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第四章:帰還への旅
4-23ギルドの依頼
しおりを挟むジマの国の冒険者ギルドで、私たちの居たユエバの町の冒険者ギルドに連絡を取ってもらおうとしたら、カリナさんたちがユエバの町で有名な冒険者パーティーと言う事でいきなり仕事の依頼が来てしまった。
「私たちにいきなり仕事だなんて一体どう言う事よ?」
「今この国に起こっている問題を調査してもらいたい」
この冒険者ギルドの部長さんでロビンソッドさんはそう言って厳しい表情をする。
いきなり仕事の依頼だなんてどう言う事だろうか?
カリナさんはそれを見てしばし沈黙してから聞く。
「詳しい話を聞かせてもらえないかしら?」
カリナさんのその言葉を受けてロビンソッドさんは頷いて応接間に来るように言うのだった。
* * *
「黒ずくめの連中?」
「ああ、そうだ。どう言う訳か知らんがそいつらがこのジマの国に姿を現したのが一週間くらい前、そして一昨日いきなり東の港での騒ぎだ。今この国では何か良からぬ事が起こっているのではないかと王城は勿論各ギルドでも情報収集に躍起になっている」
ロビンソッドさんはそう言って大きくため息をつく。
流れから私やルラもカリナさんたちにくっついて来て一緒に応接間で話を聞くけど、どうも風向きが怪しい。
「調べるだけなら別に私たちを雇う必要はないんじゃないの? この国にだって優秀な冒険者はいるわ」
「勿論この国の冒険者にも手練れはいる。しかし今回の連中は相当な手の者なんだ」
ロビンソッドさんはそう言い懐から布に包まれた一本の短剣を差し出す。
それは刃の部分が黒く塗りつぶされていた。
「アサシン……」
ロビンソッドさんはカリナさんがつぶやいたその言葉に頷く。
そしてトーイさんやザラスさん、そしてネッドさんもそれを見て嫌そうな顔をする。
「アサシンを組織的に使うなんて、相当なのが後ろにいるって事?」
「多分間違いないだろう。こいつを持ち帰ったパーティーはその半分をやられた。下手な連中では被害が増えるばかりだ。そして今東の港を襲っている『鋼鉄の鎧騎士』、外装から傭兵らしいが果たして本当にそうなのかどうか……」
うーん、これってかなりヤバい話なんじゃないの?
コクさんも今、東の港で騒いでいる「鋼鉄の鎧騎士」を押さえてどこの手の者か調べろって言ってたしなぁ。
私はカリナさんを見ると悩んでいる様だった。
「相手はアサシンの集団でそしてこのジマの国にちょっかいを出す程の連中か。黒龍様が出てくる可能性も含めそれを分かっていて襲ってくるって事は……」
「どうだ、奴等が何処とつながっているか分かりさえすれば王城に連絡をして手の打ちようがある。しかも黒龍様が出てきたならば場合によっては大元も叩ける」
ロビンソッドさんはそう言ってカリナさんを見る。
カリナさんはため息を吐いてから言う。
「依頼料は高いわよ? それと宿を用意して。流石に今回だけはこの子たちを連れて行くわけにはいかないわ」
カリナさんはそう言って私たちを見る。
「そんな、カリナさん私たちで出来る事が有れば手伝います!」
「だったら宿で大人しくして待っているのが最大のお手伝いよ、リルやルラはアサシンの恐ろしさを知らない。しかも組織だったアサシンはダークエルフより厄介よ?」
そう言いながら私たちを見るカリナさんの表情は厳しい。
ユエバの町で様子を見に行くという話の時以上に。
「でも……」
カリナさんにトランさんが重なる。
もうあんな思いはしたくない。
私とルラにはチートスキルがある。
だから……
「じ、自分の身は自分で守れます。だから!」
「駄目よ。言う事を聞かないならこの仕事は受けない。このままユエバの町に戻るわ」
カリナさんはそうハッキリと言う。
「お、おい」
そして慌てるロビンソッドさん。
確かにこのジマの国にそこまでの義理は無い。
でもコクさんやクロエさんが守るこの国の危機。
それを見て見ぬふりをするのも後味が悪すぎる。
「お姉ちゃん」
「分かってる。分かりました、大人しく宿で待っています。でもカリナさん、絶対無理はしないでください。もう、トランさんみたいなのは嫌なんです……」
「勿論よ! 私だって死にたくはないもの。早い所尻尾を掴んであとは黒龍様たちにお任せよ」
カリナさんがそう言うとロビンソッドさんは大きく息を吐き安堵する。
そしてカリナさんは握手をしてこの依頼を引き受ける。
私たちは約束通り大人しく宿屋で待つことになるのだった。
* * * * *
「お姉ちゃん、カリナさんたち大丈夫かなぁ?」
「うん、心配だよね…… でも今は約束通り大人しくしているしかないよ」
私とルラはギルドが用意してくれた宿の部屋で大人しくカリナさんたちを待つ事となった。
噂では既に東の港の「鋼鉄の鎧騎士」は黒い竜のクロさんとクロエさんによって駆逐され、乗ってきた船共々捕まえられたらしい。
だったらカリナさんたちも依頼を受けなくてもいいとも思うのだけど、ここを出かける前にカリナさんは私たちに言った。
―― 多分東の港は陽動よ。本当の目的は他に有るだろうし、黒ずくめの連中の後ろを聞き出す事は出来ないでしょうね…… ――
うーん、こう言った事には私はうとい。
だから何が起こっているのかさっぱりだ。
「お姉ちゃん、あたしたちこれからどうしよう?」
「どうしようったって、今は大人しくカリナさんたちが戻って来るのを待つしか無いわよ」
ごろんとベッドに仰向けになって天井を見る。
そしてそこに真っ黒な衣服に目元だけ出ている不審な人物を見る。
「へっ!?」
私は思わず間抜けな声を漏らすのだった。
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