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第三章:新しい生活
3-24仇討ち
しおりを挟む正直少し舐めていた。
私のチートスキル「消し去る」とルラのチートスキル「最強」が有ればこんな奴倒せると思っていた。
しかしこいつは目にも止まらない速さで攻撃を繰り返して来る。
振るう大剣は私たちを容赦なく切り刻もうとする。
「くぅっ! これじゃぁ集中できない、『消し去る』が使えない!!」
「うわっ! このっ!! あたしは防御も『最強』!!」
がぎぃーんっ!!
たまらずルラは防御に徹する。
結果ルラに抱きかかえられながら防戦一方になってしまう。
私のチートスキル「消し去る」には欠点があった。
対象物に対して明確に意識して「消し去る」ことを念じなければいけない。
しかも消し去るを決定して安全の為もう一度「Yes」か「No」を確認する必要がある。
あの駄女神、こんな所にだけはちゃんとした仕様をしていた。
「このっ! お姉ちゃんはやらせない!!」
がぎぃーんっ!!
連続で切り込んでくる大剣をルラは弾き飛ばす。
ルラは「最強」のスキルで防御を「最強」にしているから攻撃には「最強」が適用されていない。
それがルラのチートスキル「最強」の欠点だ。
確かに「最強」を何かにするか決めていればルラはこの世界でとても強い。
多分何に対しても「最強」でいられるだろう。
ただし、それはどれか一つに対してだ。
攻撃に「最強」を使えば攻撃にしか最強になれない。
今みたいに私を守りながら防御に徹すると防御に対してしか「最強」になれない。
だからルラがこいつと戦うには私が邪魔になる。
「ルラ、私の事はいいからこいつと戦って! 自分で何とかするから!!」
「駄目だよ! こいつ何故かお姉ちゃんを狙っている、あたしよりお姉ちゃんを攻撃している!!」
迫り来る大剣をルラは「最強」スキルで防御力を上げ、あの柔肌の腕ですべて弾き飛ばしている。
私はその大剣を消し去ろうとするも集中できずチートスキルが使えない。
「くっ! どうすれば……」
がんっ!
ががんっ!!
確かにルラから離れたらあんな早い剣の攻撃を私がよける事は出来ない。
かと言ってこれだけ動き回り揺さぶられると集中なんて出来ないから私のスキルも使えない……
と、向こうに見た事のある靴が目に入る。
それは既に干からび始めていてるものだったが私にあの人を思い出させる。
「トランさんっ!!」
それはトランさんの右足だった。
濃い緑色のズボンでくるぶしより上まであるハーフブーツ。
エルフの村ではよく見かけた格好だけどトランさんのブーツは赤い線が入っている。
―― 赤の線は幸運を招くって言われているんだよ ――
以前トランさんがそんな事を言っていた。
だからあの切られて転がっている右足は間違いなくトランさんの物だ。
「トランさんっ!! ちっくしょぉおおおぉぉぅううううぅぅぅっ!!」
ルラに抱えられ逃げ回っている私は大声を上げながら心の奥底から湧き上がる気持ちを使って精神の精霊を呼び出す。
「闇の精霊よ、少しでいいから力を貸して!! あいつを、ほんの少しの時間で好いから闇で覆ってッ!!!!」
使った事の無い、それでも私のその強い思いに闇の精霊が反応してくれた。
体からぐっと魔力が引き抜かれあいつと私たちの間に真っ黒な霧のようなモノが現れる。
それに銀色の鎧は突込み剣を振るうが霧のようなモノは奴に張り付いてはがれない。
そこに隙が生まれた。
「トランさんの仇っ! お前の脚を『消し去る』!!」
大好きなトランさん。
その大切な人の脚を切り落とし、死に至らしめた銀色の鎧。
私はトランさんと同じく奴の右足を「消し去る」。
ガシャンっ!!
いきなり右足が消えてしまい、銀の鎧はその場に倒れる。
そしてそれと同時にあの黒い霧も消えてしまうが奴は先ほどの怒涛の攻撃が出来なくなった。
「ルラ、今よっ!!」
「分かったお姉ちゃん!! あたしは『最強』ぉっ!!」
どんっ!!
ルラはそう叫び床を蹴り割り銀の鎧に突っこんでい行く。
勿論あいつも右足が無くなっても立ち上がりルラに剣を叩き込むけどそのスピードは遅くなっている。
軽くその剣を避けルラは拳を銀の鎧に叩き込む。
どがっ!
「うぉおおおおおぉぉぉぉぉっ!!」
どがっ!
どがどがっ!!
どがどがどがどがぁっ!!!!
その拳は一発では無くまるでマシンガンのように連続で叩き込まれる。
「これはみんなの分、これはロナンさんの分、これはトランさんの分!」
ボコボコに殴られる銀の鎧はミスリルとか言う金属で出来ていたらしいけどその表面をどんどんと凸凹に変えて行く。
それでもルラの拳は止まらない。
何度も何度も銀の鎧を叩いてその形を変えて行く。
ルラの凄まじい攻撃に手に持つ大剣も手放し防御も出来ずに銀の鎧は殴られ踊らされる。
そしてルラは大きく振りかぶり強烈な一撃を加える。
「そしてこれはお姉ちゃんとあたしの分だ!!」
バキッ!!
最後に大きく殴り銀の鎧を壁まで吹き飛ばしてしまう。
どがっ!
ずずずぅ……
ガシャンっ!
「はぁはぁはぁ、お姉ちゃん!」
ルラはひとしきり銀の鎧を殴り、肩で息をつきながら私に振り返る。
正直初めて使った闇の精霊にかなりの魔力を持っていかれてつらい。
でもルラに肩を借りながら立ち上がりボコボコになっている銀色の鎧の前にまで連れて行ってもらう。
銀の鎧はそれでもぎぎぎぃっと音を立てながら起き上がろうとするも、ルラの攻撃で形が変わってしまいうまく起き上がれない。
「こんな奴にトランさんたちが…… もういい、お前は私の大切なものを奪った。二度と私の前に現れるな! 『消し去る』!!」
私がそう言いながら手を向けチートスキル「消し去る」を使うと最初から何も無かったかのように銀の鎧はその場から消え去った。
私とルラはしばしその何もいなくなった、壁にひびの入ったその場所をただ眺める。
「お姉ちゃん?」
「……ぅぅうううう、やっと、やっとトランさんの仇が取れた。トランさんの……」
そう言いながら私はまたその場でルラに抱き着きながら大泣きを始めるのだった。
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