238 / 437
第十一章:南の大陸
11-21浪人
しおりを挟む「この俺が呼び出されるとはな。どれほどの者か?」
その剣士はそう言って鋭い眼光でこちらを見る。
「先生、こいつらをやっちまって下せぇ!!」
盗賊のお頭らしき人物は慌てふためきながら私たちを指さしその剣士の元へ行く。
なんか雰囲気が盗賊なんかと全く違う。
「エルフか…… しかし子供のエルフが混じっている様だが?」
「こ、こいつらやたらと強ぇえし、変な魔法使いやがるんですぜ! 早い所やっちまって下せぇ!!」
そう言ってあの剣士を私たちにけしかけて来る。
流石にこれには私もソルガさんも注意をその剣士に向ける。
「へへへへへ、なんか強そうな人が出てきたね? でもあたしは『最強』だから負けないよ!!」
「貴様等に恨みはないがここで消えてもらう、ガレント流剣技五の型、雷光!!」
その剣士がそう言って踏み込んだ瞬間雷のようにその姿が消える。
それと同時にルラも叫ぶ。
「あたしは防御も『最強』!!」
がきぃんっ!
ルラが叫ぶと同時に両の手をクロスさせその剣を防ぐ。
「何っ!? 俺の剣を素手で防いだだと!?」
「へへへへ、凄いね。防御に『最強』を回さなかったら切られてたかもね、でもあたしは『最強』だから負けない!」
ルラはそう言ってその剣を弾き飛ばし一瞬で懐に入る。
「必殺ぱーんちっ!」
ぼんっ!!
空気を震わせルラはその一撃を放つ。
しかし寸での所でその剣士は剣を盾にしながら下がる。
ぱきんっ!
「ぐっ!」
しかしながらルラの必殺ぱんちを防ぎきれずその剣は欠けてしまった。
そして威力の弱まったルラの拳はその剣士を捕らえ向こうの茂みに吹き飛ばす。
ばきっ!
ばさっ!
「せ、先生っ!!」
これには流石に盗賊のお頭も声をあげる。
よほど自信のあった用心棒だったのだろう。
しかしルラには敵わず吹き飛ばされ向こうの茂みと私たちを交互に見ながら慌てて逃げ出す。
そんな盗賊たちにソルガさんは何も言わず矢を放つと残りの連中も道の向こうでばったばったと射貫かれて倒れる。
「ああいうのは潰せるときに潰しておくべきだからな。後で逆恨みされて数を増やして襲ってくる場合もある。しかし、あの剣士ガレント流の使い手か?」
「ガレント流ですか? 何ですかそれ??」
聞いた事の無いそれに私は首をかしげソルガさんに聞く。
「ガレント王国の王家に伝わる秘剣だ。全ての型を覚え免許皆伝となるとかなりの手練れになるだろう。しかし、盗賊風情に使われるとは、あの剣士は元王族か何かか?」
そう言いながらソルガさんは茂みに歩み寄る。
そして弓をつがえ言う。
「致命傷にはなっていないのだろう? 出て来るがいい!!」
ソルガさんがそう言うと胸を押さえながら折れた剣を片手にその剣士は出て来た。
「くっ、まさかこの俺があんなエルフの娘にやられるとはな…… 殺せ」
そう言って折れた剣を放り投げる。
しかしソルガさんは矢を弓から外し言う。
「ガレント流剣技はガレント王家秘伝の剣。落ちぶれたとはいえ貴様は王家の人間だろう? 我らエルフ族はガレント王国と友好を結んでいる。すぐにこの場を去るがいい」
「……情けをかけるのか?」
剣士は睨みながらそう言うものの、すぐに踵を返してその場から立ち去る。
「えっと、良いのソルガさん?」
ソルガさんの近くに歩み寄りながらルラはそう聞く。
するとソルガさんはため息を吐いてから言う。
「ガレント王国と我らエルフは友好関係を築いている。盟友の王家の人間を手にかける事は出来んからな。しかし、盗賊風情に与するとは……」
「ガレント王国ですか……」
確かウェージム大陸最大の国家で、穀物地帯を沢山保有して「世界の穀物庫」と呼ばれているほど豊かな国のはず。
その王家の人間が盗賊なんかになっていたら、そりゃぁ大問題だよね?
