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第十一章:南の大陸
11-22迷いの森
しおりを挟む私たちの目の前に懐かしい香りのする森が見え始めた。
「お姉ちゃん! あの香り、あたしたちの森だよ!!」
「う、うん、帰って来たんだ、私たちの森に。私たちの村に!!」
まだ遠くにしか見えないその森は近づけば近づくほど大きく濃くなってゆく。
エルハイミさんたちにイージム大陸に飛ばされてもうすぐ二年になる。
その間色々あった。
でもやっとここまで戻って来られた。
私はそっと左のおでこの上にある髪留めに手を当てる。
「トランさん、私たちやっとここまで帰って来れました……」
私とルラはそう言って思わず森の方へ駆けだすのだった。
* * * * *
「ううぅ、せっかく目の前に『迷いの森』があるのに本当に入っても吐き出されちゃうんだ……」
「はははは、それがこの森に張られた結界だ。入ってすぐはそれほど影響がないがそれ以上進めば必ず森の外へ吐き出される。私がやっても同じだよ」
これで何度目か、また森の外へ吐き出された私たちは森の外で待っていたソルガさんの元へ戻って来る。
しかしこれじゃぁ精霊都市ユグリアまでこれを迂回する道を進むしかない。
それってもの凄く時間がかかるんじゃないだろうか?
「さてと、時間も時間だ、そろそろ『門』へ行くか」
ソルガさんはそう言って森の周りを少し進みツタで覆われた場所まで行く。
そこはツタの壁とでも言ったらいいのだろうか?
木々の間にツタがカーテンのように絡まっていた。
「なんかすごい場所だね? 『迷いの森』にこんなのがあるなんて、あたし初めて見た!」
「うん、村の周りじゃ見なかったものだよね?」
「ここは村へ入る為の秘密の門なんだ。いつも使っているユグリアに行く門とは少し違う。いいか二人とも、私がこれから呪文を唱え中に入っていくから決してはぐれない様に。それと振り向いてはダメだ、声も出してもいけない。もしそれ等が破られると森は侵入者として我々を襲ってくるからな」
何それ怖い!
この森にそんなものがあっただなんて、ちっとも知らなかった!
確かに今まで村の結界の外には出た事無かったし、出る必要も無かった。
シャルさんにくっついて行く蜂蜜取りだって村の結界の中だったから、その辺の森は危険な動物もいない場所だった。
あ、蛇とかはいたけど脅かさない限り噛まれる事は無い。
オオカミやクマなんかは縄張りがあるけど、エルフの領域には近寄らなかった。
ソルガさんは呪文を唱え終わるとそのツタがまるでカーテンのように左右に広がる。
「さて、行くぞ二人とも」
そう言ってソルガさんはその中に入って行った。
私とルラも顔を見合わせて頷いてから慌ててソルガさんの後を覆うのだった。
* * *
そこは金色の森だった。
いつも村の近くで入っていた森とは全く違う。
夕暮れの黄金に輝く時間の時のようにすべてがキラキラと金色になっている。
しかし前を歩くソルガさんの距離感がおかしい。
もの凄く近いようでいてもの凄く遠い。
遠近感も何も狂っていて、隣を歩いているルラでさえ遠くにいるような錯覚を覚える。
私は怖くなってきて思わずルラの腕に抱き着く。
本当はここで何か言いたいのだけど、声を出しちゃいけないからそっとルラの顔だけを見ると、ルラはにっこりと笑って私の手を握ってくれる。
それにほっとして私とルラは二人手をつないだまままたソルガさんを追いかけて行ったのだった。
***
「帰って来た……」
私はその光景を見て思わずそう言ってしまった。
そこは村の入り口だった。
村はあの時と全然変わっておらず、まるで今までが夢か何かだったかのように思う程だ。
「帰って来たね、お姉ちゃん!」
「う、うん、ルラ!」
私はルラの手を引っ張って自分の家に駆けだす。
数人のエルフの人とすれ違うけど、みんな特に気にした様子はない。
あ、でも数人は少し驚いた表情をする人もいた。
でも後ろからくるソルガさんを見ると納得した様でもあった。
私とルラは息を切らせて自分の家の扉の前までたどり着く。
そして扉に手をかけそれを開ける。
「ただいま、お母さん、お父さん!」
大きな声で私はそう言うのだった。
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