腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~

さいとう みさき

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第三章:新しい生活

3-23儀式の間

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 そこは今までの洞窟と雰囲気が全く違っていた。
 岩の隠し扉を通り抜けるといきなり壁や天井、床も石造りの人の手が加えられたしっかりしたものになっていた。
 そして異様な雰囲気を醸し出している。


「罠を全て『消し去る』!!」


 私はそう言いながら見える範疇の罠を全て消し去る。
 私がそう念じると同時に罠が消えて行く。
 魔法の罠などは普通見つける事すら難しいらしいけど、私のチートスキル「消し去る」の前にはどんな罠でもあっさりと消え去った。


「もう大丈夫よ。罠の類は全て消し去ったわ。魔法の罠も、落とし穴も釣り天井も全て消えたわ……」

「そんな罠まであったんだ……」


 頷き私とルラはその廊下を歩いてゆく。
 トランさんたちはここを通るのもきっと苦労をしただろう。
 
 特に魔法の罠は足を踏み入れないと感知できないものがある。
 それは脚を入れれば発動するって事で実際に避ける方法がほとんど無いって事でもある。
 罠が有った場所を見ながら進むとルラが警戒の声を上げる。 


「お姉ちゃん、来た!」


 そんな事を思いながら前を進むと左右の壁際に半分埋まっていた石像が動き出した。
 悪魔か何かの姿形をしたそれは動き出すと表面の皮膚の色まで変わってまるで生きているかのように動き出し私たちに襲いかかる。


「あたしは『最強』! 行くよ!!」


 どんっ!


 ルラはそう言ってその場から大きく飛び込む。
 悪魔の姿をした怪物は鋭い爪でルラを捕らえようとするけどルラはその爪を避けしゃがんで中国拳法の様な動きで足元を蹴り転ばせる。


「はぁッ!!」


 気合一閃、ルラは拳を倒れた悪魔の姿をした怪物のお腹に決めるとまるで岩が割れるかのように砕け飛び散った。


 ぼこっ!
 ばっきゃーんっ!!


「まずは一つ!」


 すぐに立ち上がり、言いながらルラはもう一体壁から出てきた悪魔の姿をした怪物の爪を何と腕で受け止める。

「あたしは守りも『最強』!!」


 がぎーんっ!!


 ルラの柔肌にどう考えても切り裂かれそうなその爪はまるで金属か何かにぶつかったような音を立てて受け止められる。
 それを見て私は悲鳴に近い声を上げる。


「ルラっ!?」

「大丈夫、ちっとも痛くない! あたしは『最強』なんだから!!」


 言いながらルラは悪魔の姿をした怪物のお腹を蹴り飛ばすと通路の奥にまで吹き飛ばし壁にぶつけて粉々にする。


 バキッ!!

 どがっ!
 ばっきゃーんっ!!

 振り向き、ルラは私に顔を向ける。

「ふう、おわった~」

「ルラ、腕大丈夫なの!?」

 私は慌ててそんなルラの腕を取ってみるけど、表面には傷一つ無い。
 それどころか触ってむるとぷにぷにと柔らかい。

「これって……」

「うーん、どうもあたしは何かの『最強』を念じるとそれも『最強』になるみたい。これならどんな奴が来ても負けないね!」

 ほっとする反面、私はあの駄女神が私たちに与えたチートスキルの凄さに改めて驚く。
 あの時は冗談だと思ったし、最初の頃はそんなスキルの使い場所だって無かった。
 無駄な、無意味な能力と思っていた。
 しかし今はそれが有りがたい。


「なるほど、これなら絶対に負けないわね…… いこう、ルラ!」

「うん!」


 頷くルラと私は先を急ぐのだった。


 * * *


「またこんな罠とか魔物とか……」

 正直舐めていた。
 鍾乳洞の洞窟の迷宮に比べれば出てくる魔物も罠も桁違いだった。

 実体を持たない死神みたいな魔物や下手をすれば壁にでも埋め込まれてしまいそうな魔法の罠とかおおよそ確実に死に至る物ばかりだった。
 「消し去る」力とルラの「最強」のお陰で難なくやっては来れるけど、もしそれが無かったら私たちなんかすぐに死んでいただろう。

 そんな中トランさんたちは一番奥の儀式の間に到達していたらしい。
 しかしそこで守護者とか言うモノに撃退され、そして命を落とした。


「一体どんな儀式をする場所か知らないけど、その守護者ってのがトランさんたちを殺った相手なんだよね…… 絶対に許さない!!」


 私はそう言いながら幾つもある部屋を確認しながら一番奥の部屋に辿り着く。
 そこには今までの部屋と違い頑丈そうな観音開きの扉が有った。


「お姉ちゃん、今までの部屋の扉とあからさまに違うね……」

「うん、今までのモノとは違う。多分ここが儀式の間なんだよ……」

 私は一応その扉の罠も「消し去る」力を使って消してみるけど、どうやら最初から罠は無かったようだ。

 私は扉の取っ手に手をかけ、重い扉を押し開く。


 ギギギぎぎぃ……


 扉を開けるとそこは広い広間になっていて奥に何かの祭壇みたいなものがある。
 部屋は魔法の明かりか何かでうっすらと明るく、広い床には一面の魔法陣が描かれていた。

「まさしくって感じね…… ここが儀式の間なのね?」

 足を踏み入れ中をきょろきょろと見るけど守護者らしき者が見当たらない。
 ルラも一緒に部屋に入るといきなり扉が後ろでバタンと音を立てて閉まった。


「何? 扉が勝手に締まったよお姉ちゃん!」

「ルラ、魔法陣が光ってる!」


 慌てて周りの様子をうかがう。
 見れば床の魔法陣が光ってそこから銀色の鎧を身にまとった騎士にしては物々しい格好のやつが出てきた!!

 そいつは大きな剣を持っていて仁王立ちで私たちを見下している。


「こいつが、こいつがトランさんを!」


 私がそう叫んだと同時にそいつはいつの間にか私の懐に入って剣を私に叩き込もうとしていた!?

「えっ!?」

 早いっ!
 驚きに声を上げるけどこの間合い、もう間に合わない!!
 一瞬死の匂いがする。


「あたしは『最強』!!」


 しかしすぐにルラの声が私の目の前でして叩き込まれた剣を両の腕を交差させ頭上で受け止める。


 がぎぃんっ!!


「お姉ちゃん、大丈夫!?」

「ルラっ! こいつがトランさんたちを!!」

 目の前に仇がいる。
 さっきまで自分の命が危なかった事さえ忘れて私は叫ぶ。
 ルラはガードした腕を払い私を抱えて大きく後ろに飛び退く。

「お姉ちゃん、こいつ強い……」

「うん、でもっ!」


 目の前にトランさんを殺った奴がいる。
 その銀色の鎧はゆっくりと剣をこちらに向けて構える。
 同時にルラも前かがみになってこぶしを握る。


 私はそいつを瞳に復讐の炎を燃やし睨むのだった。 
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