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第四章:帰還への旅
4-22黒い竜たち
しおりを挟むそれは王城からでも見えるほどだった。
東の港は小高い山を越えた先に有るらしいのだけど、その小高い山の向こうから黒煙が上がっている。
そして時たま空に黒い竜が飛び交うのが見られる。
あれってクロさんとクロエさんなんだよなぁ……
「お姉ちゃん! またあの黒い竜が炎を吐いてる!! 凄い、かっこいいぃ!」
何故かルラは目をキラキラ輝かせ両手の拳をぐっと胸の前で握っている。
もともと小学生の男の子、やっぱりこう言うのが好きなのかな?
「ふふふ、我ら黒龍のその雄姿を得と見ておきなさい。我ら歯向かう輩は消し炭にしてあげましょう」
何故かコクさんもルラの横で誇らしげにしている。
「おおっ! あの様子、もうじきならず者共も殲滅されますな! 流石です黒龍様!!」
カーソルテ王はコクさんの横でそう言ってその戦いを褒め称える。
勿論コクさんも悪い気がしていないのだろう、ずいぶんと機嫌がよさそうだ。
「カリナさん、カリナさん。今のうちに私たちっておいとました方が良いんじゃないですか?」
「そ、そうね。もう黒龍様もリルに話は聞いたし、後はジルの村とやり取りしてもらえばいいわよね?」
テラスから見える東の小高い山の向こうで繰り広げられている黒い竜による粛清。
そんな結果を見なくても分かりそうな事にずっと付き合っているわけにもいかないので私とカリナさんはコソコソと話し合う。
私は目を輝かせて遠くを見ているルラを引っ張る。
「ルラ、ちょっと来なさい」
「あっ、せっかくクロエさんが『鋼鉄の鎧騎士』を掴みあげて空中でバラバラにしているのにぃ~」
「ルラ、あんたどっちがクロエさんか分かるの!?」
「え? お姉ちゃん分からないの??」
分かる訳無いでしょう―にっ!
エルフ族は人族より目が良いので遠くの物も良く見える。
しかしそれは双眼鏡で見るようなもので、竜の判別が出来る訳では無い。
それでもルラはどっちがクロエさんでどっちがクロさんか分かっている様だった。
「ルラ、それは良いんだけどそろそろ私たちは冒険者ギルドに行かなきゃならないわよ?」
「冒険者ギルド? なんで??」
きょとんとしているルラ。
この子、最初の目的を忘れている……
「あのね、私たちはユエバの町から押し寄せる魔物の原因調査と万が一の避難ルートの確認が目的だったじゃない。忘れたの?」
「あ~……」
この子忘れてたわね。
あきれながらも私はルラを引っ張ってコクさんの元へ行く。
そしてそろそろおいとまする事を言う。
「コクさん、迷宮からの地上まで連れてきてもらってありがとうございます。私たちそろそろ冒険者ギルドに行かなければならないのでこれで失礼しますね」
「おや? もう行くのですか?? 分かりました、それではカーソルテよ、この者たちを冒険者ギルドまで送り届けてやるがよい!」
コクさんはカーソルテ王にそう言うと王様は頭を下げてかしこまりながら返事をする。
「ははっ! 仰せのままに!!」
うーん、誰が王様だか分からなくなってしまう。
そんな事を思いながらカリナさんを見ると、こちらを見て親指を立てて涙を流しながら喜んでいる。
そんなにコクさんと話をするのが嫌なのだろうか?
「それではこちらに来るが良い、貴殿らを冒険者ギルドまで送り届けよう!」
張り切る王様に会釈をしながらついて行く私たちだったのだ。
* * * * *
「どうにか冒険者ギルドには着いたわね……」
カリナさんは馬車から降りながら送ってくれたお城の人にお礼を言う。
私たちも同じくお礼を言って馬車から降りる。
そしてここジマの国の冒険者ギルドに入ってゆく。
中に入ると冒険者ギルドは右往左往していた。
「港の『鋼鉄の鎧騎士』に対抗する、ここに登録している冒険者は緊急招集だ!」
緊急招集とは穏やかではないけど、クロさんやクロエさんが港の方に行ってるからじきにその知らせも入りここも落ち着くだろう。
そう思いカリナさんたちに付いて行ってカウンターの方へと行く。
「忙しそうだけどちょっと良いかしら?」
「見ない顔だな。すまんが今忙しくてな、急ぎで無ければ日を改めてもらえないか?」
カウンター嬢は何やら雑務に忙しく、代わりにおじさんでここのお偉いさんだろうか?
職員に指示を出しながらカリナさんの話に答える。
「港の『鋼鉄の鎧騎士』は黒龍様たちが押さえに行ったわ、もうじき片が付くでしょうね」
「なに?」
書類をめくりながら指示を出していたそのお偉いさんはカリナさんのその言葉に顔を上げる。
そして鋭い眼光でカリナさんを見てからもう一度聞く。
「黒龍様がいらっしゃったのか? それは本当か?」
ざわざわ……
お偉いさんがそう言うと慌ただしく動き回っていた職員の人たちや招聘されて登録を行っていた冒険者たちが立ち止まりこちらを見る。
「間違いないわ、もうすぐここへも連絡が来るでしょう。それよりユエバの町の冒険者ギルドと連絡が取りたいの。私はカリナ、『エルフの剣』のカリナと言えば分かると思うわ」
「『エルフの剣』だと? 確かユエバの町をねぐらにしているパーティーだったな…… 分かった、おい!」
ギルドのお偉いさんはそう言って職員を呼び指示を出し、招集を取りやめる。
代わりに別の依頼を出させる。
ジマの国の警護強化の依頼を。
「さて、カリナと言ったな、俺はこのギルドの部長をしているロビンソッドと言う。ユエバの町に連絡は付けるがお前さんらがあの『エルフの剣』であるのならば引き受けてもらいたい仕事がある」
「いきなり私たちに仕事? どう言う事??」
「今この国に起こっている問題を調査してもらいたいんだ」
そう言うロビンソッドさんの表情はとても険しいものだったのだ。
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