腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~

さいとう みさき

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第十一章:南の大陸

11-21浪人

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「この俺が呼び出されるとはな。どれほどの者か?」


 その剣士はそう言って鋭い眼光でこちらを見る。
 
 「先生、こいつらをやっちまって下せぇ!!」

 盗賊のお頭らしき人物は慌てふためきながら私たちを指さしその剣士の元へ行く。
 なんか雰囲気が盗賊なんかと全く違う。


「エルフか…… しかし子供のエルフが混じっている様だが?」

「こ、こいつらやたらと強ぇえし、変な魔法使いやがるんですぜ! 早い所やっちまって下せぇ!!」

 そう言ってあの剣士を私たちにけしかけて来る。
 流石にこれには私もソルガさんも注意をその剣士に向ける。


「へへへへへ、なんか強そうな人が出てきたね? でもあたしは『最強』だから負けないよ!!」

「貴様等に恨みはないがここで消えてもらう、ガレント流剣技五の型、雷光!!」


 その剣士がそう言って踏み込んだ瞬間雷のようにその姿が消える。
 それと同時にルラも叫ぶ。


「あたしは防御も『最強』!!」


 がきぃんっ!


 ルラが叫ぶと同時に両の手をクロスさせその剣を防ぐ。


「何っ!? 俺の剣を素手で防いだだと!?」

「へへへへ、凄いね。防御に『最強』を回さなかったら切られてたかもね、でもあたしは『最強』だから負けない!」


 ルラはそう言ってその剣を弾き飛ばし一瞬で懐に入る。


「必殺ぱーんちっ!」


 ぼんっ!!


 空気を震わせルラはその一撃を放つ。
 しかし寸での所でその剣士は剣を盾にしながら下がる。


 ぱきんっ!


「ぐっ!」


 しかしながらルラの必殺ぱんちを防ぎきれずその剣は欠けてしまった。
 そして威力の弱まったルラの拳はその剣士を捕らえ向こうの茂みに吹き飛ばす。


 ばきっ!

 ばさっ!


「せ、先生っ!!」


 これには流石に盗賊のお頭も声をあげる。
 よほど自信のあった用心棒だったのだろう。
 しかしルラには敵わず吹き飛ばされ向こうの茂みと私たちを交互に見ながら慌てて逃げ出す。
 そんな盗賊たちにソルガさんは何も言わず矢を放つと残りの連中も道の向こうでばったばったと射貫かれて倒れる。


「ああいうのは潰せるときに潰しておくべきだからな。後で逆恨みされて数を増やして襲ってくる場合もある。しかし、あの剣士ガレント流の使い手か?」

「ガレント流ですか? 何ですかそれ??」

 聞いた事の無いそれに私は首をかしげソルガさんに聞く。

「ガレント王国の王家に伝わる秘剣だ。全ての型を覚え免許皆伝となるとかなりの手練れになるだろう。しかし、盗賊風情に使われるとは、あの剣士は元王族か何かか?」

 そう言いながらソルガさんは茂みに歩み寄る。
 そして弓をつがえ言う。

「致命傷にはなっていないのだろう? 出て来るがいい!!」

 ソルガさんがそう言うと胸を押さえながら折れた剣を片手にその剣士は出て来た。


「くっ、まさかこの俺があんなエルフの娘にやられるとはな…… 殺せ」

 そう言って折れた剣を放り投げる。
 しかしソルガさんは矢を弓から外し言う。

「ガレント流剣技はガレント王家秘伝の剣。落ちぶれたとはいえ貴様は王家の人間だろう? 我らエルフ族はガレント王国と友好を結んでいる。すぐにこの場を去るがいい」

「……情けをかけるのか?」

 剣士は睨みながらそう言うものの、すぐに踵を返してその場から立ち去る。


「えっと、良いのソルガさん?」

 ソルガさんの近くに歩み寄りながらルラはそう聞く。
 するとソルガさんはため息を吐いてから言う。

「ガレント王国と我らエルフは友好関係を築いている。盟友の王家の人間を手にかける事は出来んからな。しかし、盗賊風情に与するとは……」

「ガレント王国ですか……」

 確かウェージム大陸最大の国家で、穀物地帯を沢山保有して「世界の穀物庫」と呼ばれているほど豊かな国のはず。
 その王家の人間が盗賊なんかになっていたら、そりゃぁ大問題だよね?

 ソルガさんは弓を背負い、また何事も無かったかのように歩き出す。
 私たちもそれにくっついてこの場を後にするのだった。


 * * * * *


  歩きの旅はその後も何度か盗賊に出会ったものの簡単に撃退していた。


「サージム大陸ってイージム大陸の魔物と同じくらい盗賊が出て来るんですか?」

「ははは、この辺は特に多い地域だからな。それに水上都市スィーフから精霊都市ユグリアまでは特に領地が決まっていない、だから余計にああいった輩が住み着くんだ」

 焚火を囲みながら食事の準備をする。
 ここ数日は私が料理するのだけど、ソルガさんにも私が作る料理は好評で将来いいお嫁さんになるとか言ってもらえた。
 ちょっとうれしいけどトランさんの事を思い出すので胸が痛い。

「領地が決まってないって、あたしたちのいるエルフの村も?」

「ああ、勿論だ。『迷いの森』は結界が敷かれていて森に入っても必ず吐き出されるようにできている。我々エルフでさえそのまま森に入るといつの間にか森から吐き出されるからな。しかし森はエルフの聖地。勝手に入って来られてはかなわん。それに世界樹は我らエルフの宝だからな。勝手に入られてもしもの事が有ったら大問題だからな」

 ソルガさんはそう言って風の精霊を呼び出して結界を張る。
 この魔法は朝まで効いていて、結界内に誰かが入ると風の精霊がすぐに教えてくれると言うものだ。

 私はそんなソルガさんを見ながら恐る恐る聞く。

「あの、このままエルフの村に帰ってもいいんでしょうか、私たち」

「うん? 特に問題は無いと思うがな。ただあの力は村ではやはり内緒にした方がいいだろう。リルやルラのそのスキルは異常だ。あれ程強力なスキルは私も初めて見た。道理であのジュメルが二人をつけ狙うはずだ」

 言いながら焚火に薪を入れるソルガさん。
 私は安堵に息を漏らす。

 今まで怖くてちょっと聞きにくかったけどこれで安心してお父さん、お母さんの元へ帰れそうだ。

「ただ、今回の事でファイナス長老が私に二人を出迎えに行かせた理由も分かったよ。村に戻る前に精霊都市ユグリアのファイナス長老に会いに行かなければならないな……」

 安堵したまでは良かったけどソルガさんは薪をつつきながらそう言う。
 そして私とルラを交互に見る。

「村に帰る前に精霊都市ユグリアでファイナス長老に会ってもらうぞ」

「ファイナス長老ですか…… 分かりました」

「うんいいよぉ~」

  
  ソルガさんにそう答えながら私たちは夕食の準備を進めるのだった。
  
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