腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~

さいとう みさき

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第四章:帰還への旅

4-21ならず者ども

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 ジマの国。

 始まりは黒龍様の血を引くドラゴンニュートが始祖とされ、イージム大陸の東にある小国。
 ここの騎士団は人間の中では最強を誇ると言われているらしい。
 そしてこの小国がイザンカ王国やドドス共和国と肩を並べていられるのは黒龍様の後ろ盾が有るからだと言われている。

 故に各国が守りの要として保有している「鋼鉄の鎧騎士」を保有していない国でもある。


「カーソルテ、何を慌てているのです? 一体どうしたと言うのですか?」

 頭に王冠乗せているからこの人が王様らしい。
 カーソルテと呼ばれたこの王様はコクさんの顔を見て大きく安堵の息を吐く。


「黒龍様、我がジマの国の危機にございます。何処の者か知りませんが東の港から船により『鋼鉄の鎧騎士』を使いこの国に攻め入る者がおります」


 カーソルテ王にそう言われコクさんはピクリと眉毛を動かす。

「まさかドドス共和国がまたもや血迷ったのか? このジマの国に手出しをすれば私が黙っていないと言う事は骨身に染みているはずだが……」


「恐れ多くも黒龍様、この程我が国に攻め入った者はどうやら傭兵のようです。外装がばらばらの中古の『鋼鉄の鎧騎士』ばかりです」

 コクさんがやや不機嫌になりながらそう言うと後ろに控えていた大臣っぽい人が頭を深く下げながら進言する。
 それと同時にやはり一緒に来ていたいかついおっさんがコクさんに進言をする。

「黒龍様、我がジマの国には『鋼鉄の鎧騎士』に対抗する手立てがございません。どうかお助け下さい」

 より一層深く頭を下げてそう言ういかついおっさん。
 それを見てコクさんはクロさんとクロエさんを見る。


「ふむ、人が『鋼鉄の鎧騎士』に対応は出来ぬ。クロ、クロエ、そのならず者共にこのジマの国に手を出したことを後悔させるが良い! 竜の姿になる事を許す!」


「「はっ!」」


 コクさんはそう言いながらクロさんとクロエさんに手を向けると二人にコクさんから大量の魔力が流れ込む。
 それは私でもわかるくらいはっきりとしていた。


「魔力供与とは! 魔力波長が同じでなければ難しい技術。流石は黒龍様です」


 ネッドさんはそれを見ながら興奮している。
 魔力って他の人にも供給できるんだ。
 でもネッドさんの言っている魔力波長ってのが同じでないと難しいんだ……

 私は何となくルラに向かって魔力を手に溜めて触れてみる。


「え? なにお姉ちゃん…… んぁっ!」

「えっ? 魔力がルラに入って行く??」

 私が手に溜めた魔力がルラに入って行ってしまった。
 双子だからだろうか?
 手のひらから触れたルラの二の腕に私の魔力が染み込んで行く。

 
 そして思わずその感覚に驚かされる。


 何なのだろう、ルラに入ってゆく私の魔力がとても気持ちいい。
 まるで果物にナイフを突き立てるかのようにすっと入ってゆく感じ。
 そしてルラの中はもの凄く温かく、私の魔力を受け止めてくれる。


「んぁ、お、お姉ちゃん駄目ぇ…… 入ってくる、お姉ちゃんがあたしの中に入ってくるぅ~//////」


 ルラは赤い顔をして私の魔力を受け入れるけどなんかものすごく色っぽい。
 そして私もルラに魔力を入れるのがとても気持ちいい。


「ル、ルラぁ……」

「お、お姉ちゃんぅ……」


 二人して魔力供与がこんない気持ちいいとは思いもしなかった。


「こらこらリル、ルラ! なにやってるのよ!?」

「これは魔力供与!? エルフ族は魔力が人族より多いモノのこうも簡単に魔力供与が出来るとは! やはり双子なので魔力波長が同じなのでしょうか?」

 見よう見まねでやってみた魔供与は簡単に出来てしまい、私とルラは顔を赤くしてはぁはぁと息が上がってしまう。

 なんかこれ癖になりそう……


「お、おいカリナあれを見ろ!!」

 ちょっと気持ちよかった魔力供与をしていたらトーイさんが声を上げる。
 私たちはトーイさんの指さすそちらを見るとクロさんとクロエさんの身体が膨らみ一気に真っ黒な竜の姿になる。


「デュ―ドよ、クロとクロエを援軍としそのならず者共に痛い目を見させてやるのだ! ヒュード、リュードよこのジマの国に攻め入った愚か者を捕らえどこの差し金か調べよ!」


「「「ははぁっ!!」」」


 竜の姿になったクロさんとクロエさんを見上げながらコクさんは大臣さんたちに命令をする。
 そしてまるでコクさんの家臣かのようにその命令を皆さん受け入れすぐにこの場から離れる。


「ありがとうございます、黒龍様。これで我が国に攻め入った愚か者どもは駆逐されるでしょう。ささ、黒龍様はこちらのお部屋にどうぞ」

「うむ、だがカーソルテよ、私がここへ来た目的はここに有る風のメッセンジャーを使わせてもらう為です。急ぎジルの村と連絡が取りたい」

「ジルの村ですか? そう言えばエルハイミ様の姿が見えませぬが、何か有ったのでしょうか?」

 ここへ来て初めてカーソルテ王は周りをきょろきょろ見て私たちに気付く。

「黒龍様、この者たちは一体……」

 首をかしげるカーソルテ王に私たちは苦笑をするのだった。


 * * * * *


「何と、大迷宮でそのような事が起こっていたのか?」

 コクさんの紹介でまたまたすぐにおいとま出来なくなった私たちは事の経緯をカーソルテ王に話していた。
 カーソルテ王は大いに驚き、そして風のメッセンジャーを扱っているコクさんを見る。

「コクです。アイン、そちらに私のお母様が行ったと思います。一体今ジルの村で何が起こっているのですか? こちらのお母様までそちらに慌てて向かうなど何か問題があったのでしょうか? まさか赤お母様に何か有ったのですか? 詳細が知りたい。連絡をこちらに願います」

 コクさんはそう言って風のメッセンジャーを閉じる。

 つくづく思うけど、この風のメッセンジャーってとても便利だと思う。
 固定した間だけしか連絡が取れないけど、それでもこの世界で伝書鳩より早く確実にメッセージが届けられるのってすごいと思う。

「しかし、エルハイミ様がいきなりいなくなるとは…… まさか、また何か大きな事が起こる前兆!? はっ!? もしやこのジマの国への襲撃も関係をしているのでは!?」

「落ち着きなさい、カーソルテ。そのならず者共であればクロとクロエで殲滅できるでしょう。問題はその後ろで糸を引いている者たちです。必要とあらばこの私自身が出て行きこの国に手を出したことを後悔させましょう」

 カーソルテ王の心配事にコクさんはそう言う。
 
 ……女神殺しの太古の竜に喧嘩売るだなんて。
 
 クロさんとクロエさんが黒い竜の姿になって飛んで行ったのを思い出す。
 こっちに来て初めて出会った地竜なんてもんじゃない。
 あの圧倒感、そしてその威圧感。
 絶対に相手にしちゃダメな存在だ。
 
 もしかするとルラのチートスキルでも敵わないかもしれない程の力を感じた。

 思わずカリナさんを見ると私に気付いて苦笑をする。
 その顔には完全に逃げそびれたという文字が書いてあるようだった。



 私はちらちらと風のメッセンジャーで連絡が帰って来るのを待ち望んでいるコクさんを見ながらどんどんと深みにはまって行く事を感じるのだった。  

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