す感覚がある。今はきっと、安静にする方が大事だ」
「回復魔法ですよ? 逆効果になることなどありえません。このままでは、ギルガム様の命が……」
「信じてくれヒーナ。僕は、こんなことで死ぬような男じゃないさ」
「……わかりました」

想像したくないが……。
きっと聖女なら、死んだ人を蘇らせる魔法だって、使えると思う。

……そんな魔法を使うことができれば、私はいよいよ、国民に認められることになるだろう。

ミュシーの妹ではなく、ヒーナ・モナードとして。

「ヒーナ……。少し眠るよ。おやすみ」
「はい……。ゆっくりと、お休みになってください」

ワインでも、一緒に飲もうと思ったのに。
まさか、こんなことになるなんて。

まぁ、家に戻ってから、いくらでも一緒に飲めばいいわよね。

今は、一人で頂くことにする。

揺れる馬車の中で、魔法を使い、なんとかワインが零れないように……。

「がふぅっ!」
「ギ、ギルガム様!?」
「大丈夫……。今のは、口に残っていた血だよ」
「そうですか……」

……赤いワインを持ってきたのは、失敗だった。

今は、やめておこう。

しばらくして、ギルガム様が、小さな寝息を立て始めた。

私は、そんなギルガム様の頭を、ゆっくりと撫でながら、幸せを噛みしめている。
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