ソルガさんは弓を背負い、また何事も無かったかのように歩き出す。
私たちもそれにくっついてこの場を後にするのだった。
* * * * *
歩きの旅はその後も何度か盗賊に出会ったものの簡単に撃退していた。
「サージム大陸ってイージム大陸の魔物と同じくらい盗賊が出て来るんですか?」
「ははは、この辺は特に多い地域だからな。それに水上都市スィーフから精霊都市ユグリアまでは特に領地が決まっていない、だから余計にああいった輩が住み着くんだ」
焚火を囲みながら食事の準備をする。
ここ数日は私が料理するのだけど、ソルガさんにも私が作る料理は好評で将来いいお嫁さんになるとか言ってもらえた。
ちょっとうれしいけどトランさんの事を思い出すので胸が痛い。
「領地が決まってないって、あたしたちのいるエルフの村も?」
「ああ、勿論だ。『迷いの森』は結界が敷かれていて森に入っても必ず吐き出されるようにできている。我々エルフでさえそのまま森に入るといつの間にか森から吐き出されるからな。しかし森はエルフの聖地。勝手に入って来られてはかなわん。それに世界樹は我らエルフの宝だからな。勝手に入られてもしもの事が有ったら大問題だからな」
ソルガさんはそう言って風の精霊を呼び出して結界を張る。
この魔法は朝まで効いていて、結界内に誰かが入ると風の精霊がすぐに教えてくれると言うものだ。
私はそんなソルガさんを見ながら恐る恐る聞く。
「あの、このままエルフの村に帰ってもいいんでしょうか、私たち」
「うん? 特に問題は無いと思うがな。ただあの力は村ではやはり内緒にした方がいいだろう。リルやルラのそのスキルは異常だ。あれ程強力なスキルは私も初めて見た。道理であのジュメルが二人をつけ狙うはずだ」
言いながら焚火に薪を入れるソルガさん。
私は安堵に息を漏らす。
今まで怖くてちょっと聞きにくかったけどこれで安心してお父さん、お母さんの元へ帰れそうだ。
「ただ、今回の事でファイナス長老が私に二人を出迎えに行かせた理由も分かったよ。村に戻る前に精霊都市ユグリアのファイナス長老に会いに行かなければならないな……」
安堵したまでは良かったけどソルガさんは薪をつつきながらそう言う。
そして私とルラを交互に見る。
「村に帰る前に精霊都市ユグリアでファイナス長老に会ってもらうぞ」
「ファイナス長老ですか…… 分かりました」
「うんいいよぉ~」
ソルガさんにそう答えながら私たちは夕食の準備を進めるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦国鍛冶屋のスローライフ!?
山田村
ファンタジー
延徳元年――織田信長が生まれる45年前。
神様の手違いで、俺は鹿島の佐田村、鍛冶屋の矢五郎の次男として転生した。
生まれた時から、鍛冶の神・天目一箇神の手を授かっていたらしい。
直道、6歳。
近くの道場で、剣友となる朝孝(後の塚原卜伝)と出会う。
その後、小田原へ。
北条家をはじめ、いろんな人と知り合い、
たくさんのものを作った。
仕事? したくない。
でも、趣味と食欲のためなら、
人生、悪くない。
ハニーローズ ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~
悠月 星花
ファンタジー
「背筋を伸ばして凛とありたい」
トワイス国にアンナリーゼというお転婆な侯爵令嬢がいる。
アンナリーゼは、小さい頃に自分に関わる『予知夢』を見れるようになり、将来起こるであろう出来事を知っていくことになる。
幼馴染との結婚や家族や友人に囲まれ幸せな生活の予知夢見ていた。
いつの頃か、トワイス国の友好国であるローズディア公国とエルドア国を含めた三国が、インゼロ帝国から攻められ戦争になり、なすすべもなく家族や友人、そして大切な人を亡くすという夢を繰り返しみるようになる。
家族や友人、大切な人を守れる未来が欲しい。
アンナリーゼの必死の想いが、次代の女王『ハニーローズ』誕生という選択肢を増やす。
1つ1つの選択を積み重ね、みんなが幸せになれるようアンナリーゼは『予知夢』で見た未来を変革していく。
トワイス国の貴族として、強くたくましく、そして美しく成長していくアンナリーゼ。
その遊び場は、社交界へ学園へ隣国へと活躍の場所は変わっていく……
家族に支えられ、友人に慕われ、仲間を集め、愛する者たちが幸せな未来を生きられるよう、死の間際まで凛とした薔薇のように懸命に生きていく。
予知の先の未来に幸せを『ハニーローズ』に託し繋げることができるのか……
『予知夢』に翻弄されながら、懸命に生きていく母娘の物語。
※この作品は、「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルアップ+」「ノベリズム」にも掲載しています。
表紙は、菜見あぉ様にココナラにて依頼させていただきました。アンナリーゼとアンジェラです。
タイトルロゴは、草食動物様の企画にてお願いさせていただいたものです!
CoSMoS ∞ MaCHiNa ≠ ReBiRTH
L0K1
SF
機械仕掛けの宇宙は僕らの夢を見る――
西暦2000年――
Y2K問題が原因となり、そこから引き起こされたとされる遺伝子突然変異によって、異能超人が次々と誕生する。
その中で、元日を起点とし世界がタイムループしていることに気付いた一部の能力者たち。
その原因を探り、ループの阻止を試みる主人公一行。
幾度となく同じ時間を繰り返すたびに、一部の人間にだけ『メメント・デブリ』という記憶のゴミが蓄積されるようになっていき、その記憶のゴミを頼りに、彼らはループする世界を少しずつ変えていった……。
そうして、訪れた最終ループ。果たして、彼らの運命はいかに?
何不自由のない生活を送る高校生『鳳城 さとり』、幼馴染で彼が恋心を抱いている『卯月 愛唯』、もう一人の幼馴染で頼りになる親友の『黒金 銀太』、そして、謎の少女『海風 藍里』。
オカルト好きな理系女子『水戸 雪音』や、まだ幼さが残るエキゾチック少女『天野 神子』とともに、世界の謎を解き明かしていく。
いずれ、『鳳城 さとり』は、謎の存在である『世界の理』と、謎の人物『鳴神』によって、自らに課せられた残酷な宿命を知ることになるだろう――
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる