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戦わずして――。
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公爵家が権力を持った原因――。
一番は、国が贔屓をし過ぎたからです。
そのせいで民は飢え、一部の貴族だけが潤う国となってしましました。
王宮に辿り着いた私たちは、騎士たちをあっさりと倒し、王室へと押し入ります。
「よく来たな――。リラよ」
国王が、余裕の面持ちで私たちを出迎えました。
側近も、王子すらもいないことに、私は違和感を覚えます。
私の表情を見て、国王は尋ねられるまでもなく答え始めました。
「そっちは二人だが、こっちは一人だ。全員他の国に逃げてもらったわい」
「……逃げてもらった?」
「そうだ。王家の血を途絶えさせるわけにはいかんからなぁ。公爵家も侯爵家も皆、避難させておる。お前たちの敵は、もうここにしかおらんよ」
戦う前から……。全て終わっていたということでしょうか。
……いえ。そんなはずはありません。
「ウィン王子よ。よくぞ参った。私は降伏する。この国はお前たちにやろう。だが……。いずれ私の血を受け継いだ者たちが、ここを襲うであろうことは覚悟しておけ」
「……そうはさせません」
ウィン様が、空に手をかざしました。
すると、大きな地響きが――。
外から、叫び声が聞こえます。
様子を確認すると、屋敷一つ分ほどの穴が空いており……。
そこに、敵と思わしき面々が、全て入れられていました。
バリアを張られ、外には出られないようになっています。
「き、貴様……これは一体……」
「リラ様にも黙っていましたが……。僕は、かつて闇を裁いた小さな神の力を受け継いでいるのです」
「小さな神……?」
「はい。その力は、リラ様と魔力を合わせたことで覚醒し、このようなことを可能にしたのです」
「くっ……。そんなことがあってたまるか!」
ウィン様が指を弾くと……。
国王までもが、その穴の中に閉じ込められてしまいました。
「彼らはあと少ししたら……。眠りにつきます。外から市民に眺められる、負の遺産となるのです」
叫び声が聞こえます。
ここから出してくれ!
僕が悪かった!
私だけでも良いから助けなさい!
……誰一人として、反省する者はいません。
「これで――戦いは終わったのですね」
「いえ。まだです」
「え?」
ウィン様は、泣きそうな表情をしています。
なぜでしょうか。喜ばしい時間のはずなのに。
「あの穴に入れるべき人物の中で――。判断に困った方が、一人いらっしゃいます」
「どなたですか?」
「今、ここに呼び寄せます」
ウィン様が、再び指を弾くと……。
先ほどまで、国王が座っていた玉座に――。
我が母が、座っていたのです。
一番は、国が贔屓をし過ぎたからです。
そのせいで民は飢え、一部の貴族だけが潤う国となってしましました。
王宮に辿り着いた私たちは、騎士たちをあっさりと倒し、王室へと押し入ります。
「よく来たな――。リラよ」
国王が、余裕の面持ちで私たちを出迎えました。
側近も、王子すらもいないことに、私は違和感を覚えます。
私の表情を見て、国王は尋ねられるまでもなく答え始めました。
「そっちは二人だが、こっちは一人だ。全員他の国に逃げてもらったわい」
「……逃げてもらった?」
「そうだ。王家の血を途絶えさせるわけにはいかんからなぁ。公爵家も侯爵家も皆、避難させておる。お前たちの敵は、もうここにしかおらんよ」
戦う前から……。全て終わっていたということでしょうか。
……いえ。そんなはずはありません。
「ウィン王子よ。よくぞ参った。私は降伏する。この国はお前たちにやろう。だが……。いずれ私の血を受け継いだ者たちが、ここを襲うであろうことは覚悟しておけ」
「……そうはさせません」
ウィン様が、空に手をかざしました。
すると、大きな地響きが――。
外から、叫び声が聞こえます。
様子を確認すると、屋敷一つ分ほどの穴が空いており……。
そこに、敵と思わしき面々が、全て入れられていました。
バリアを張られ、外には出られないようになっています。
「き、貴様……これは一体……」
「リラ様にも黙っていましたが……。僕は、かつて闇を裁いた小さな神の力を受け継いでいるのです」
「小さな神……?」
「はい。その力は、リラ様と魔力を合わせたことで覚醒し、このようなことを可能にしたのです」
「くっ……。そんなことがあってたまるか!」
ウィン様が指を弾くと……。
国王までもが、その穴の中に閉じ込められてしまいました。
「彼らはあと少ししたら……。眠りにつきます。外から市民に眺められる、負の遺産となるのです」
叫び声が聞こえます。
ここから出してくれ!
僕が悪かった!
私だけでも良いから助けなさい!
……誰一人として、反省する者はいません。
「これで――戦いは終わったのですね」
「いえ。まだです」
「え?」
ウィン様は、泣きそうな表情をしています。
なぜでしょうか。喜ばしい時間のはずなのに。
「あの穴に入れるべき人物の中で――。判断に困った方が、一人いらっしゃいます」
「どなたですか?」
「今、ここに呼び寄せます」
ウィン様が、再び指を弾くと……。
先ほどまで、国王が座っていた玉座に――。
我が母が、座っていたのです。
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