婚約破棄、国外追放。もうダメかと思いましたが、逃げた先の国の王子と関係が進みました。

冬吹せいら

文字の大きさ
14 / 14

隠されていた真実。そして和解――。

しおりを挟む
「お母様――どうしてですか?」
「ごめんなさいリラ。全て私のせいなの」

 私はウィン様の顔を見つめます。
 しかし、ウィン様は首を横に振りました。
 母から直接聞けと――そうおっしゃるのです。

 私は震える足で、母の元へ近づいていきます。

「……説明をしてくださいますか?」
「事業に失敗した私は――あなたを売ることに決めたの」
「えっ――」
「悪い噂を流したのは私よ。それであなたが公爵家のペットになれば、もっとたくさん金を渡してやると言われて――」

 信じられないことでした。

 つまり――。
 この一連の出来事は、母の行動をきっかけとして始まったということなのですから。

「ごめんなさい……。私もあの穴に入って、永遠に眠ることにするわ。あなたに合わせる顔なんてないもの」

 母が立ち上がり、ウィン様の元へと向かいます。

「どうか、私をあの中に――」
「待ってください!」

 私は母に抱き着きました。

「……私を売り飛ばそうとしたのは、許せないことです。しかし、父がいなくなり、私の家族はあなただけ――。どうか、行かないでください。私の傍にいてほしいのです」
「リラ……」

 母が、私を優しく抱きしめ返してくれました。

「……改めて、初めましてお母様。僕はリラ様と――結婚をする予定……いや、確定した未来なので、予定というのはおかしいでしょうか。とにかく、リラ様の隣にいることを願うウィンと申します」
「ウィン王子……。ありがとうございます。私の娘を、たくさん愛してあげてください」

 泣きながら、私の背中を叩く母に――。
 私も涙を流してしまいました。

 全て、母が原因で起きたこと。
 それでも、ウィン様と出会えたのは、母のおかげなのです。

 であれば……。
 誰を恨む必要もありません。
 私は家族を愛します。

「涙はこれまでにしておきましょう。この国から、権力者が抜け落ちてしまいました。新たな王女となるリラ様……。そして、僕はこの国に越して来ねばなりませんね」
「……私が、王女?」
「そうですよ。その国で生まれた人間しか、一番高い地位には付けないのが通常の決まりです。リラ様なら、きっと誰からも愛される王女様になるはずです」
「……母である私も、保証するわ」
「お母様……」

 これでやっと……。全てが終わるのでしょう。

 三人で、身を寄せ合うようにして、抱きしめ合います。

「これからもよろしくお願いします……。家族として、妻として、娘として……」
「こちらこそ。リラ様。お母様。どうが末永く仲良くしてください」
「……もちろんです。皆を愛し、過去の罪を償うこととします」

 こうして私たちは――家族になりました。

 穏やかな光が外から差し込んでくるような、非常に天気の良い日のことだったのです。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

聖女の力は使いたくありません!

三谷朱花
恋愛
目の前に並ぶ、婚約者と、気弱そうに隣に立つ義理の姉の姿に、私はめまいを覚えた。 ここは、私がヒロインの舞台じゃなかったの? 昨日までは、これまでの人生を逆転させて、ヒロインになりあがった自分を自分で褒めていたのに! どうしてこうなったのか、誰か教えて! ※アルファポリスのみの公開です。

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

悪役令嬢の私、計画通り追放されました ~無能な婚約者と傾国の未来を捨てて、隣国で大商人になります~

希羽
恋愛
​「ええ、喜んで国を去りましょう。――全て、私の計算通りですわ」 ​才色兼備と謳われた公爵令嬢セラフィーナは、卒業パーティーの場で、婚約者である王子から婚約破棄を突きつけられる。聖女を虐げた「悪役令嬢」として、満座の中で断罪される彼女。 ​しかし、その顔に悲壮感はない。むしろ、彼女は内心でほくそ笑んでいた――『計画通り』と。 ​無能な婚約者と、沈みゆく国の未来をとうに見限っていた彼女にとって、自ら悪役の汚名を着て国を追われることこそが、完璧なシナリオだったのだ。 ​莫大な手切れ金を手に、自由都市で商人『セーラ』として第二の人生を歩み始めた彼女。その類まれなる才覚は、やがて大陸の経済を揺るがすほどの渦を巻き起こしていく。 ​一方、有能な彼女を失った祖国は坂道を転がるように没落。愚かな元婚約者たちが、彼女の真価に気づき後悔した時、物語は最高のカタルシスを迎える――。

婚約破棄を求められました。私は嬉しいですが、貴方はそれでいいのですね?

ゆるり
恋愛
アリシエラは聖女であり、婚約者と結婚して王太子妃になる筈だった。しかし、ある少女の登場により、未来が狂いだす。婚約破棄を求める彼にアリシエラは答えた。「はい、喜んで」と。

逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子

ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。 (その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!) 期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。

悪役令嬢は断罪されない

竜鳴躍
恋愛
卒業パーティの日。 王太子マクシミリアン=フォン=レッドキングダムは、婚約者である公爵令嬢のミレニア=ブルー=メロディア公爵令嬢の前に立つ。 私は、ミレニア様とお友達の地味で平凡な伯爵令嬢。ミレニアさまが悪役令嬢ですって?ひどいわ、ミレニアさまはそんな方ではないのに!! だが彼は、悪役令嬢を断罪ーーーーーーーーーーしなかった。 おや?王太子と悪役令嬢の様子がおかしいようです。 2021.8.14 順位が上がってきて驚いでいます。うれしいです。ありがとうございます! →続編作りました。ミレニアと騎士団長の娘と王太子とマリーの息子のお話です。 https://www.alphapolis.co.jp/mypage/content/detail/114529751 →王太子とマリーの息子とミレニアと騎士団長の娘の話 https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/449536459

婚約者を奪われるのは運命ですか?

ぽんぽこ狸
恋愛
 転生者であるエリアナは、婚約者のカイルと聖女ベルティーナが仲睦まじげに横並びで座っている様子に表情を硬くしていた。  そしてカイルは、エリアナが今までカイルに指一本触れさせなかったことを引き合いに婚約破棄を申し出てきた。  終始イチャイチャしている彼らを腹立たしく思いながらも、了承できないと伝えると「ヤれない女には意味がない」ときっぱり言われ、エリアナは産まれて十五年寄り添ってきた婚約者を失うことになった。  自身の屋敷に帰ると、転生者であるエリアナをよく思っていない兄に絡まれ、感情のままに荷物を纏めて従者たちと屋敷を出た。  頭の中には「こうなる運命だったのよ」というベルティーナの言葉が反芻される。  そう言われてしまうと、エリアナには”やはり”そうなのかと思ってしまう理由があったのだった。  こちらの作品は第18回恋愛小説大賞にエントリーさせていただいております。よろしければ投票ボタンをぽちっと押していただけますと、大変うれしいです。

お前との婚約は、ここで破棄する!

ねむたん
恋愛
「公爵令嬢レティシア・フォン・エーデルシュタイン! お前との婚約は、ここで破棄する!」  華やかな舞踏会の中心で、第三王子アレクシス・ローゼンベルクがそう高らかに宣言した。  一瞬の静寂の後、会場がどよめく。  私は心の中でため息をついた。

処理中です...